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清水教授のデザインコラム/連載 -167(05/05/2017)

「観察とデッサンによる脳内メモリーの充実を・・・・」

  まさにいまはネットの時代・・・。コンピューターを駆使しマニュアルによってアプローチすればよいと考える人も多くなっている。確かに、デザインアプローチにツールとしてパソコンを使うことの効果、効率は大きい。最近では、美大・デザイナー志望者ですらも、美意識を持たずデッサンを苦手にしている者も多いようにみえる。あきらかに、パソコンに依存する心が強く働いており、自ら問題を類推し解決するための知識がアタマになく、対処する方法を知らないということだろう。 しかし、いうまでもないがコンピューターが主体的に「何か」を考え、解決してくれるということはない。
あくまでも、主体者である人間が考え、自らのイメージやアイデアを持って操作せねばならないはずだ。
デザイン力、デザイナー資質として考える、「観察する」ためのデッサン力は、デザインとしてカッコいい「モノ」の表現力ということが強調され、そう思い込んでいる者もいるからだろうが・・・。描く訓練や感性的、個性的な芸術としての側面と併せて、よく<見る>こと、そして<触れる>ことを通して正確に対象を描き写すという中で本質を知り触れることの意味は大きいということだ。「観察力」とはものの見方であり、対象となるモノを注意深くみるために全神経を対象に向け、物事の本質に触れ核心に迫る思考力をもつということ。自分が見て、触れるという感覚、観察し写生した幼児期からの記憶につながるものだ。資質に通じるものであり、デッサン力はそんな感覚、美的感性をも育む訓練であり、「デザイン思考」力をつくるものだともいえる。
たとえば、対象がおかれる空間であり、自然や人工光源の位置、色の変化、形の細部の陰影による変化、材質感、また、それら材料の構造的な形状特性、意味など・・・。ただ、漫然と眺めるだけでは気付かなかったことにも気付き、見えるものになってアタマに記憶されることになるもの。
このような対象物との関わりあいはデザインプロセスの最初の段階におかれる問題の「発見」、「探究」、「認識」などといったこととも深く関わりあってもいる。そこでは、デザインをすべき「問題」がどこにあるかを人間や社会、道具や環境を見てもデザインの問題を発見するには不十分であり、デザイナーに要求されるいくつかの観点や視点から考察することが必要なのだろう。デッサンは、これらの観点・視点の一つであり、対象物との関わりあい方、見方、態度は、その他の観点や視点のそれと共通するものだろう。
  この観察力、そして、確かなデッサン力(スケッチ力)がなかったならば、記憶を形づくるための情報はあいまいで、また、ずさんなものということになる。そうだとしたら、デザインのユニークでオリジナリテイに富んだ発想もまたままならないことになる。その意味で、デザイン思考・脳力の基礎として好奇心をもって観察し、メモやスケッチとしての記憶、手の動きを大脳に刻む一連の行為、その繰り返しが生来のプロダクト系の思考資質を豊かなものにし、デザイナーとしての脳力を一層充実したものにすることになる。
                            (2017/5・5記)
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メモ:
・スマホやパソコンが万能と思われる時代、ユビキタスの一つのカタチと言えるものだろうか。 ただ、一方では、「手書き」にこだわる人も結構多いのだとか・・・。単に「情報整理」「タスク管理」をするだけにとどまらない手書き、そのことに価値があるらしいのだ。
ふっと思い付いたアィデアなど、もれなく書き留めておくし自分の夢についても・・・。中長期の目標をメモ書きし、後からじっくりと考え内容を詰めていくのだ。紙面に描き、書くことで自分の考えが「見える」ものになり、考えることも出来る。未来の自分への約束にもなる。
アタマに次々投げ込まれる雑然とした情報、一度取り出し紙面上に並べ眺めてみることが出来る。見直し、整理すれば集中力も、作業も効率的に進むことになるのだ。なにより、日常的にそれらを眺めながら、気づいたことを書き加え修正もする。また、新しいアィデアも浮かび上がってもくるものだ!1週間、あるいは1ヶ月と、適当な時期にそれらをさらに見直してみることで「理想の未来や、なりたい自分が見えてくる」のだとも言う。
・アイデアが出ると言うことは、アタマに蓄えられた「言葉」や「イメージ」の記憶メモリーがあるということ。もし、メモリーに何もなければ、当然、アイデアもないということになる!
ヒトは、生まれてからの成長過程で五感を通して外界の多くの刺激の記憶がインプットされ蓄積されている。特に眼でとらえ、手で触れることの生体感覚、あるいは環境やモノの構造をとらえることに強い好奇心を持ち、自らがスケッチをする。デザインを選ぶと言う動機となるのに極めて有効な体験であり、資質になったと言うことなのだろう。五感で体験した具体的で特別な感覚などのイメージを多く蓄え、映像や言葉であれ身体としての手とはダイレクトに繋がって、全身に共振する生命感となるもの。緊張感と自己のイメージするカタチを表現することの緊張感を持てることが重要で、意識する感情ともリンクする発想でもある。
アタマと手が、強く、弱く、大きく、小さく、速く、遅く、優しく、激しく・・・全く奔放、自在な身体的感覚ですらある。デジタル機器なども人の動作習慣に近い存在として進化したと言えるが定型的で、計算されたパターンに依存するものに過ぎない。奔放に自在に表現できる身体全体で発想する本能的快感ともいえる感覚、そこから発せられるものが本能的で納得出来る解決を生み出すものだろう。デザイナーの多くが初めには手描きのアイデアスケッチ・・・次に、パソコンに変えるのだと言う。
・将棋の最年少プロ棋士 藤井聡太四段(14歳2ヶ月)!
デビュウ初戦は加藤一二三九段(77歳)。5歳で将棋を覚え、9年間将棋に親しんだ?対戦相手の加藤9段はプロ中のプロ・・・。「勝つはずがない!」と、考えるのが常識・・・。ネット番組の対戦で天才と呼ばれていたあの羽生善治三冠をも破る。限られた数の駒、戦法なども知れたこと・・・と、凡人は考えるのだが・・・。1対戦は6〜7時間の集中力を自ずくする体力は要し・・・。その16連戦連勝中なのだとか・・・。現代っ子・天才のアタマのメモリーの仕組みに興味がある。どうなっている・・・?