2月下旬、息子がインフルエンザBに感染しました。昨シーズン、インフルエンザAに感染し異常行動がとんでもなかったことをマッシー通信に書きましたが、今回は熱もさほどあがらず異常行動もなく軽く済みました。

今回はここ最近、国や自治体が動きを見せている組み体操についてとりあげます。組み体操は、小中学校の運動会で行われている種目のひとつ。保護者からの注目度も高く、運動会の花形的な扱いです。その組み体操について、規制、あるいは全面廃止を決めた自治体が増えています。まず、この組み体操について考える上で知っておかなければならないことをいくつか。

組み体操の事故件数について。
日本スポーツ振興センターによると、組み体操の事故件数は年間8000件以上。この事故件数を上回るものに跳び箱やバスケットボールがあります。しかしこれらに比べて組み体操は、頭や首など危険な箇所をケガするケースが多いこと、運動会シーズンという限られた期間しか行わないのに事故件数が多いことがあげられています。

学習指導要領について。
組み体操は、授業の内容や目標を定める「学習指導要領」には記載されていません。組み体操の実施や内容は、自治体や学校の判断にまかされています。義務教育としてやらなくてもいいことで事故が起きているという状況です。

高さについて。
組み体操の種類に、子どもが高く重なり合う「ピラミッド」や「タワー」があります。組み方にもよりますが、7段のピラミッドでおよそ4メートル。3段のタワーでおよそ3メートルの高さになります。これらはしばしば組み体操のクライマックスとして取り入れられています。ちなみに大人が高所で作業する場合、高さ2メートル以上であれば、事業者は労働者に対して柵を設けたり命綱をつけさせたり安全対策を施す義務があります。

以上をふまえて。
組み体操の危険性が取り上げられたのはここ1、2年です。2015年3月、あいつぐ組み体操の事故を受けて、愛知県長久手市教育委員会がピラミッドの高さを4段以下にするよう市立小学校全校に呼びかけました。同9月には大阪府大阪市の教育委員会がピラミッドは5段、タワーは3段までと高さ制限を決めました。
そんな矢先2015年9月末、大阪市に隣接する八尾市の市立中学校の運動会で、組み体操の10段ピラミッドが崩れ、1年生の男子が腕を骨折する事故が起きました。この様子はネット上に広がり、テレビのニュース映像でも流れ、目にした人も多いかと思います。
その後、高さ制限を決めていた大阪市教育委員会は今年2月、組み体操のピラミッド、タワーを禁止に。高さ制限をしても重大な事故は起きているとの判断でした。

さらに2月下旬、千葉県流山市、野田市、柏市の教育委員会は組み体操そのものの全面廃止を決めました。松戸市も全廃を含め見直し中、我孫子市も見直しを検討中としています。(マッシー通信がアップされるころにはもっと広がりを見せているかもしれません)。
その一方、東京都では組み体操についての有識者会議が開かれ、「組み体操を一律に廃止せず継続すべき」との方針が出されました。
自治体によって組み体操の考え方は様々、揺れています。

息子が通う小学校でも春に行われる運動会で、5年生と6年生が男女に分かれて組み体操を行います。クライマックスは6段のピラミッドです。保護者にとって子どもの成長を感じる場面であり、下級生にとっては憧れのまなざしを向ける場面になっています。一方、これまで骨折を含むケガの事実も耳にしています。
組み体操に関して否定的な意見もある一方で、肯定的な意見も多くあります。肯定的な意見の背景には、組み体操を通して子どもと感動を共有してきたことが関係しているのではないかと想像します。かつて、子どもに組み体操、頑張れ!と言ってきた経緯があるのではないかと。
私自身は、子どもに組み体操を経験させたことがありませんし、子どもと組み体操の感動を共有したこともありません。だからこそ、組み体操の危険性がすんなりと頭に入ってくるのかもしれません。
組み体操で得られると言われている感動や達成感は、本当に組み体操のピラミッドでしか得られないのか。骨折など重傷の危険性が少ない他の手段でも得られるのではないか、立ち止まって考えるときが来ているのではないでしょうか。

これまで組み体操は自治体や学校の判断にまかされてきましたが、文部科学省は組み体操の事故防止に向けた指針を今年度中にまとめる方針です。もうすぐ新年度、春の運動会が待っています。

2016年3月2日
増子瑞穂
twitter.com/massykachan

大阪府八尾市の中学校で起きた事故
www.youtube.com/watch?v=RZuz8vcCN2s

参考記事
bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/

ちなみに、インフルエンザコラム。

インフルエンザAがやってきた 連載 133

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