ヒトをかたちづくるものは凡そ200個の骨・・・。
それらの一つひとつを繋ぎ合わせ、人体の自在な動きを可能にする。
その仕組みを受け持つのは400個の筋肉・・・。
幾つかが協力して1つの骨を動かすのだと言う。
その構造体に支えられて様々な器官があり、個体維持のシステムが機能している・・・。

日頃、人は表面の美醜にのみ心奪われるだけ、殆んど意識することはない。
最も時には体調不良!と言うシグナルで病院のお世話になることに・・・。
現代医学は頭部の輪切りを、或いは管を通した食道や胃をその内側から見せてくれることになる。現実には見ることが出来ないブラックボックス、人体と言う小宇宙だ!
そういえば、かって「驚異の小宇宙人体」と言うNHKの特集番組に驚嘆したことがあった。
CGによる映像も然ることながら、様々な仕組みに驚かされたのだ。
一体誰が・・・。この仕組みを造り人体をデザインしたのだろうか?
その見事さ!人体の不思議さにはほとほと感動するばかりだったのだ!
・・・・・・
そんな疑問、好奇心に答えたものだろう「人体の不思議展」が、東京国際フオーラムを会場に開かれていた。
会場を埋めて結構う若い世代が多いように見えた。
人体を前に熱心にスケッチをしている若い女学生・・・。
人の眼を気にするふうも無く人体の構造や仕組みをすばやく描きうつす・・・。
厳粛な空間も意外にあっけらかんとしているのは制服姿の女高生が多いせいなのかもしれない。
触れることが出来る人体の周りにも数名が手を差し伸べ、指先でなぞる・・・。
頭部、体幹、手、足、そして、筋肉、血管、神経系の組織が全身を覆う・・・。
脳、心臓、肺、胃、生殖器などの臓器は縦横に切断して細部までもあからさまにして見せてくれる・・・。

外界の情報を捉える多くの器官が頭部を構成する。
眼は個体を安全に維持するための情報のほとんどを捉える。耳は音を捉え、鼻が臭覚を、口は食物などを食み味覚を・・・。意思を伝える音を発するのも口・・・。
眼、耳、鼻、舌、触角、つまり、餌を発見し、危険を察知する5感覚器の発達はまさに動物とも共通するもの・・・。
決して飾り物を取り付ける為にあるのではない。
・・・・・・・
私たちは「あたま」で考える。そのあたま(脳)の各部位が人体の様々な働きを分担し、手指につながる。
「へェ、そうなんだ!」と分かったのは、たまたま、この種の展覧会を見たロンドンでのこと、もう30数年?も前のことになる。
巧みな人体モデルや図示されたものでも半信半疑、ヒトの仕組みの不思議さに感心したものだった。
輪切りや体幹を縦に切られた人体のホルマリン漬けはドイツの博物館だったろうか。
ショックで正視できなかった。
勿論、ここにあるものの全ても特殊な処理(プラストミック)が施されているとはいえ人体そのもの・・・。
数十体も有るのだろうか・・・。
しかし、何か違うと感じる若い世代の明るさ!何かが違っている感性の差・・・。
・・・・・・・
とはいえ、人体の不思議は、また矛盾でもある・・・。
森羅万象の全て、そうなのだろうが・・・。
その人体も完全であるとは言え無い。
つまり、完全であればモノの発達は無かった。
人類が誕生して以来「生きる」ために様々な「モノ」が使い始められ、創り出されることになるからだ!
ヒトとしての人体が未完であったから、その欠点を補うためのモノの発展があった。
生きるための工学・技術が連鎖反応的に発達した。
鋭いつめを持ち、牙を持った動物から身を守るために、なんだかの道具や武器が必要でもあった。
ヒトはモノを創り、そして考えるための「脳」の拡大があった。
・・・・・・・・
人体の欠点を補うことで発達したモノ造り、工学技術は今、その「人体」そのものを目標として再構築することを目指している。
ヒュウマノイドロボットへの取り組みである。
やがて鉄腕アトムのように・・・。
ヒトの何気ない動き・・・・・・・立つ、座る、歩き、走る・・・。
先端工学とは言え、その動きはまだ5,6歳? その緒に付いたばかり・・・。
しかし、その成長は早いものだろう・・・。

その一方では、そのヒトが持つ不思議、思考、意識の解明に向かうことになろう。
「我思う故に、我あり」、「考える葦である」とも言われる。
喜び、悲しみ、愛する、その心・・・。

今世紀はまた、人体そのものの改造、生命科学の時代だとも言われている。
ヒトゲノムの解明はクローン人間、人工臓器、臓器移植へとつながるもの・・・。
生命の倫理までも問題にされることになるのだろう。
ヒトの「脳」による未知への好奇心は連鎖し、探求は止まることはないのだ!

(Jan 30/2005 記)

追伸:
コラムをはじめて2回目の新年を迎えた。
一体、誰に?向けて書くの・・・。
OBも最早や、高齢年代から20代まで・・・。
世代間の意識、ギヤップも大きい時代だ!
「分かるわかる」と相槌をうってくれる者から、「なーんだ、そんなこと・・・」
或いは「何を言ってるんだろう・・・」と意図すら理解しない?ものまで・・・。
そう思い、悩み、締め切りに追われての執筆作業もどうやら32回目! 新年も、もう2月を迎えようとしている・・・。

Pocket
LINEで送る