世界へ発信するメイドインジャパンセレクション、「ジャパンブランド」。
そんな展示会が新宿パークタワーのリビングデザインセンターOZONEで開かれていた。
地域の伝統的な技術や素材などを活かし、世界に通用する新たな「ブランド」の各地での取り組みを支援するものらしい。

その活動のなかから生まれた、30地域の「JAPANブランド」を一堂に集め、その背景となる地域資源の特徴や文化などを紹介していた。それら固有の背景を活かして開発された商品を世界都市・東京の反応を確かめるためのものだろう。

広くはない会場のU字型に配された展示台には、地域ごとのブランド品が並べられている。グローバル・ブランドの構築を目指す三条は刃物や工具類を。
「Casting Innovation 新・川口鋳物の創造」を謳い、鋳物製のナベ類が。黒い筋肉質の造形、ワンポイントの赤いつまみがが魅力を際立たせる。
新たな装いを魅せるのは漆器、YAMANAKAブランドの確立。「伝統と挑戦」をキワード。
KYOTO PREMIUMは京都賞として公募していたあの、コンペの商品化?
心の風に筆が舞うJAPAN KUMANO色鉛筆感覚の多色の軸を持った筆のデザイン・・・。
一寸とび過ぎ・・・。

育まれた地場産業のブランドの芽は花開くのだろうか?生き残り?
取り組みの意欲を見るものではあった。
小さな工房、小さな村から、世界への挑戦は始まっていた・・・。
バブル崩壊後の長いトンネル、空洞化し、沈滞化した<モノづくり>はいま、どうやら息を吹き返しつつあるように見えた。

コンピュターの出現、そして、日常的な生活への浸透に工業社会は終わった!考えたものは多い。
「脱・工業社会」をそう解釈し、いまは情報社会なんだとも言っていた。
日本企業は競って低賃金諸国を求めて海外に拡散した時代である。
我が国のモノづくりはなくなる。そうも思われていた。
しかし、メモノづくり”を捨てるわけには行かない我が国の事情がある。
「脱・工業社会」ではなく「工業IT化社会」と翻訳すべきだったのだ!

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インダストリアルデザイナー、工業デザイナー、プロダクトデザイナー、作家、工芸家、陶芸家、金工・木工デザイナー、家具デザイナー、クラフトデザイナー等と呼ばれ異種?しかし、同根とも言える様々なジャンルのクリエーター、デザイナーが活動している。
当然ながら「その違いは、なに?」「その境界はある?」などと聞かれることも多い。
しかし、その違いを挙げるのはなかなか難しいこと・・・。
簡単にその領域を限定すべきではないともかんがえる。
デザインは既成概念に囚われず、あたらしい可能性を求めることにその特性があるからだ。
ただ、強いて言えば・・・。
作家、工芸家、クラフトデザインなどは熟練した技術のモノずくりであり、<用>の<美>を求め、一途な心と手、長い時間をかけてせめぎあう技の作業であると言うことが出来る。
また木や竹、陶磁器、ガラス、石、金属などと自然素材を使い加工する、単純で構成部品は少ないモノと言う事になる。

素材の優しさに魅了される心の、なによりも自分を表現する生き方なのだ。

かって日本クラフトデザイン協会の機関誌で理事長と対談したことがあった。
デザインが持つ強い市場性に対して「クラフトデザインは、余りにも個人的・閉鎖的で市場性に欠ける」と言うことを言われていたことを思い出した。
そのことは今も変わらないことだろう。
1品を作ることで、個性的であると勘違いする若者は多い。
確かな根拠を持たずとも、モノは出来る。
しかし、間違えば、普遍的な共感を得られルこともなく不要不急のモノづくり?独りよがりにも・・・。

インダストリアルデザイン、プロダクトデザイン系は何よりも市場性、確実性を優先するモノづくりである、と言える。
ロボット化され、システマチックなラインから生み出される生産品を対象とし、比べれば明らかに生産量が違う。

そのことは間違いのないモノづくり、調査や実験が繰り返され、市場性を考え様々な要求条件にも応えるための組織的なアプローチをせねばならない。 苦しみ、悩む内容は違うということだ。
つくり手として「モノ」への「思い」は同じでも、人の手が入り込む余地、個人的な温もりを伝えることは極めて難しい。

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クラフトデザイン、親しみと温もりと・・・。
北欧デザインには多くの人が素直に共感するようだ。
何十年もの前から造り続けられているイスやテーブル、食器など・・・。
しかし、いまも新鮮だ!
木製品はともかく、ガラスや金属製品ですら温もりを感じる・・・。
鮮やかで透明な色彩・・・。
私はMade in デンマークやMade in フィンランドなど、北欧デザイン製品には触発され、心惹かれてもいる・・・。
憧れた北欧へは数度訪れており、もう十数年前になるだろうか?国立スエーデン芸術大学へご招待を受けて訪れた。表敬訪問の後、学長は十数名の先生を伴って歓迎の昼食会を開いてくれた。
野菜や魚などが並ぶ市場の雑踏、その中程にあるテーブルでの食事だ。
大学の工房では授業の名残?木片やスチレンボード類の残骸が所狭しと散乱していた。
この種の風景は世界に共通するものだった。学生の作品が展示された空間。副学長のララステッド教授には近接するデザインセンターにもご案内戴いた。
理事長が取り出して見せてくれたのは「斧」、だった。

(feb,27/2007 記)
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追伸:
その後スエーデンからの来日時に、お土産に頂いたものはノーベル賞授賞式で使われたというスプーン。
後でわかったのだが、実は三条でつくられたもの、Made in Japanだったのだ。

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