時間が迫っている・・・。
切り取った紙片を手に小走りに移動している。その目は次の次を見ながらの作業でもある。
大脳の思考回路がダイレクトにつながり、全身が、頭と手、足が夫々の意志によって機能している様に見える。緊迫した空間の中で皆が集中し、忙しく動いている・・・。
どの部屋も、うっかりそこに突っ立つていると、ぶっかって来られかねない危うさだ。
プレゼンテイシヨン、4枚のパッドにまとめ上げる作業は実に手際がよく、早い。
最終日の朝、7時の締め切りまではあと30分弱・・・。
毎年見慣れている徹夜作業とは言え「大丈夫だろうか?」「間に合うのか!」と気をもむ時でもある。
「終わったァ~」 疲労感の中で、床一面に並べられた作品に見入る学生たち・・・。
一変するなごやかさだが見つめる目は鋭い。もがき苦しんだ自分の作品との比較もあるのだろう。
なぜか悔しそうな、不安げな顔も・・・。しかし、やり終えたと言う安堵感だろう、笑顔も見える。
ほぼ全員が配布された40枚をクリアーしていた。したのだ。
今年のは終わり、例年以上の成果が見られ、充実感が残った。
セミナーへの序章・・・・ 
6月9日(月) 先日来の研究室の打ち合わせと最終の確認を午前11時までに終えた。プリントを適切に修正。月曜日の午前中ということもあるのだろうか? 何となく静かだ・・・。
しかし、セミナーのを発表する日なのだ。
張り出されたプリントの前には数人の学生を見かけただけだった。
彼らにとってもう一つの問題は、既に発表されているグループメンバー全員との顔合わせだ。誰がリーダーで、誰が3年、2年生かも分からない状態での対面だからだ。
まして、キーワードを拠り所に必要となる情報を集める、目的を一つにした共同作業でもあるからだ。
特に所沢キャンパスの1年生にとってはそのイメージすらない上級生との共同・・・。
リダーシップ、相互の信頼と協調性が要求され、江古田、所沢両キヤンパス交流の数日間に。
6月12日(木)セミナー1週間前。情報収集、そして分析する。
そこここにグループミーテイングの輪が出来、意見の交換が始まっていた。
インターネットによる情報の検索にも忙しい。そして多少の参考本や資料も・・・。
出発前日、それらの資料は整理されA2版4枚分のプリントアウトーそれらしく、実にスマートだ。
キーワードの解釈、類推し、そしてグループミーテングによって収集された情報はセミナーのデザインアプローチの背景をなすものである。適切十分な情報、そのきめ細かな認識がデザインのアイデアを生み、可能性を提示するものである。
このチヤートはグループとして当日、採点・評価される対象となる。事前の心構えとしては、各自の予測能力を働かせを確認するメモを取る位の心構えが欲しいもの・・・。
6月19日(木)軽井沢へ向かう日・・・。
私が池袋に着いたのは、出発予定の1時間まえだった。一寸早過ぎる・・・。
混雑を避けて鈍行でゆっくり、と言う時間を考えていたのだが急行、乗り継ぎ接続が極めてスムーズだったからだが・・・。
しかし、早過ぎても時間を埋めることは簡単だ。人々の間をゆっくり歩き、売店の週刊誌、雑誌類を眺める。道端に座り忙しく行き交う人々を眺めるのも楽しい。
そんなもデザインでは意味あることなのだから・・・。
集合場所には、既に数名の学生がいた。
9:00の出発までにほぼ全員が集合し、今回のテーマ、条件を記したプリントを手にしていた。セミナーは既に始まっているのだ。
一人の遅れを待ってam9:12分、池袋を出発!
