10月に入って急に仕事が忙しくなってきました。震災直後、あいついで延期になったり中止になったりした仕事が、秋に集中したことが理由です。仕事があることは喜ばしいことですけれど、お母ちゃんはバタバタです。仕事に行くにはまず、子どもを自転車で保育園に送ります。何をするにもどこに行くにも、仕事をするにはここから始まるのです。

1ヶ月ほど前。お笑い芸人がブレーキのついていない自転車に乗っていて、摘発されました。NHKをはじめ各局のニュースでも取り上げられ、扱いがかなり大きかったように感じます。このことがきっかけではないのでしょうが、自転車の取り締まりが強化されています。
ブレーキのついていないピストと呼ばれる自転車の存在、初めて知りました。若者を中心に、公道でブレーキをはずしファッション感覚で乗っているんだとか。ブレーキのコードが見た目に邪魔らしいのです。ブレーキをはずして軽くしたボディ、ブレーキなしでもペダル操作で止まれる運転技術、そしてそれがかっこいいと思っている。あぁ、とんでもないですね。
自転車はガソリンを使わない環境に優しい乗り物です。そして健康にもいい。特に震災で交通機関がストップしたことから、自転車の利用者が増えています。その一方で、自転車と人との事故も増えています。事故の原因は、ピストなどの整備不良の自転車に乗る、携帯で通話をする、メールを打つ、ヘッドフォンで音楽を聞く、傘差し運転、飲酒運転、などなど。これらはどれも法律違反です。つまり、自転車は車なのですね。ちなみに傘差し運転は、傘をハンドルに取り付けるのもダメです。とりつける器具はものすごく売れているらしいのですが。(とりつける器具が売られているというのもおかしな話ですね。)

なんだか、自転車で法律違反を犯してもそれほどたいしたことにならないような雰囲気すらありますが、こんなケースも。夜間、女子高校生が携帯電話を操作しながらライトもつけず走行中、歩行者と衝突し重傷を負わせた事故。賠償金は5000万円に。もちろん支払えるはずもなく、自己破産せざるをえません。重傷を負った被害者も気の毒ですが、加害者の女子高校生もこれからの人生が自己破産から始まるなんて。無灯火に携帯電話。ちょっとした知識のなさから、人生が狂ってしまいます。自分の身を守るためにも改めて自転車に乗る際の知識が必要です。自転車でも法律違反を犯して事故を起こした場合、責任は重いのです。

そもそも自転車はどこを走ればいいのでしょうか。「原則は車道を走る」ですが、1960年台、自動車が増えたことにより自転車と自動車の事故が増えました。このことから自転車は例外的に歩道通行可能になりました。その例外とは具体的には「標識のある場所」「13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者」そして「車道の状況から見てやむを得ない場合」いずれもあくまでも徐行通行です。歩道を通行してもいい、つまり徐行で通ることはできるけど、走っちゃダメ。というルールです。難しいですね。特に「車道の状況から見てやむを得ない」って。よくわかりません。
自治体によって、車道に自転車専用レーンを整備することも進められています。が、その自転車専用レーンに車が駐停車しているのもよくあることです。また自転車で車道を走っていて、クラクションを鳴らされることも。「自転車は原則車道を走る」「自転車は車の仲間である」ということを理解していないドライバーの認識不足も問題です。

3年ほど前、自転車の3人乗りに対する取り締まりが厳しくなったことがありました。子どもを自転車の前後に乗せて走るのは違法だと。しかし、2人以上の子どもを持つ親から猛反発の声があがり、安全性の高い3人乗り自転車の開発を進めることを前提にひとまず今回は見送る、ということにはなりました。(マッシー通信連載53「3人乗り」)
あれはいったい何だったのでしょうか。もちろん、3人乗りの問題は解決していませんが、公道において走る凶器ともいえるようなピスト自転車を放っておいて、3人乗りの取り締まりを先に強化したとは。かたや、あくまで趣味の世界のピスト自転車。かたや、他に移動手段のないやむを得ない状況での3人乗り。どちらを先に取り締まりを強化しなければならないのか。一目瞭然でしょう。(まぁそれなりに取り締まりはしていたのかもしれませんが。)

とはいえ、保育園の送り迎えをしていると実に様々な自転車状況が見られます。やはり子どもにヘルメットをかぶらせていない人がとても多い。私も仕事帰りにヘルメットを持たずに自転車で子どもを迎えに行くことがあります。ですが、子どもを後ろに乗せるけれども走りません。つまりベビーカーのように自転車を引いて歩く。この場合、自転車は歩行者扱いです。時間はかかりますが、安全性を考えるとヘルメットなしで子どもを乗せて自転車を走らせる気にはなりません。
特に、幼稚園の送り迎えをしている保護者で子どもにヘルメットをかぶらせていない人を多く見かけます。幼稚園児の多くは園の帽子をかぶっていますが、もちろん園帽はヘルメットではありません。でも、ヘルメットをかぶらせたうえに幼稚園の帽子も持っていく。現実的ではありませんね。自転車で通園する家庭にとって幼稚園の帽子は邪魔になっているのではないでしょうか。ヘルメット着用の妨げにもなっている気がします。安全な自転車通園を真剣に考えた場合、自転車で通園する家庭は帽子をかぶらなくてもよい、などのルール作りも幼稚園側に必要になってくると思います。または園帽そのものをヘルメットとしても使えるようにするなど。いずれにしても自転車問題は乗る側だけではなく、 ま わりの環境ひっくるめて考えていく必要があります。
そうそう、先日などは、自転車の前かごに子どもがしゃがんで乗っている姿も見ました!もちろんヘルメットなし。チワワじゃあるまいし。目が点になりました。
10万円前後もする3人乗り自転車をすべての人が買えるとは思いませんが、せめてヘルメットだけは子どもにかぶらせましょうよ。親として、最低限できる安全策はとりたいものです。

歩行者、自転車、車。狭い日本でこれらが共存していかなければなりません。まずは弱者優先。一番守らなければならないのは歩行者、特に子どもとお年寄り、障害のある人。そして環境の整備。今すぐにでもできるのは自転車と自動車利用者のちょっとした意識の改革です。
最後に、このコラムの場をお借りして、一言。
「公道をブレーキのない自転車で走るなんて、かっこわるぅ!そんな人とは絶対に結婚したいと思わないよ!」
多くの人に大声で叫んでいただきたいです。

2011年10月31日
増子瑞穂

●子どもを乗せて車道を走る勇気はありません。こんな公道たくさんあります。

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