●深海調査研究船「かいれい」煙突の前で

8月上旬、去年に引き続き今年も海底探査の生中継を担当してきました。

深海調査研究船「かいれい」に乗船し、静岡県清水港を出航、調査ポイントに到着後、無人探査器「かいこう」で水深980メートルを海底探査し、再び清水港に戻ってくるという8時間半の生中継です。

日本にはたくさんの湾がありますが、その中で水深1000メートルに達する湾は3カ所だけ。富山湾、相模湾、そして駿河湾です。中でも駿河湾は水深2500メートルにも達する場所がある日本で最も深い湾です。
台風の多かった8月、生中継を行う前の週は日本列島を逆走する台風12号の被害が各地でありました。さらに生中継の数日後には次の台風も近づく見込み、運良く出航できる機会に恵まれました。
出航に向けて、船内で安全講習を必ず全員受けます。甲板に出るときはヘルメットと救命胴衣を着用すること、また船酔いで気持ち悪くなってしまったら絶対に海に向かって嘔吐しないことなどが説明されました。船から海に向かって体を乗り出し嘔吐しようとして海に落ちてしまう事もあるそうです。もし船内で嘔吐してしまっても掃除をすればいいだけなので、身の安全を守るのが第一だと教えていただきました。
また控え室に使用していた船室のドアには救命ボートの割り振り表が掲示されていました。何かあったときに誰がどの救命ボートに乗るのか、携帯品や役割は何なのか、あらかじめ決められていることに驚きました。総指揮をする方の持ち物は重要書類や双眼鏡など、ちなみに私の持ち物は毛布一枚、役割は乗船待機です。確かに大人しく待機する以外、役に立ちそうにありません。
8時30分、清水港を出航。左手に同じく清水港に停泊している地球深部探査船「ちきゅう」を、右手に世界遺産の三保の松原を眺めながら駿河湾へ向かいます。

●クレーンで吊り上げられる無人探査機かいこう

海底探査ポイントに到着するとかいこうを海底に降ろす作業が始まります。かいこうはランチャーとビークルという二つの機体が繫がったまま潜航する無人の探査機です。船と一次ケーブルで繋がったかいこうは1時間ほどかけて駿河湾の海底を目指します。青い空、青い海、青いクレーンに橙色のかいこう、そして作業される皆さんのキビキビした動きに見とれてしまいます。短く分かりやすいかけ声が駿河湾に響きます。
水深845メートル、海底まで130メートルほどに迫った頃、ランチャーとビークルが切り離されました。ランチャーとは二次ケーブルで繫がっていますが、この先はビークルだけが海底を目指します。
出航から3時間、ついに駿河湾の海底へ辿り着きました。「ビークル着底、時刻ヒトヒトサンキュー、キューナナナナ、テイシツ、泥」。かいこうのコントロールチームから着底報告が入ります。ヒトヒトサンキューは11時39分、キューナナナナは水深977メートルのことです。テイシツは底質、海底の状態です。かけ声、かっこいい…。
ビークルの着底後、すぐにナマコを発見しました。ナマコの周りに全方位カメラ、場所を示すポイント、エサのサバを置いて行きます。海底で静かに暮らしていたナマコにとっては大事件でしょう。エサのサバにさっそく魚が近づいてきました。ソコダラです。さらにホラアナゴもやってきました。
しばし生き物の観察をしたり、その様子をスケッチしたり。よくよく考えると自分は駿河湾の洋上にいるはずなのに、いつの間にか海底にいるような気持ちになりました。スカイツリー丸々一個分は離れた深海の出来事を、洋上からリアルタイムで見られるとは何て素晴らしいのでしょう。そしてモニターごしだけではなく、実際に自分の目で見られたとしたら、どれだけ素敵だろうと想像しました。

●かいこう二本の腕、マニピュレータ

今回の潜航ではビークルに搭載されている二本のアーム「マニピュレータ」の操縦体験もしました。マニピュレータと同じ腕のような形のコントローラーを操作して、海底の生き物や泥などを採取します。操作しているコントロールルームから一次ケーブルでランチャーを経由し、二次ケーブルでビークルを経由し、マニピュレータに信号が送られまた戻ってくる、1000メートル離れたところを行ったり来たり。慣れないと操作は難しいのですが、タイムラグはほとんど感じません。すごい技術です。
1時間半ほどの海底探査を終えて、かいこうが船上へ戻ろうとしていたその時、ふわふわしたピンク色の生き物が現れました。ユメナマコです。船内は大興奮。しかし、かいこうチームの皆さんは冷静沈着です。「カメラ固定、スラープガン用意」と、ユメナマコを採取する準備を始めます。みんなが息をのんで見守る中、スラープガンという掃除機のような吸い込むタイプの機器を、浮遊しているユメナマコに近づけ、シュッと採取。思わず拍手が巻き起こりました。

●ユメナマコが現れた!

●ユメナマコの採取に大盛り上がり

かいこうが船上に戻され、ユメナマコもやってきました。ついさきほどまで水深980メートルのところを漂っていたピンク色の生き物。フワフワヒラヒラと泳ぐ様子がなんとも愛くるしい生き物です。
暑さがまだ残る夕方、再び清水港へ。ちきゅうが出迎えてくれます。8時間半の生中継、海底探査の旅も終了です。平成最後の夏に、またひとつ素敵な体験ができました。
番組はニコニコの無料会員登録をするといつでも誰でも見られます。ぜひ海底探査の旅を体感してくださいませ。
※番組のタイムラインです、ご活用ください。
0:08:30 かいれい外観紹介
0:16:30 かいれい甲板から生中継
0:30:00 清水港出航
2:18:00 かいこう着水作業
2:39:00 サンプルバスケット映像
2:55:00 かいこうコントロールルーム
3:30:00 ランチャービークル切り離し
3:39:00 ビークル着底
4:25:00 増子、マニピュレータ体験
4:54:00 ユメナマコ登場!
7:42:00 ユメナマコ観察
7:48:00 清水港帰航
8時間半の旅の様子は4分ほどの「ダイジェスト動画」でも見られます。
↓採取したユメナマコは葛西水族園で飼育されているようです。
↓海底探査は「ハガキにかこう海洋の夢コンテスト」で入賞した子ども達も一緒でした。
↓東京の会場では子ども記者達が海底探査を見守っていました。子ども達の観察力、素晴らしいです。
www.asagaku.com/2018/shinkai/index.html

●こちらは地球深部探査船ちきゅう

●海底の様子をスケッチ、何事もスケッチは基本

●水圧で縮んだ発泡スチロールカップ

2018年8月28日
増子瑞穂
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