私の1号車には1、2年生が乗っているということもあり、マイクをとうしたやの意義と意味を伝える。そして、若干のノウハウも・・・。
それらの事もあってか、例年になく音水準の低い快適なバス移動だった。
テーマを考え、条件を考えながらまどろむ。「車輪の使用可能性」を夢にまで見ることになれば、いよいよ本格的なのだが・・・。
日本大学軽井沢研修所へ・・・・
毎年のことだが屹立する妙義山、奇岩に目を奪われながらトンネルを抜け、碓氷軽井沢インターへ。峠の茶屋で昼食後、緑の樹林をぬって研修所へ到着する・・・。
時間どうりの順調な移動。軽井沢の風はひんやりとし爽やかだった。
多くの荷を担いでの移動。雨が降らずに良かったと思う。感謝!
しかし、研修中は「雨が降れば・・・」と祈る?
この深緑の避暑地も彼らには無縁だからだ・・・。
予てよりの段取りが取られた。
スタッツフの手際もある、が上級生の経験が生きる時でもある。
グループ単位にテーブルがまとめられ古紙で表面を覆う。マーカー類の汚れを防ぐ配慮だ・・・。
次に、2階、廊下壁面に12枚のグループチヤートを順次張りだした。
取り敢えず準備OK! パッドを広げる・・・
彼らは席につくと早速メモ・スケッチを始める。
彼ら自身の時間、デザインアプローチが始まったのだ。
何よりもまず、「テーマ」の可能性、辺り(あたり)をつけてみることから始まる作業だ。
そして、自分のを改めて確認するはじめての作業でもある。
早々にメモ、スケッチ作業を終えると大浴場でリラックスする者も。
しかし、大部分は時間を惜しんでの発想作業が夕食時間まで続いていた・・・。
食後の休憩。しかし、既にテーブルでデザインに取り掛かっている者もいた。
6月20日(金)外はまだ暗い。廊下も常夜灯の微かな明かりがあるだけの暗がり。手探りで2階へ。
各室の明かりを頼りに進むと4,5名がパッドにアイデアスケッチしていた。昨日からの徹夜組みだ。
椅子を並べて仮眠中の者も。パッド13枚から22枚位までの作業量だろうか・・・。
「考えがまとまらない・・・」、「何をやるのかが決まらない・・・」とも。「アイデアが進まないので眠る訳にはいかない」と言う消極的な徹夜組まで。
しかし、それがセミナー効果、自宅であれば、また明日、と放り出していただろに・・・。
どんなものでも最初からすんなりと考えられる人はいない。
何かを創る、モノを創造するということは苦痛をすら感じることなのだ。
自分の能力をののしりながら、忍耐強く、単調な行為に耐えながら、頑張る。
辛い、苦しい、辞めたい・・・。誰もがそう思う時間を耐えて初めての<ヒラメキ>を体得する。
耐えること、それを好きになるかが能力だ、ともいわれるのだ。
6月21日(土)早朝、寮の玄関周辺が騒がしい。
これは何?子牛・・・。もっさりとした巨大な白い生き物が表敬訪問中であった。寮のオートドアーも軽々と開けて入ったものらしい。隣家の飼い犬だとか。従順、すっかり佐藤講師になついていた。
その後、私は見なかったのだがサルの一群が梢を渡って行ったとか・・・。
軽井沢駅と中軽井沢駅の中ほど、目の前を新幹線が走る別荘地帯・・・。
・・・・
条件に対して検討-求められている条件を見直し、自らの提案を考えなければならない。
・新たな提案であるのか?
・目的用途にふさわしい魅力的な造形であるのか?
