●市販のお菓子のアレルギー表示

バレンタインシーズン、小学1年生の娘が女の子数人からバレンタインのお菓子をもらいました。いわゆる友チョコです。娘はもらう一方で、友チョコをあげたい気持ちはあまりないよう。上がお兄ちゃんだからでしょうか。上にお姉ちゃんがいると真似をして、下の子も友チョコをあげる傾向があるようです。家に届けにくる子、お母さん同伴で来る子、どれも手作りでおそらく時間がかかったもの。公園で子ども同士、友チョコ交換する姿も見られました。娘も公園で友達からもらったと持ち帰ってきました。

まだ1年生なのに今どきの文化なのかなぁと思うと同時に、心に何かひっかかるものがありました。数年前、一人の女の子が亡くなった事故を思い出していました。
平成24年12月20日。東京調布市で小学5年生の女の子が亡くなりました。食物アレルギーによるアナフィラキシーショックと見られています。
その日の給食は、わかめごはん、肉団子汁、じゃがいものちぢみ、ナムル、牛乳。女の子は乳製品の食物アレルギーがあったので牛乳は提供されず、じゃがいものちぢみは女の子用に普通食とは別に作られていました。粉チーズを除いて作られた除去食です。形も、普通食は四角く切った形、女の子用はカップに入れて焼いた丸い形。給食トレーも普通食は緑色、女の子用は黄色。見た目でもわかるよう様々な配慮がされていました。女の子は調理員から女の子用に作られた給食を直接受け取りました。このとき、調理員は食物アレルギーの除去食がどれであるか、口答で伝えるルールがあったのですが、この日、女の子には明確に伝わっていなかったようでした。
給食中、普通食のじゃがいものちぢみが余りました。この日ちぢみはあまり人気がなかったようです。教室では給食完食を目指した取り組みが行われていました。担任の先生はちぢみを切り分け、席を回って子ども達におかわりを促します。女の子がおかわりをしたいと申し出ました。
担任は女の子にちぢみを食べて大丈夫なのか聞きます。女の子は献立表を出します。女の子の母親が献立表におかわりをしてはいけないものにマーカーをひいたものです。ちぢみにはマーカーがひいてありませんでした。
食物アレルギーがある女の子がおかわりをするときには、おかわりをしてはいけないものに×印がつけられた除去食一覧表を担任が確認するルールがありました。女の子が手にしていた献立表とは別のものです。しかし、この日担任は除去食一覧表を確認することを怠りました。その後、除去食一覧表は職員室の担任の机の引き出しにしまわれていたことがわかりました。
担任は女の子に普通食のちぢみのおかわりを提供します。このあと、担任は女の子が実際にちぢみを食べたかどうかは見ていませんでした。
給食終了から20分から30分後、女の子が担任に具合が悪いと伝えます。
担任は当初、女の子の食物アレルギーを疑い、女の子がいつも携帯しているエピペン(アドレナリン自己注射薬、アナフィラキシー症状を一時的に緩和するもの)を打つかと女の子に聞きます。女の子は「違う、打たないで」と答えます。女の子は喘息の持病もあったので、喘息の発作が出たと思い喘息用の吸入器を使っていました。
担任が食物アレルギーによるアナフィラキシーを疑い、普通食のちぢみのおかわりを食べさせてもよかったか栄養士に確認します。栄養士からダメだと聞き、ようやくエピペンが女の子に打たれます。女の子が体調の悪さを訴えてから14分が経っていました。この間、AEDや心臓マッサージも行われていましたが、すでに女の子は心肺停止の状態になっていました。
その日の夕方、女の子の死亡が確認されました。行政解剖の結果、女の子の死因は食物アレルギーによるアナフィラキシーショックの疑いということでした。
いくつものミスが重なり、女の子は亡くなってしまいました。
調理員が女の子に食物アレルギー対応の除去食がどれなのか明確に伝えていなかったこと。
担任がルールにはない母親作成の献立表だけを見て、ルールとなっていた除去食一覧表をチェックしなかったこと。
教職員達が異変に気づいてから速やかにエピペンをうたなかったこと。
たくさんの大人がその場にいながら、女の子の命を守ることができませんでした。
食物アレルギーを自覚している小学5年生でも、自己判断するのは難しいことも思い知らされました。
小学校低学年の友チョコ交換。そこに危険は潜んでいないのでしょうか。自分が食べてはならないものも、友だちが食べてはならないものも、ちゃんとわかっていないのでは。
知らない人からは食べ物をもらわないし、知っている人だとしても親の同意がないまま勝手に食べてはいけない。食べ物を友達に勝手にあげてはいけない。子どもだけで何かを口にする状況を作らない。口をすっぱくして子ども達に伝えています。
 小麦、卵、乳製品、ナッツ類、お菓子はアレルギーをひき起こすものが多く使われています。アレルギー表示のない手作りともなると、なおさらどうしていいやら困るご家庭もあるでしょう。
この後はホワイトデーもやってきます。友チョコなどお菓子交換は子ども・親同士のコミュニケーションになっているかもしれません。口に入れるもの以外でもコミュニケーションはとれるのではないでしょうか。悲しい事故が起きないよう、親御さんは意識に留めておいてほしいです。
2018年3月5日
増子瑞穂
食物アレルギー事故のNHK番組
調布市の事故報告書、長文ですがお子さんのいる方は一度読まれたほうがいいと思います。
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