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■OBの仕事・作品紹介

□菊池準二さん<本田技術研究所朝霞研究所>(S49年度卒)
                 からの『 ZOOMERという若者市場を狙った、商品 』の報告

菊池準二 <本田技術研究所朝霞研究所>(S50年度卒)
Junji.Kikuchi@mail.a.rd.honda.co.jp 

本田技術研究所で2輪のデザインにかかわった後、5年前ほど前に商品企画部門に異動し、国内市場に対しての企画で日夜苦しんでおります。

低迷する、日本の二輪市場ではありますが、唯一活気がある現象として、渋谷界隈を中心として、若者達がバイクをファッションの一部として取りいれたり、周辺の移動手段、等に活用しているという実態があります。当社に限らず、2輪業界各社、渋谷、原宿、代官山、等々での若者達のバイク事情を調査し、彼らをターゲットにした商品を投入しております。基本的に渋谷界隈での現象は、全国に強烈な波及効果をもたらしていると

いうわけでもないのですが、紙メディア等からの情報を介して地方でも多少の現象は見られ、結果的に、ある程度まとまった台数を獲得しているというのが現状であります。当社においてもそういった視点での商品をいくつか投入しておりますが、そのうちの一点について、少し紹介させていただきます。

ZOOMERというモデルであります。このモデルは4サイクルのベルト駆動で、50ccスクーターのパワーユニットをベースにしたものです。前述したエリアを中心に市場調査し、発想されたデザインです。初期の段階で私も企画立案に加担しておりました商品ですが、その後、同市場への更なる発信を求められ、離れてしまったわけですが、知りうる範囲でご紹介します。

隣りの芝生を見すぎた各社の、金太郎飴化したスクーターのデザイン(口が悪いですが)ですが、近年のスクーター市場の黎明時ではフルカバード、サーフェイス、といった、2輪のデザインとしては表現手法の備範囲が広がり、デザイナーも嬉々としたものですが度重なる企業間競争で現在のような市場を形成してしまったわけです。一方、渋谷などでバイクを活用している若者達では(個人的には一部のユーザーは社会悪化していると認識しておりますが。)スカチューンと呼ぶ改造スタイルが発生したり、ビックスクーター(250ccクラス)ではローダウン、スクリーンカット等々、で「自分だけのもの」を楽しむというファッションと融合するライフスタイルを築いておりました。そういった彼らが、改造を楽しむ余地も無く、又、個人を表現する上での棲分けもままならない金太郎飴の原付スクーターをチョイスするわけがありません。
但し、日ごろ金太郎飴に疑問を感じているプランナー、デザイナーも多くいて、何とかしたいという思いで悶々としていたことも事実であり、デザイナーとして新しい事にチャレンジしたいという気持ちで一杯であったため、そのエネルギーがこういった新たな発想やデザインを生み出したのではないかと言えます。

「スカなスクーター」とか「骨スクーター」とか呼び方もいろいろです。また、スクーターカテゴリーにおいてはシート下にあるヘルメットボックスは、マストの要件で、そういった機能がないスクーターなど世に出られないのが当たり前でありましたが、市場からのヒントや事実、重要な機能をスポイルすること等で呪縛から解放され発想の転換が達成できたといえます。
条件に縛られながらも良質な発想が求められることを諸先輩方は十二分に実践されてこられたことですから当たり前でしょうが、先のスクーターのような市場においては「棲分けず棲む」という作業でデザイナーも心身ともに疲れ果てる非常に厳しい条件です。戦術的には他業界でも時折見られる現象ですが、デザイナーにとっては厳しくもあり、空しくもあり、でありながら力の見せ所というマゾヒズム的な条件です。  話がそれました。

といった、背景で生まれたZOOMERであります、現在東京ではこのクセの有るコンセプトの割には好調に推移しており、今後全国に波及することを願っているという現状です。私個人は、次の仕込みで四苦八苦しているという毎日。デザイナーあがり(くずれ?)の商品企画というのも、結構使える(自我自賛で恐縮ですが)スタッフだと思います。スタイリングの探求に燃え尽きるのはIDデザイナーの王道ですが、反面ラフスケッチ等を交えて調査しプランニングできるのも「くずれ」なればこそ。が、しかし多変量解析等定量調査領域がちょっと弱いというのも事実。弱いところは得意なスタッフにまかせて、こっちの得意領域で勝負しております。私以外にもデザイナー出身のプランナーが結構、毒(?)をはきながら、日々苦悩している仲間が何人かおります。
実は、既存ラインナップのルーティンなデザインワークをしているより、余程本来のデザイナーの価値が問われる職場のような気もしております。変な現象ではあります。
エキスパート化による分業で効率を求めた歪みがだいぶ進行しているのではないかという推測もでき、デザイナーの有り方を再考すべき次期を迎えているのではないでしょうか。