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■清水教授のデザインコラム/連載 - 56(01/29/2007)

「自己実現」は「自分さがし」か?・・・・

人々の煩悩を払うという百八ッの除夜の鐘を数えながら新年を迎えた。
昨年のうさはしばし忘れ、こころ新たまるとき・・・。
とりあえずは近くの神社仏閣に参り、家内安全や健康祈願、さらには仕事が順調にいきますように、と祈る。ささやかな賽銭では申し訳ないが、あらためて自分の心に刻み付けることでもある。夜を徹して越年を楽しむ若者たち、「今年こそ、夢が叶いますように」と祈っているのだろうか。
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昨年は「自己実現」「自分探し」の文字が目に付き、人々に強く意識される年であったように思う。そのことは、最近のとても理解し難いさまざまなニュースの根底にもなっているもののようにみえる。しあわせの「青い鳥」を求める人々、その生き方の中にも成功者は生れ、煽り立てるような社会状況を見せつけるものになり、自己実現を求めるさまざまな人の憧れの指標ともなっている。
しかし、何よりも人の心に苛立ちと焦燥感を与えるものになっているのも事実だろう。
もはや地に落ちたとはいえライブドアー堀江貴文氏は時代の寵児ともてはやし、群れをなしたマスコミやレポータが追いすがり、さわぎたてて六本木・ヒルズ族を印象付け、IT業界は苦もなく数千、数百億円を積み上げて見せる「きらびやか」さで若者の羨望を集めるものに・・・。
小泉ブームの中での選挙戦は、まだまだ未熟とみられた若い政治家を世に送り出し、サッカーや野球など、才能に恵まれたスポーツマンは欧米を活躍の場に広げ、数十億円のトレードマネーがスポーツ誌に華やいだ話題を提供していた。華やいで見えるお笑いタレント、そのまんま東氏の宮崎県知事の当選もある。営々と積み上げる地道な努力、日々の苦労は一体なんだったのだろうとさえ思わせるもの・・・。
?なにかに追われ、焦燥感に突き動かされるように・・・。
「上流社会と下流社会」、「勝ち組と負け組み」、時代はたしかにその貧富の差を広げ、複雑で多様な価値社会をつくりあげている。

これまでの中流意識は一変し、急速に貧しさをさえ感じさせるものになっているのだ。

学校教育では全てが平等であり、公平を教えられた世代には不平不満の口実を与えるものになっている。

高学歴ながら幼稚化する親の無責任、家庭生活、家庭教育の放棄が学力の低下を生み出したと言われる。複雑化した教育現場、時間だけの問題ではなく、学び、学ばせる意味が分からないのだとも言う。詰め込み教育の反動、ゆとり教育は「生きる力」を育てようとしたのだが失敗だったと言う反省の弁!迷走する学校や社会教育・・・。
「教育の劣化をもたらした背景は過去半世紀にわたり教育の現場を覆ってきた反体制的な気風がある。例えば、教員組合は東西冷戦の中で体勢として社会主義陣営に傾斜し、自由主義的体制や権威の全てを否定してきた。
国家と歴史、民族と文化をおとしめ、国旗、国歌を拒否し、挙句の果ては先祖、両親への敬慕、師弟間の礼節まで含めたあらゆる伝統的価値に背を向け続けた。教師自らが校内の規律と秩序を乱し政治ストライキに参加して生徒の目をはばかることがなかったのである。その姿を見続けた生徒たちが規範意識の喪失に陥るのは自然の趨勢だった。自己中心的な親たちも、自制心の乏しい若者もそのような土壌の産物である」(読売新聞・地球を読む)というJR東海会長 葛西敬之氏の主張には肯かざる終えない説得力があった。

見えない未来に対する不安、占いに身を任せ、自分の非力を漠然と感じながら、どうにもならない苛立ちを内向させる。
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「ロストジェネレーシヨン」、「自分探しの世代・・・」

バブル経済崩壊後の就職氷河期に社会に出た25〜35歳を指すらしい。
終身雇用や年功序列といったレールが見えなくなった時代に、将来に不安を抱えながらも、格差の広がる現状に合わせるように働く若者の意識を朝日新聞・「定期国民意識調査」が捉えた記事、その見出しに見たものだった。
しかし、今、社会や人々の深層にはA・マズローの言う「自己実現」は「自分探し」と解釈され、「自分の夢を実現する」ことと考えられてもいるのではないだろうか?自己実現社会?利己実現社会とも混同されかねないし、自己満足をうながす社会と解釈されることにもなる。
マズローの欲求の5段階説、生理的欲求?安全の欲求?社会的欲求?自我欲求?自己実現は人間の持つ欲求を明快に見せてくれるものとしてさまざまな場面で引用されている。

私自身も、折々に引用した授業をしており、その解釈を誤解し学生諸君の不安を煽りたてるのではないかと懸念もしている。?

「思い念ずれば叶う!」という。が、それとて本当に叶ったという人は極めて少ない。
「自分のやりたいことをしたら・・・」、そう言われての「自分探し」、しかしながら自分の能力や適性が、そうそう簡単に分かろう筈もない。
本来は、「社会や人間関係の中で失敗や挫折を繰り返しながら自我を見出していくもの」であり、経験も無くその可能性を性急に見つけられる筈はないのだ。

完全で短絡に求め得る理想的な「自分探し」はない。
目の前にある一つひとつを確りと意識し、体験を積み上げていくことが何より大切なことなのである。
            ? (Jan.28/2007 記 )
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<参考資料>
人の5段階欲求説 
A.H.マズロー A.H.Maslow
(米 1908〜1970)

人間の要求の段階構造、自己実現、絶頂経験など・・・。人間が成長するする過程はその欲求の1つ1つを満たしながらで、大まかに5段階があるというもの・・・。人間性心理学のパイオニアといわれている。

●生理的欲求
生存への欲求であり、空腹を満たすために何かを食べたい、眠いので眠りたいなど人間として生きるための最も低次の生理的欲求
●安全の欲求
が比較的満たされて来ると安全、安定、依存、保護、不安・混乱・恐怖からの開放と自由の確保など
●社会など、集団への帰属欲求
人と人との信頼関係に結ばれている、愛情に溢れている、そんな人間関係を求める状態で、安心して自分の集団に所属したいとする欲求
●承認への欲求
・自尊欲求?自由、能力発揮、有能さ、自立
・他から認められること?名声、注目、地位、評価、理解
●自己実現の欲求
自己決定、独自性、個性、達成、歓喜、、好奇心が得られる状態で、人間が持つ限りない可能性を追求する欲求。
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●自己超越の欲求
(の次に考えられる欲求)
自分自身を超えたいという欲求・・・・