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清水教授のデザインコラム/連載 - 62(07/31/2007)

住みよい国、日本・・・・・

紙面の隅に小さく、「住みよい国、日本」という文字が目にとまった。

「ニューヨークのホテル?ロンドンの地下鉄の初乗りが千円・・・」
これは「最近の円安のせいでは?」
読みながら、「円の対ドル、対ユーロの均衡レートが不自然ではないのか?」とも考えていた。全文をそのまま転載してみた。

「久しぶりのニューヨーク、物価が高いのに驚いた。
部屋に冷蔵庫も無いビジネスホテルが3万円、1流ホテルなら5〜7万だという。
ロンドンでは地下鉄の初乗りが千円だというからますます驚く。
かって世界一生活費が高い都市として、東京やチュウリッヒと決まっていたが、今ではモスクワやソウルであるらしい。
米英、BRICs など、元気がいいといわれている国は随分と住み難くなっているらしい。
 ヨーロッパからは『ウサギ小屋に住む働き中毒』と皮肉られてもいた。
いささか自虐的過ぎるとの指摘も有ったが、むしろそこが日本人的感覚にフィットする面もあり、経済計画のキャッチフレーズとして採用された。
自虐的感覚はいまも変わらない、日本人はなかなか気付かず、認めたがらないが日本は今はかなりの居住水準、アメリカより短い労働時間、比較的低い物価水準と言うように、世界の中でも住みよい国になっている。
20年前には2,100時間だった、年間平均労働時間も今では1,800時間。
20年前の経済計画では、実現不可能と思われながら努力目標として掲げられた水準だ。
経済協力機構OECD 30カ国の一人当たり国内総生産GDPランキングは興味深い。
日本経済が成熟段階を迎えた80年代前半は12〜13位の中の上だった。
プラザ合意やバブル期を経て93年には世界のトップに上り詰めた。
その後順位を下げて現在は80年代前半並み・・・。
このままでは日本は衰退すると構造改革や上げ潮路線で尻をたたきたい気持ちが分かる。
住みよい国と言う感覚から言うと今の日本ははるかに良い」(日本経済新聞・大機小機 07.6/30)

 日本のフアンダメンタルは悪くない、むしろ、我が国の戦後経済からすればいざなぎ景気を越え、最も長い5年もの景気拡大を持続しているのだ、と専門家氏。
「とても実感出来ないよ!」と言う声、不満を吐き捨て八つ当たりもしたくなる生活実感なのだ。
自民党の選挙スローガンではないが「成長を確かな実感に!」したいものです。
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あの松坂は70億?、イチチロウが百数十億?でマリナーズに・・・。
ヒルズ族の桁違いの単位で聞かされる生活振りには、自分が中流以下であることを確かなものとして意識させられてもいた。
なにか自分の非力、苛立ちと焦燥感を煽られる気分でも合った。
実態は兎も角、バブル時の高揚した気分は銀行や、企業、そして個人を巻き込んでの土地信者を膨れ上がらせ、都心の地上げで大金を持った人々のために2、3億だといわれる住居がそここに売りだされていた。

狭い国土を考えると土地への投資、住居の購入は絶対のもの、という「土地神話」が庶民にも浸透し、何よりも我が国の経済界を狂わせてしまった。
考えてみれば社保庁の所業は、このバブル気分に倒錯し便乗したずさんなものだったのです。
この小さな日本と或いは限られた首都圏の不動産価値とが、あのアメリカ大陸と同じ交換価値なんだという話を聞いたのもこの頃のことだった。
「ウサギ小屋」に住んでいてもその質は高いのだぞ!と言う自負心・・・。
世界一とも言われた生活費が高い水準だったのです。
「後輩たちは生活が大変なので、安いニューヨークに留学しています」と言っていたのは台湾のOBたち。つい先頃のような・・・。

網膜に映る好況感。しかし、そのあとに続く無残な崩壊の残像には、必要以上に不況感の落差と無力感、不足の思いを大きなものしているのも事実だろう。
また、日本しか知らない多くの日本人、そのペシミズム体質がコンプレックスと重なり不況感から生活の困難を過剰に受け止めてもいたのです。

気付けば、世界情勢はガラガラと変化しており、比較すれば「はるかに住みやすい国、日本」と言われるようになっていたのです。
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数年を単位とし、一人ひとりの成長過程に影響を与えた「生き方」のめまぐるしい変化・・・。キネマ世代('36〜'45生まれ)、団塊世代('46〜'51)、DC洗礼世代('52〜'58)、ハナコ世代('59〜'64)、ばなな世代('65〜'70)、団塊ジュニア世代('71〜'76)、プリクラ世代('77〜'83)・・・。世代別の自分史と消費の関わりのフアッション世代相関論(『おしやれ消費ターゲット』:川島蓉子他 幻冬舎)にみる小、中、高、大、就職、結婚までの人間形成期に影響を与えた様々な社会現象。
迷走する戦後日本の生き方、その世代間の自分史は興味深いものでした。
戦後の貧しく、厳しい時代を生き、自分の律し方を知っている世代や知らない世代、それらの世代間のギャップは実に大きい。

そんな歴史、価値観、習慣、固有の風土や気候とどうしようもなく関わっての精神的風土は「素直に認めたがらない気質」をもまた、つくり上げていたのです。
勿論、その事は現状を良しとしない向上心?デザインの動機付けにも繋がるものではあるのです。

自己矛盾や自らの失敗を他への転嫁せず、足元を見つめ、自らの生き方を確りと捉えること。
「幸、不幸は自らの心が決める」という相田みつお氏の言葉には示唆される。 
「住みよい国・日本」の豊かな生き方は既に足元にあり、改めて実感することです。

                      (July 31/2007 記)

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追伸:
・社保庁、年金問題、天下り・・・。
まさに、「親方、日の丸」を絵に描いたような無責任ぶりは、国や官公庁への不信感を募らせ、各地に頻発する地震に豪雨被害、原発不安。食物の安全までもが疑われるものになっては・・・。

立つ足元すら危ない!そんな不安・不信感を一杯にためての日々、まさか日本が住みよい国になっているとは思いもよらなかった。
そんな日々のニュース、閣僚の失言にも本当に呆れ、腹が立つことばかり、「この国、一体なにを信じ、なにを頼りにすればいいのか・・・」
・軍事力を持たず話し合いで、という国の無力!

空しさを実感し、国際外交力のひ弱さを見せ付けられてもいる。
我が国においては、祖国のためにという言葉は死語に・・・。
北方4島の返還も北朝鮮の数十名、或いは数百名?とも言われる拉致誘拐問題も、その忍耐強い話し合いの交渉があっても解決はしないだろう。

・投票所へは豪雨、雷鳴が唸りをあげる中を出掛ける羽目になった。

ニュースとなった様々な悪行。その事に対する国民の不信感、怒り、自己矛盾の不満をも織り交ぜた全てを政治に浴びせかけた選挙。
予測されたもの、自民党の歴史的惨敗だった!
タレント並の人気を得ていた小泉首相の後を継いだ、若い阿部首相の未熟さは、海千山千と言われる政治家を組織するリーダーにはなり得ないのではと懸念していた。
表情の硬さ、人々に訴える内容、言葉の響きにも1/fゆらぎや人間的魅力にも欠ける。

小泉前首相との対比、これもまたその落差を強く感じさせること・・・。
政治は人気で出来るものではないが組織を持たない政治家は民意を背にした「人間力」で戦わねばならない。
続投を語る安部首相へのバッシング!「美しい国、日本」の実現は頓挫する?
まだまだ、我が国の政治的混迷は続き、世界の政治からは消えることになるのだろう。