●二重のウェーブ、動きが滑らかで一つの生き物のよう

春の運動会シーズンを迎えました。天気に恵まれ、5月末の土曜日に開催したところが多かったようです。振替休日となった月曜日、前回のマッシー通信でとりあげた日本科学未来館に行ったところ平日にもかかわらず多くの子ども達で賑わっていました。春に運動会を行う学校が多く、振り替え休日も一緒の日だったようです。

さて、運動会。以前マッシー通信で組み体操をとりあげました。
全国の小中学校で組み体操による重大事故が起きていた事が明らかになり、各自治体で対応が分かれている、間もなく文部科学省から何らかの指針が発表される、というところまで書きました。その後3月25日、文部科学省は各都道府県の教育委員会に対し、組み体操などによる事故防止を徹底するよう求める通知を出しました。しかし、ピラミッドやタワーなど演技内容には触れず、具体的な指針ではありませんでした。

息子の通う小学校では、例年運動会で組み体操が行われています。クライマックスは5・6年生が男女に分かれて作る6段のピラミッドです。年によっては5・6年生の人数が足りず、4年生も駆り出されていました。その4年生が練習で骨折したとかしないとか。事故やケガの報告も保護者には周知されず、噂だけが一人歩きしていました。人数を合わせて作る6段ピラミッド。低学年の子どもたちは「がんばれぇ!」と無邪気に応援します。
6段ピラミッドのふもとには安全対策のためか先生がしゃがんでいます。先生なのか保護者なのかわかりませんがピラミッドのふもとで撮影している大人がいます。6段ピラミッドとふもとで撮影している大人。その様子をとらえた写真は小学校広報誌の表紙に使われ、保護者や地域の人に配られました。昨年度までの組み体操はこのような状況です。

迎えた今年度、春の運動会。文部科学省によって組み体操による事故防止の通知が出されてから初めての運動会です。千葉県のいくつかの自治体は組み体操そのものを取りやめ、東京都立の学校は組み体操を行う場合「ピラミッド」と「タワー」については原則休止。息子の通う小学校では、今年度の運動会で5・6年生による組み体操が行われることは周知されていました。では、その内容は。

昼食が終わった午後、5・6年生による組み体操が始まりました。二人一組による技がいくつか続きます。倒立ができない子どもも何人かいました。
横一列に並ぶ六人一組の3段ピラミッド。3段ピラミッドは、一番下の子どもに加え2段目の子どもも地面に足をつけ安定感があります。(やぐらという形のようです)一番下の子どもにかかる負荷も軽減されています。この3段ピラミッドは、一瞬で地面に崩れまた一瞬でピラミッドの形に戻る、という動きで観客を魅了していました。一見崩れているように見えるのですが、一番上の子どもは2段目の子どもに飛び乗ったり飛び降りたりしていて、正面から見ると崩れているように見える仕組みでした。土台となる子どもにも大きな負荷はかかっていないようです。一番上の子どもも落ちたとしても受け身がとれる高さだと感じました。
全員でつくる二重のウェーブは美しく、練習の成果が感じられました。5・6年生全員が一列になってお辞儀で組み体操を終了する頃には胸が熱くなっていました。
あの6段のピラミッドは姿を消していました。ただただ固唾をのんで、無事に時間が過ぎていってくれることだけを願った去年までの組み体操。今年の組み体操は全く違うものでした。20分にも及ぶ組み体操は無事に終了しました。

もちろん今後も組み体操が行われるとしたら、様々な技をする中でケガは起こると思います。6段ピラミッドはなくなったけれども、一歩間違えたら危ないなという技もありました。それをどう防いでいくのか、その技は取りやめにするのか。ケガや事故の情報をどう周知させていくのか。今後も組み体操とどう向き合っていくのか。
去年と今年、一番変化を感じたのは6年生だったでしょう。5年生だった去年の運動会は6段ピラミッドの組み体操、6年生になった今年は動きで魅せる組み体操。違いを子ども達はどう感じたのでしょうか。

今年の運動会。私は組み体操を見て、初めて感動しました。でも忘れてはならないのは、子どもの運動能力は様々だということ。そして子どもは走っているだけで、それこそ普通に息をしているだけで、生きているだけで感動ものです。
来年、息子は小学5年生。応援する側ではなく、組み体操に向き合う学年になります。

2016年6月2日
増子瑞穂
twitter.com/massykachan

馳浩文部科学大臣記者会見録(平成28年3月25日)文部科学省サイト
www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1368946.htm

東京都における「組み体操」等への対応方針について(平成28年3月24日)東京都教育委員会
www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2016/pr160324a.html

 

●3段ピラミッド、一瞬で崩れ…

●崩れたと思ったら、一瞬で元のピラミッドの形に戻ります

●この形は崩れてしまったとき、首を痛めるポジションがあると感じます

●お辞儀で締めくくり、胸が熱くなりました

マッシー通信連載147「揺れる組み体操」

揺れる組み体操 連載147

 

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