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清水教授のデザインコラム/連載 - 74(08/01/2008)

「一層の開発競争? 手のひらの携帯・パソコン」

携帯がインターネットマシンになる
「そんな歴史的な、記念すべき日ではないか・・・」と、孫正義ソフトバンク社長がインタビューに答えていた。7月11日、我が国では初めてソフトバンク表参道店からアップルのiPhoneが発売された。
いまや定番・・・?
この種の順番を競う行列は、数日前からの徹夜騒ぎだった。
当日の午前7時。そのまえの10秒・・・。
周辺を埋め尽くす熱狂的なアップルフアンによるカウントダウンがはじまる・・・。
最前列だった青年が店内から出てくると、購入したばかりのiPhoneを高く掲げた・・。ユビキタスと言われる時代・・・。
次世代モバイルデバイスの指標、新たな情報機器開発競争を予感させるものでもある。
iMacやiPodなど、エポックメーキングなデザインを魅せるアップル製品のフアンは多く期待もしていた、と言うことだろう。

アップルが携帯を発売するらしい・・・。
そんな噂は、確かなものとしてかなりまえから様々に憶測されていた。
2007年1月、音楽のプレイヤーにパソコンがプラスされ、本体一杯の3.5インチの大型液晶画面を塔載してアメリカで発売された。
予想通り? 指で触れて操作するタッチパネル、ホーム画面には各機能画面が表示されており、ここから携帯など各機能にアクセスするのだという。
タッチパッドで指先の自然な動きに対応する操作性が特徴で、画面のスクロールや拡大縮小もストレスもなく出来る人間の自然で直勘的な操作性が試みられていた。
形はハイテク部品をいっぱいに詰め込んだワンパッケージ・・・。

NTT、ソフトバンク、KDDIなどのキヤリアに主導された商品開発が当然、と言われている我が国の携帯端末メーカー・・・。
新商品開発の国際的な競争力に遅れをとるのでは。
そんな構図・・・。
メーカー各社の、第三者としての提案が携帯・情報機器開発メーカー各社のスイッチが入ったのでは。

「日の丸部品は裏方」?という読売新聞の取材記事・・・
「iPod の超薄型機 nano をばらばらにしたら・・・。
しかし、その中身は日本の先端技術の集積だったのだ。日本の製造業の今が見えてきた・・・」のだと。

iPod は'07年4月には世界での販売が累計1億台を達成したという超ヒット商品。
ソニーが世界に広めた携帯音楽再生機としての「ウオークマン」は、iPod にその主役の座を奪われた。アップル社の勝因は、インターネット経由で音楽を配信する仕組みを整備したことだ、と言われる。
「日本勢はネット時代のビジネスモデル構築に出遅れたのだ」とも・・・。
・・・
分解したiPod
液晶画面では光の流れを整えて画像の明暗を作り出す基幹部品2種類の偏光版、供給出来るのは世界でもクラレか日本合成化学だけ。強度を高めるためのフイルムは富士フイルムと、コニカミノルタが世界市場を独占している。
電氣を一時的に貯めておく超小型セラミックコンデンサーは90個近くも使われ、小さいもので横 0・4ミリ、縦と高さが0・2ミリほど・・・。
本体のスリムなデザインを可能にしているのだ。
この部品も村田製作所など日本勢が世界市場を圧倒している。
分解・分析を担当した技術コンサルタントの岡本伸一氏は構成する部品の3〜4割は間違いなく日本製なのだという。加工技術でも日本企業がiPodを支える。
金属食器の街として知られる新潟県燕市の東洋理化学研究所は製品の面表面をつるつるに磨き上げる技術で貢献する。
部品や高度な技術が世界の最終製品を支えている。
それが日本経済を支える。

しかし、iPodには音楽データーを蓄積するフラッシュメモリーなど三つの半導体が使われている。何れも韓国・サムスン電子製・・・。
試算によると、その三つ半導体は合計5000円程度なのに対して、点数では圧倒する日本製部品の合計は1000円程度なのだ。
収益性の高い半導体などに人と資金を集中するサムスン流経営の強さが際立つのだとも・・・。

「アルマーニ」や「シャネル」なども・・・
海外の服飾ブランドに生地などの素材を供給しているメーカーへの経産省の聞き取り調査では、メーカーが受け取る対価は販売価格のわずかに1%程度との回答が大半だった。ブランド力で圧倒的に差をつけられているのが現状だ。
このままでは、日本企業は部品や素材作りを地道にやるだけで終わってしまうのでは・・・。
戦後の世界経済の中で、成功モデルだったと言われる日本型経営は、大きな変革期を迎えた。いまは、途上国の追い上げも、極めて厳しい・・・。
それでもトヨタや日産、ホンダ、ソニー、キヤノンなど、世界への浸透、グローバルビジネスを目指す企業、世界シェアーを占める企業も少なくない。
日本企業の高い技術力は同業、類似企業間によって切磋琢磨、触発しあう環境があってのことだろう。
そのことは、確りとした生活環境を捉えた洞察力、商品開発力が重要であるということなのだ。
確信を持って独創するデザイン、ものずくりをしなければならない。            

                        (07・31/2008 記)
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追伸:
・ID論の中で、自己分析のためのにも折々に描きださせるのだが・・・。
学生自らをつくる「もの」の調査には、その上位には必ずと言って良いほどにiPodが登場している。
・わが国のマンガやアニメは世界的な評価を受ける中で、私自身も今後の可能性、有望な分野だと思っていた。
しかし、先日の宮崎 駿監督の話は以外なものだった。
「いやあ、ダメですね・・・。
デジタル時代に育った人間には、アニメが理解できないようですね。
アニメはバーチヤルでは描けない。
人の痛みが分かる、その場の臭いや空気感を感じることが必要なんだ」という。