・操作性が簡単であるのか
・生産的であるのかなど、与条件に照らしてアイデアスケッチを見直すこと。
あるグループではクイックスケッチ(5分)で忙しく手を動かしていた。
その時間で考えることは極めて難しいし、手も動かないだろう。
しかし、発想時間を切ることで「1人ブレースト」としてのアプローチは訓練として意味あることだ。
10分で2枚、1時間で12枚・・・。4時間もあれば40枚は楽勝。うまくいけば・・・。
また、グループリダーの責任、自らの制作と併せて後輩に手をとっての指導には感心している。
就職の面接と重なり、まる1日後れての参加だが、提出は42枚をもクリアーしていた。
当然、入賞の資格もあった。希望する4社からの内定を手にしていた。
6月22日(日)鳥の目、虫の目の審査風景・・・・
最終日、朝7時までに制作作業は終わらせ提出しなければならない。受け付けられた作品は全て大講堂の床面に広げられる。
レンダリングとその説明となるもう一枚。40枚余のスケッチ類はその下に重ねて置くことに。
取り敢えずは、その2枚が勝負だ!とうり過ぎる審査委員の眼を留めなければならない・・・。
今回は昨日駆けつけた佐々木、土田氏に加へ栄久庵、肥田、林、佐藤、そして私が審査を・・・。
各自、20ポイントをもって作品にマークする仕組みだ。
審査の基本はあるが、夫々のからの判断が尊重される。その為に記名式になっている訳だ!
取り敢えず、全作品を俯瞰する。ぐるりと見渡す視線の先にも、時に目を留める様な作品がある。ついつい近ずいて覗きこむことに・・・。
さらに、作品の列の間を思い思いに見て回る。良いと思われるものを手元の紙にメモを取る。
その数回の繰り返しで全体のレベルを、そして個別のレベルを把握することになる。
予め、気になる作品については座り込んで提案の内容や発想プロセスを確認する。勿論、デザイン条件を考慮しての評価だ!
次には、4ポイント以上の作品が集められ、その内容、質が比較評価される。
過不足ない水準を持った作品は満遍なくポイントを集めるが、しかし、必ずしもレベルが高いと言うことにはならない。その矛盾点の調整でも・・・。
この序列化はいつも難航する。まさに、一長一短。レベルが拮抗していることもある。
先日、2年生の授業で課していた「軽井沢レポート」を見ていた時、「セミナーでの評価が良いと言う人は、セミナーの作品だけの評価ではなく、常日頃の努力が評価されているのだ」という一文があった。このことはまさに言い得ている事だろう。
確かに、拮抗している作品の比較で、その事がないとは言えないこと・・・。
作品の順位が入れ替わる。一対比較による慎重な差し替え・・・。
夫々に、「もう一歩アッピールするものがあれば・・・」と残念に思う作品もあった。
しかし、最優秀賞、1席、2席、3席、そして努力賞・・・。難航した序列化も一応の結果を得た。順当なものであったとも思っている。
「受賞者諸君!頑張ったね、おめでとう!」
意欲があれば、効果は数倍増するもの・・・。
何を「提案」するのか。その発想能力は、一朝一夕に身に付くというものではない。
常日頃の生活の中に何かを求める心、好奇心と観察する目を持つことが重要なのだ。
それがアイデアを生む。発想の基盤となるものでもある。デザイナーとしての資質として大きい。
デザインはを持って、自らので学ぶことである。
その意味では今回、これまでにない自覚、心構えを見せてくれたセミナーでもあったと思っている。
また、自分の制作に追われながらも後輩の指導、手助けを惜しまない上級生の姿を何度も見掛けた。そのことは大変嬉しいこと。その心を忘れないで欲しいとも思っている。
を目標とする中で、意識するとしないとに関わらず、実に多くのことを学んでいた。
一人ではとても出来ないことも仲間となら出来る。
行き結った時、その空間や他の作品にをもらうことで、次に繋がる事も分かったはずだ。
ある意味で、は大変な数量でもある。
各自が挑戦してみたら、そのことを実感出来るだろう、改めて・・・。
今回は最高が52枚。同数が3,4名居た様に思う。
これは「選択を間違ったのでは・・・」、「レンダリングを失敗してる・・・」という意見もあった。「惜しいね!」と言う感想も・・・。
しかし、失敗は大きな学習、飛躍へのステップでもある。
ともあれ、作品の結果、入賞の有無に関わらず参加した人の全てが大きく成長している。
その自分をし、して欲しいものだと思っている。

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