もう数ヶ月が過ぎたような感覚になっていた。
新年にはそれらしく希望と未来に繋がるテーマを考えていた・・・。
しかし、最近のニュースも暗い・・・。
原油の高騰、サブプライムローン、偽装問題・・・?
そして、世界は同時株安・大不況になるのではと深刻なのだ・・・。
「アメリカがクシヤミをすれば、日本が風邪を引く!」と言われていたのはもう、かなり前の話だが・・・。その依存体質は薄れたとは言え、いまも変わることはない・・・。無関係ではとすまされない事態なのだ。

世界の工場と言われていた時代、輸出は様々な国に及んでいた。
特にアメリカに集中したことで職場を奪われた人々によって製品の破壊や不買運動を繰り広げ「ジヤパン バッシング」が各地に広がっていったことがあった。
経済摩擦で起きたバッシング。いまは、「パッシング」なのだとか・・・。
「バ」と「パ」、わずかに一字違いながら、その意味する差は大きい。
勿論いずれもが好ましいことではないし、「国際社会から日本が消える」という根拠に・・・。
ニュースの中で、大田経済財政相は「残念ながら、もはや日本経済は一流と呼ばれる状況ではない」といい、「世界経済の変化に取り残されている」とも。
「2006年の世界の総所得に占める日本の割合は24年ぶりに10%を割り、1人当たりの国内総生産(GDP)は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で18位に低下した」のだとも訴えている。
国全体が世界に挑戦する気概を取り戻して欲しいというメッセージ。
高い経済の成長が見込まれるのではという思惑もあるのだろうが・・・。

先日の読売新聞社説には「『日本経済に輝きを回復させるには何が必要か』・・・。そうした厳しい認識に立つならば、現状を打破する手立てを速やかに用意すべきだ。『日本経済の進路と戦略』が掲げる成長戦略は『都市と地方』、『大企業と中小企業』などが連携を取りながら成長し、環境・省エネ技術など日本の強みを生かした『つながり力』『環境力』などの日本の強みを生かした成長をと言う政府案。いま必要なのは日本経済の将来に対する不安を取り除き、海外からの信頼を取り戻すことだ。それには、実効性のある政策の青写真を、出来るだけ早く内外に提示しなければならない」と提言している。

このコラムでもしばしば我が国の衰退、凋落をいい・・・。
またそれを予測させる数値や文言を素材にしてきた。一方では、矛盾することだが戦後の「いざなぎ景気」を超える期間、好況を続けているのだと言うことも・・・。
しかし、その空前の好況、聞いてもほとんどの人が実感することは無い。と言う不思議!そのことは、年金問題への不安や不信もあって、一層の無力感を与えているのだ。
そして今、その好況を実感することもないままに世界的な不況の渦中に取り込まれていくことに・・・。

しばしば訪れたこともあるロンドン・・・。その地下鉄の初乗りが992円というニュースを聞いて驚いた!
ちなみに日本は160円、ニュヨークは244円・・・。
ホテルの冷蔵庫も付かないビジネスホテルが3万円。日本の2~3倍は高いようだ・・・。
かって「世界で最も生活費が高い」と言われた東京。今は最も暮しやすい都市になっていたのだ。銀座では新興大国、中国からの観光客が札束を手に「ブランド店」を走り回り、旅慣れた欧米からの観光客は、安い東京の物価に驚きながら、「100円ショップ」でのお土産を買い漁っている・・・。
しかし、「世界一高い東京」のイメージはいまも根強い・・・。

