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■OBの仕事・作品紹介

□早川忠将さん<三菱自動車工業株式会社>(S63年度卒)からの
                  MITSUBISHI「コルト」のデザイン報告。
(12/12/2002)


早川さんは日藝ーID卒業後、本田技術研究所、三菱電機を経て現職に就いておられます。今回は今話題の新車COLTの報告です。同車のインテリアは早川さん、エクステリアは同じく本学IDーOBの坂爪勇一さん(S57年度卒)が主任を勤められました。COLTの魅力を御御覧下さい。(早川さんの略歴はページ下段に記載)


■ 卒業生、在校生の皆さんこんにちは。89年卒業の早川と申します。
今回は、この場を借りてデザインを担当した『三菱コルト』の報告をさせてもらいます。『コルト』では、小生はインテリアデザイン全般を担当しました。同じく日芸卒業生である坂爪氏も、エクステリアデザイン開発を担当しており、『コルト』は、日芸OBによる作品(?)と言っても過言ではない車です(笑)。
『コルト』は、ダイムラー・クライスラー社との協業第一弾の車であり、今後全世界で展開を予定している、三菱としては初の世界戦略車という位置づけになります。国内では02年11月16日に発売が開始され、軽自動車『EKワゴン』に続くヒット車に育てようと意気込んでいます。


初代『コルト』の登場は、昭和30年代にさかのぼります。
69年から『コルト・ギャラン』になり、70年代でその名を消しますが、欧州市場などでは現在まで使用されていたペットネームです。最初から『コルト』を復活させようと決まっていた訳ではなく、随分社内に議論がありました。若い人にはまったく馴染みのない名前と思います。実は僕も『ギャラン』が付かない多くの『コルト』のカタチが識別できません(苦笑)。
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■『コルト』の量産デザイン開発は、先行デザイン研究を経て2000年春にスタートしましたが、そのデザイン開発のプロセスをふり返ると、社会をお騒がせした「リコール隠し事件」「経営陣の総入れ替え」「ブーレィデザイン本部長の就任」「次々現れる強力な競合車」等、大波小波、紆余曲折、阿鼻叫喚の日々が思い出されますが(苦笑)、出直しの三菱自工として『クオリティの高い商品をお客様の視点で』を合い言葉に鋭意開発した車です。お時間のある時に、お近くの三菱ディーラーにて実車をチェックいただければ幸いです。
ちなみに小生の個人的なお奨めは(笑)、レッドのスポーツ外観&クール内装、ウオームシルバーのエレガンス外観&ウオーム内装です。

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              ◆EXT-1
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       ◆EXT-2

◆EXT-1
この車、なぜか写真うつりが非常に悪く、カタログ写真のビュー設定にも大変苦労しました。今ではお客様の「写真より実車の方が全然良いね」という言葉は誉め言葉だし、と割り切っています。

◆EXT-2
ブーレィ本部長の方針で、今後進められていく「新三菱アイデンティティ」を採用したフロントデザイン。全部同じ顔にするという訳ではありませんが「スリーダイヤをしっかり目立たせる」という意図は、全車に採用されていくものです。僕達はもう見慣れましたが、皆さんにはまだ「目にイタイ」のではないでしょうか(苦笑)。

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◆cool-INT
「スポーティ&カジュアル」がテーマのインテリアです。世界初(?)ハザードノブを青くして、「何してんだぁ」と実験評価部門にののしられながらも細部までコダワリました。リア席にある「クッション(用品)」は、初代「マイバッハ(戦前の高級車)」にも装備されていたブーレィ本部長コダワリのアイテムです。

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◆warm-INT
「フレッシュ&モダン」がテーマのインテリアです。簡単に言えば「ジジ臭くないツートン内装」です。主な部品のカラースキームは、クール内装と共有しているものはありません。これまた「ばかやろう」と生産管理部門にののしられながらもコダワリました。ここまで明るいベージュ内装は、国産車では珍しいと思っております。これまた「汚れたらお前が掃除してくれるのか」と営業部門にののしられながらもコダワリました。
(ちなみに特別汚れが目立つ訳ではありません)

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◆EXTイメージスケッチ
デザインテーマは『シック&スポーティ』です。オリジナルデザインは、当社ドイツスタジオ所属のボスニア人デザイナーの作です。「かわいいの」「便利なの」「広いの」「若モノ向けの」、、等いろいろある中で、我々がフラフラになりながら辿り着いた結論は「大人も乗れるコンパクト」でした。ジェンダーフリーでエイジレスなキャラクター、飽きのこないクリーンで完成度の高いスタイリングの実現に腐心しました。ノーズからルーフまでダイナミックに流れる特徴的なラインが、良く表現されている坂爪氏のスケッチです。

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◆INTイメージスケッチ
デザインテーマは『クリーン&モダン』です。小生は携帯電話やオーディオ関係のデザイン経験もあるので、こうした他分野のデザイン手法を取り入れたりもしてみました。このスケッチはブーレィさんに気に入ってもらおうと、必死に描いたスケッチの一枚です。カラースキーム(内装色)のリファインは、最後までブーレィ本部長にイジメられカラーリスト共々随分泣かされましたが、今となっては良き思い出。(笑)イメージスケッチ通りの仕上がりと勝手ながら自負しております。


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◆ブーレィ本部長の友人(?)のカナダ系中国人フォトグラファー、ベンジャミン・リー氏による写真です。氏は「VOGUE」等の表紙を撮っている写真家としても知られています。白黒写真というシンプルな平面構成に、光の陰影と空間の奥行が上手く表現されています。『コルト新車発表会』でも展示されたもので、専門誌「カースタイリング」のコルト記事はすべてリー氏の白黒写真になるそうです。


早川忠将
89年 日本大学藝術学部 美術学科 インダストリアルデザインコース卒業
89年4月 (株)本田技術研究所 和光研究所 入社
94年4月 (株)三菱電機デザイン研究所 入社
00年4月 (株)三菱自動車工業 入社 現在、乗用車デザイン本部所属
自動車のエクステリア・インテリアデザインや、白物家電や情報端末等のデザインに係わってまいりました。
三菱電機時代には、自衛隊向け「対空ミサイル発射移動管制室」の人間工学視点のデザイン計画なんてぶっそうな仕事もありました(苦笑)
金と出世には縁のない分、様々な分野の様々な人、モノ、コトにふれる醍醐味を味わってしまい、ふと振りかえると、上記の様なフーテン人生です。(早川さん:談)

E-mail:hayakawa-tadamasa@pde.mitsubishi-motors.co.jp