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清水教授のデザインコラム/連載 - 66(11/30/2007)

デザイン基礎ーーデッサンを学び、デッサンで学ぶこと・・・・

多くの美大系の入学試験には、多かれ少なかれデッサンに関わる実技試験が行われているのをみると、その力が、デザインの資質として重要であるということだろう。そのために受験生の多くは、1年も2年ものあいだ塾に通ったのだという。
「もう、いい、デッサンは・・・」、とややうんざり気味にそういう学生・・・。
「デザインはパソコンでやればいいし・・・」、とも考えているようなのだ。

しかし、デザインの現場では発想やアイデアの展開にはコンピュータを利用するよりも、手によるスケッチのほうがよいと改めて認識されているようだ。当然ながら、物事やアイデアを考え、一つひとつ突き詰めていくプロセスは、また勘による思考リズムがあり、手による自在な速さとが適切に連動するものであるのだろう。それらを視覚でとらえたフイードバックとの、相乗効果も大きいものと考えられることだ。とにかく、デザインにはまずは「観察」を目標とするデッサンが重要であり、その発想のプロセスにおいてはスケッチが多用されているのだ。
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デザイン基礎としてのデッサンは表現の手段ということが強調されがちだが、彫刻や画学生のための素描、下図を描く訓練や感性的、個性的な芸術としてのデッサンもさることながら、よく<見る>こと、そして<触れる>ことを通して極力正確に描き写すことが重要でもある。
たとえば、対象がおかれる空間、光源の位置、色の変化、形の細部の陰影による変化、材質感、また、それら対象がもつ構造的な特性、その形の意味などを・・・。
ただ、漫然と眺めるだけでは気付かなかったことにも気付き、見えるようになる訓練とも重なることなのだ。
このような対象物との関わり方、意識した見方、見る態度などは、普通デザインプロセスの最初の段階におかれる<問題の探究>、<発見>、<認識>といったこととも深く関わりあってもいることなのだ。
そこでは、デザインをすべき問題がどこにあるのかを<人間><社会><道具>、そして、<環境>などを見ながら探っていくことになる。

このような場合、生活者の視点から人間や社会、道具、環境を見ても、デザインの問題を発見するには不十分でもある。デザイナーとして要求される幾つかの観点から考察することが必要であり、デッサンはこれらの観点の一つであり、デッサンにおける対象物との関わり合い方、見方、態度、その他の観点のそれとは共通するところが多いのだ。
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デザインにとってのスケッチは、アイデアなどのイメージが外在化したものであり、それとの照応によってイメージを具現化、発展させる効果もある。 普通、このイメージは対象物の形についてのものであったり、構造についてのものであったりして、対象物の全ての性質を網羅するわけではない。たとえば、この種のデッサン、スケッチの例として、ハイライト描法は、外形の特徴や雰囲気を展開するために有効な手法であり、マーカーによるスケッチは車や家電製品などの動感や存在感ををもった線、面、立体などについてのイメージを素早く、効率的に展開するためには極めて有効な手法ではある。
これらに対してデッサンは、形態を成り立たせている多くの性質、形状、大きさ、材質などを扱うから、それらを、創造するための、見るための、描くための、伝達するための技術や知識を提供する。

勿論、ものを見る目、人々の欲望を読み取り、次世代への可能性を視覚に捉えうる実体として提案する力が必要でもあることは、併せて<知力>の必要を意味する。デザインとして描くことの<方法>、描くための<内容>、<モノを構想する力>となるものは人間としての<知力>がなければ出来ない作業でもある。しかし、その知力、勿論、一朝一夕になるものではない。幼児からの成長過程で受ける教育、様々な好奇心の中の体験に関わるもので、日々の生活のなかで生まれる疑問、その答えを求める行為が知恵をつけ、行動力となっていくもの。
ただ、デザイン教育の中で、ものを観察し読み取る訓練のなかでも「意識する」ことで、それなりの知力はつくものがデッサンでもある。
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さらにいえば、自然や人工物の世界には、わたしたちがまだまだ、気付くこともなかった森羅万象の形をつくる法則性が潜んでいることにも気付くことである。科学的、客観的である技法を学ぶことで意識し、何かを読み取ろうとするデッサンには、デザインにとっては不可欠の造形的素養と創造の思考手法を学ばせてもくれるもの、<デザイン力>の中枢をなすものであるといえる。

デッサンをなぜ学ぶのだろうか? 
その意味を理解し、学ぶ方法がわかれば学ぶ意欲と学ぶことへの興味をつくることになる。
勿論、デザインの自在な発想力と造形表現力を拡大することにもなるのだ! 
                        (30 Nov.,2007 記)
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付記:デッサンについて
・誰でも幼い頃から絵は描いているのだがいつの頃からか、苦手意識ができてしまう人は多い。見た通り、見えた通りに描くのだが、思ったように描けなかった、誉められることもなかった、と言うことなのだろうが・・・。
初めの、見よう見まねでは思ったように描けない、先生や他人にアドバイスを受けて間違いを指摘されることが必要なのだ。
自分の絵の間違いを自分で見つけることは大変むつかしいこと・・・。
時には、視点を変え絵を逆さにしたり、横にして見ると間違いや狂っているところがみえるものである。
・デッサンは、表現者の感覚的なもの?として捉えられがちだが、視・知覚の法則性や技術的、技巧的な面を忘れてはならない。
視・知覚の法則性、技術、技巧をマスターし描き続ければ誰でもデザインに必要なデッサンの基礎は会得することは出来るものだ。
たとえば、最も簡単な例として、まっすぐな線を引くためには手の動きの特徴を理解し、ある程度のスピードが必要、これは頭で理解するだけでは不十分で、繰り返し練習することが必要なのだ。
・あの万能の天才とも言われ、画家、彫刻家、建築家、科学者、デザイナーともいわれるレオナルド・ダ・ビンチ(1452?1519 イタリア)のスケッチ(デッサン)には、その求める内容の質への徹底振りと好奇心の広がりに驚嘆し、触発されることばかりでもある・・・。

○デッサンのチエックポイント
・対象物に対する光源・光線の位置関係をはじめに確り確認すること。
 対象物の空間、位置関係、形体の構造特性などの表現には明暗、陰影の的確な把握が必
 要となります。
・空間での対象物の形の見えかた、水平・垂直感、透視法、寸法・比例感の適正を考える
 力が必要です。
・鉛筆線の滑らかな線、重なり具合による濃淡の変化。空間、立体感の微妙な表現は明
 暗、陰影を捉える眼の訓練と繰り返しの練習が必要である。
・まずは、「デッサンの基礎的な技法書」を読み、確りと頭に入れておくことも上達の近
 道でしょう。
・その他