日本は円安バブルなのでは?
円の対ユーロ価値、ドル換算の問題でもある。
そのために退潮を表す数値になって、国際社会でもマイナスイメージを与えることになっているのも事実だろう。
「円安」政策が国策であり政府方針でもあり、グローバル企業にとっては好ましく、輸出は極めて順調なのだ。
「世界経済は全体として拡大成長する中で日本からの輸出は増加を続けている。アメリカ向けは多少、少なくなっているが、その他の諸国向けが増加している」のだと福井日銀総裁のコメント。ちなみに’07年の貿易黒字は10兆8,249億円、前年比37%の増。
戦後では始めて、アメリカを抜いて中国が最大の貿易相手国になったのだとか・・・。 BRICsへの輸出は中国19%増、インド39.7%増、ロシア54%増、ブラジル32.5%増などと、確実に拡散し、デカップリング論(アメリカとの切り離し)がいわれる。しかし、輸出製品の多くが部品類で中国、メキシコなどへ輸出し、製品としてアメリカへ輸出される。様々な製品の部品迂回輸出でアメリカへ輸出されると言う意味ではリカップリング論(連動=アメリカ市場にに連動する)なのだとも。
あのipodも日本製部品が5~60%の比率で使われているのだ。
あたり前のことだが、日本でつくったものを高く売り、海外のものを安く買うこと・・・。日本はそれが出来る世界でも有数の国なのだと胸を張る専門家。

グローバル企業の利益確保の手段は、さらに中小零細企業への価格転嫁を許さないシステムにもある。利潤の社員や下部企業(ドメステック中小企業)への還元も無く留保し、更に利潤を求める投資にまわしているからだ。
そのことが、庶民生活にマイナスに作用し格差を強調させるものになっているのだ。
好況を聞くのに、全く実感出来ないと言う不安・・・。
実感を与える還元がなく消費マインドを冷やし、内需経済の悪循環におちいらせてもいるということだ。
世界一ともいわれる潤沢な資金、債券大国日本・・・。

「日本が風邪を引くとアメリカが寝込むことに!」なるのかも・・・。 
仮に日本が円高政策に変換すると・・・・
OECDはG8中のアメリカを抜いて第1位になるのだという。
技術力と経済力は世界のトップレベルをいまも、維持もしている。
しかし、東西冷戦を経た現在、世界の投資は自国の、自社の、個人の投資リスク分散をはかるためのBRICsへ。
そして、その次の国々へと目配りを怠らない。その意味では日本へと言う図式は薄れたと言うことだろう。それが「パッシング」の意味だろうと考える。

「しかし、それはいまがピークなのだと、技術系に進む学生は2割。8割は文系・・・。大学の教育はだめになっている。
中国、インドなどの大学生はよく勉強をしているのに・・・。
このままで、わが国にある技術の優位性を維持できるはずが無いし、エリートが育っていないのでは」と警鐘を鳴らす榊原英資氏(早稲田大学教授)

日本的な技術開発はチームプレーで対応すべきで・・・。
いま、アメリカの凋落とユーラシアの反映が予測されている中で、日本が取り残されない戦略も必要だろう。
経済活動は、またデザイン活動の基盤となるものでありビジョンメーキングに深く関わるもので、未来生活を示唆するコンセプトにも不可分のことなのだ・・・。

(JAN.31/2008 記)

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メモ:
・前回のコラム67:「21世紀は日本の世紀」と言わせたその発展が、なぜ挫折することに?勿論、それらが極東の果ての小さな孤島日本が、と思いそれが研究者のリップサービスであろうと考える冷静さ、客観性はある。しかし、根拠の無い話ではない。当時の驚異的な成長は現在の中国以上だったのだから・・・。
・地球規模での不況感が負のスパイラルとなって人々の職場を奪い、日本人としての自尊心すら奪い惨めな生き方しかないと言う危機感。
・留学生も、日本を目指すよりはアメリカやEU、中国へと言うことになる。
日本に未来がなく、学ぶものがなければ、魅力を感じるはずもないからだ・・・。
・中東の国、ドバイには643メートルの高さの塔、砂漠の中に未来都市が、東京ドーム6,000個の広さだというドバイランドなどの建設が進められている。
・中国製の冷凍食品の回収は日本側企業への信頼のイメージをも失墜させた。食品の安全性が再び問題に・・・。その影響の広がりは大きい・・・。

参考:
・いざなぎ景気:1965年から’70年までの57ヶ月間もの経済拡大局面が続いていた。この5年間に名目GNPは2倍以上になりアメリカに次いで世界2位(’69)に。
・BRICsの’00年8.0%は、’08年には1兆2,900億ドル、13.7%になり、トップのおよそ6,000億ドルのアメリカの2倍、世界経済成長のエンジンになっているのだとも・・・。

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