●ボール遊び禁止看板の向こうではシニアがゲートボール

長かった夏休みが終わりました。そして今年の夏も暑かったですね。
子どもの声で賑わうはずの夏休みの公園、今年は子どもの声がほとんど聞こえてきませんでした。暑さのせいだけではありません。夏休みを間近に控えた7月、公園にある看板が設置されました。
「公園内でのボール遊び禁止(未就学児を除く)」
クヌギの木と桜の木にくくりつけられています。公園入り口のポールにも。
この公園には遊具などはなく、高さ1メートルほどのステージと広場があるだけ。広場では日中、シニアがゲートボールをしています。
看板の設置からほどなくして、地域の子ども達は公園で遊ばなくなりました。ここでボール遊びをしていた子どもだけではなく、普段ボール遊びをしていない子どももです。子どもとはいえ、看板が放つ息苦しさや威圧感を感じ取ります。むしろ子どもだからなおさらなのかもしれません。子ども達は車の通る道路でボール遊びや鬼ごっこをするようになりました。
公園から子ども達の姿が消えた変わりに、リードを離してドッグラン状態で犬を散歩させる人の姿が増えました。それにともない犬の落としモノも。さらに禁煙の公園でタバコを吸う人の姿が目立ちはじめました。どこまで看板との関連性があるかはわかりませんが、勝手に灰皿が設置されたほどです。
公園というのは子どもの姿がなくなると荒れるんだな、と実感しています。

●禁煙の公園になぜか灰皿が

現状として、
・ボール遊びをしている子ども達の多くは、ゴムボールを投げたり、テニスボールでキャッチボールをしたり、サッカーボールをパス回ししたりといったもの。
・硬球や、金属・木製バットを使っているわけではないこと。
・多くの場合は保護者がついて周りに配慮しながらのこと。
・シニアはゲートボールをしている公園であること。
などを踏まえて、看板の設置について自治体の公園課にメールで問い合わせました。
3週間経って、ようやく返事がきました。以下引用です。
〜市内の公園は、様々な年齢層の方が利用するため、危険な行為や迷惑となる行為を禁止しております。公園に隣接したお住まいの方や、小さなお子さんをお連れの方からは、公園内でのボール遊びをやめさせてほしいとの御意見が寄せられている一方、ボール遊びを認めてほしいという御意見もあり、市としましても対応に苦慮しているところですが、公園利用者の安全確保及びボールの飛び出しによる近隣への迷惑を防止する目的で、原則禁止としております。
しかしながら、幼児が行うボール遊びについては、危険を及ぼす行為や近隣へ与える迷惑も生じないとの考えから、この度、看板「ボール遊び禁止(未就学児を除く)」を改めて設置しました。
現状では、児童・生徒がボール遊びのできる場所を新たに整備することが難しい状況であるため、ボール遊びをされる場合は、大変御不便をお掛けしますが、小学校の校庭などを御利用いただきたいと存じます。
なお、ゲートボールにつきましては、公園の利用に支障を及ぼさないと認める場合に限り許可しております。
今後も、市民の皆様が利用しやすい公園の整備に努めてまいりますので、御理解を賜りたいと存じます。
この度は貴重な御意見を頂き、誠にありがとうございました。〜
ボール遊びといっても、硬球を使ったガチの野球と柔らかいボールを使ったキャッチボールでは、ボールを使うという共通点があるだけで全く別のものです。また未就学児を除くとありますが、小学生は柔らかいボールのキャッチボールですらダメで、未就学児ならプロゴルファー猿ばりのゴルフの練習をしてもいいというのでしょうか。ボール遊びをひとくくりにしてとらえることが疑問です。
そもそもボール遊びが問題なのではなく、ボールに限らず周りに配慮しない危険をともなう行動が問題なのではないでしょうか。リードを離して犬を散歩させたり糞の始末をしなかったり、一部のマナーが悪い人のために公園での犬の散歩が禁止になるようなものです。
そして私は「公園に隣接したお住まいの方」ですが、公園でのボール遊びをやめてほしいと思ったことはありません。もちろん硬球を使ったガチの野球は困りますが。かつては私も「小さいお子さんをお連れの方」でした。小さいお子さんもいずれボール遊びをする小学生や中学生になります。おとなしいと思っていた近所の小さな女の子が中学生になってソフトボール部に入りびっくりすることもあります。私もこの歳になってこんなにも息子とキャッチボールをするようになろうとは思ってもみませんでした。小さなお子さんをお連れの方の頃は。自分の子どもは関係なくても、甥っ子姪っ子、孫はボール遊びの好きな子どもなるかもしれません。大人の私もボール遊びが大好きです。
それにボール遊びをやめさせてほしいという意見がある一方、ボール遊びを認めてほしいという意見もあるという状況で、なぜ禁止の判断にいたるのか。両方の意見があって対応に苦慮しているのなら、なぜ双方の意見を交換する場を作らないのか。この看板一枚でひとまずボール遊びの子どもを排除し、ことなきを得ようという、怠慢ともいうべき自治体の闇。
そしてサラッとゲートボールはオッケーと言われても。子どもの意見は聞かないけどシニアの意見は聞くよ、という自治体のスタンスを感じてしまいます。
話し合いの場を設けてボール遊びができるようになった自治体もあります。神奈川県川崎市のケースです。
ボール遊びについて市民による意見交換を通して、明確で具体的なルールを作りました。「子どもたちが数人で軟式ボールやビニールボール等のボールを使用して行うキャッチボールやサッカーボールでのパスなどのボール遊びは、他の利用者等の迷惑にならず、譲り合いながら行う限りは、禁止するものではありません。」とされています。子ども達はボール遊びができるようになりました。
子どもは外で遊ぶのが当たり前です。子どもの運動能力の低下が問題になっていますが、自治体がこんな措置をとっていたら当然です。このままでは子どもの運動能力が衰えていくのはもちろん、公園から子どもの声が聞こえなくなってしまいます。シニアも子どもも遊びを通して、運動能力を高め、地域とつながっているのではないでしょうか。
話し合いの機会もなくこの看板が設置されたことを、子ども達自身はどう感じたのか。5年後10年後に有権者になる子ども達はよく覚えていてほしい。地域の未来を作るのは子ども達なのです。
地域の子ども達がボール遊びをする姿を見ながら、日がな一日過ごすのが老後の夢です。
その頃には、飛んできたフライくらいはキャッチできる元気な婆さんでありたいと思います。
2019年9月13日
増子瑞穂

●木陰もある夏休みの公園に子どもの姿はなく

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