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●Aフレームクレーンと無人探査機かいこう

海の上からの生中継に挑戦してきました。船に乗って静岡県の清水港を出航し、駿河湾を航行。水深1000メートルの海底の様子を観察し、また清水港に戻ってくるという8時間超えのニコニコ生放送です。

乗船したのはJAMSTECの深海調査船「かいれい」。かいれいは無人探査機「かいこう」の支援母船です。全長106メートル幅16メートル、船尾には「Aフレームクレーン」という探査機を着水させるための大きな青いクレーンが搭載されています。定員は乗組員38人と研究者など22人、あわせて合計60人です。
「かいこう」は有人の潜水調査船では不可能な深海域での調査をする無人の探査機です。水深7000メートルまで潜航調査することができます。親機「ランチャー」と子機「ビークル」の二つが結合して「かいこう」システムになっています。母船かいれいとランチャーはおよそ1万1000メートルのケーブルが、ランチャーとビークルはおよそ250メートルのケーブルが繋がっています。ビークルには自在に動くマニピュレータという二本の腕がついています。

2017年7月30日日曜日、朝7時45分「かいれい」に乗船。まず船内で安全講習を受けました。甲板に出る時は必ずヘルメットと救命胴衣を着用することなどを確認します。安全講習は調査船に乗るとき必ず受講しなければならない大切なカリキュラムです。
8時30分清水港を出航、駿河湾へ向かいます。防波堤を抜けると少し揺れを感じはじめました。湾内とはいえ動く船の上、海の上からの生中継にドキドキします。
調査ポイントに到着すると、かいこうの着水作業が始まります。格納庫にあったかいこうは少しずつ船尾方向、Aフレームクレーンの下へ引き出されていきます。乗組員の方々が手際よく確実に作業を進めていきます。かいこうはAフレームクレーンで吊り上げられ、海に着水。みるみる海底へ沈んで行きます。なんだか祈るような気持ちです。
かいこうからケーブルを伝って送られてくる映像には、海水の色が鮮やかなブルーから暗い青、そして太陽の光がどんどん届かなくなっていき、真っ暗になる様子が映し出されていました。このグラデーションが見られる水深200メートルくらいまではトワイライトゾーンと呼ばれています。
水深850メートルほどで潜航は一旦停止。ランチャーとビークルが切り離されます。ここからはビークルだけが海底を目指します。繋がっているのは一本のケーブルだけです。

着水から1時間あまり午前11時35分、ビークルが水深980メートルのところに到着しました。駿河湾の海底です。黒っぽいナマコがいたり、アナゴのようなひょろ長い魚がいたり、ゴミのようなものも落ちています。海底の様子がリアルタイムの映像で船上に送られてきます。
ビークルの操縦をしたり、マニュピュレータを動かして海底のサンプルをとったり、かいれい船内のコントロールルームから遠隔操作をします。
お昼を少しまわった頃、赤い鮮やかな生き物が流れてきました。ユメナマコです。近くにはニュウドウカジカという生き物もたたずんでいます。同乗した専門家の方によると遭遇できるのはまれで、どちらもスター級の生き物とのこと。大興奮です。私はもちろん、何度も潜航に立ち会っている乗組員や専門家の方も興奮していました。
海底探査のおよそ1時間半。ユメナマコを採取したり海底の泥をとったり、なんと私もビークルの操作体験をさせていただきました。海底探査が終わり、また1時間ほどかけて海底のお土産を持ってかいこうは無事、かいれいに戻ってきました。そしてまた清水港へ。夢のようなあっという間の8時間あまりでした。

ニコニコ生放送の番組は、有料会員か、あらかじめ予約をしておかないと終わってしまった番組をあとから見られないのですが、この番組は無料会員登録をすればあとからでもいつでも見られます。8時間を超えていますので、見どころのタイムをいくつかご紹介しておきます。お時間あるときにぜひご覧ください。

2017年8月3日
増子瑞穂
twitter.com/massykachan

「深海調査研究船に潜入~無人探査機の深海調査に密着しよう」live.nicovideo.jp/watch/lv303438499
1:45:00 かいこう着水~潜入
3:25:00 ランチャービークル切り離し~着底
4:11:00 ユメナマコ&ニュウドウカジカW登場!!!
4:40:00 ユメナマコ採取
4:48:00 ビークル操作体験
5:03:00 かいこう離底
5:57:00 かいこう浮上
6:30:00 採取したユメナマコ観察

参考
深海調査船「かいれい」
www.jamstec.go.jp/j/about/equipment/ships/kairei.html

無人探査機「かいこう」
www.jamstec.go.jp/j/about/equipment/ships/kaiko.html

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●ユメナマコ&ニュウドウカジカW登場!!!

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●増子瑞穂、ビークル操作体験

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●水深1000メートルで圧縮された発泡スチロールカップ

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●甲板に出る時は必ずヘルメットと救命胴衣着用です!

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