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清水教授のデザインコラム/連載 - 133(02/03/2014)

こんなドラマチックなことが・・・・ある

 つい、先頃にはiPS細胞の発見者山中伸弥教授がノーベル賞生理学・医学賞を受賞し、引き続きまたまた万能細胞が発見されたというのだから・・・。日本の再生医療にとっては快挙であり、誇らしいことだ!
しかし、この成果は余りにも常識破りだった。世界的な評価をもつ科学誌『ネイチャー』への投稿にも、「信じられない!刺激だけで多能性を獲得するのは動物ではあり得ない。過去、数百年の生物細胞学の歴史を無視することはできないだろう!」と掲載を断わられている。

ただ、当時の実験データだけでは証明することはできず、米国でも共同研究を持ちかけても、実績のない若手は相手にされず四面楚歌の状態だったのだと・・・。「間違っている!と言われ、くやしくて、泣き明かした夜は数知れない」とも言う。「もう、やめてやると言い、何度もやめようと思った」と。「今日一日は頑張って、明日一日だけは頑張ってみようと・・・。いつの間にか5年が経ってしまいました」とその心境を語っていた。
「誰も信じてくれなかったことが、何よりも大変だった」と小保方晴子さん(30)理化学研究所 研究ユニットリーダー・・・。
なにしろ、「細胞生物学の数百年の歴史の常識」を前に、落ち込む彼女をサポートしたのは幹細胞研究の第一人者である笹井芳樹・理化学研究所発生・再生科学総合研究副センター長や同センターで世界初のクローンマウスを作った若山照彦・現山梨大教授らのベテラン達だ。
「実験は酸性溶液に浸すことで多能性細胞を作るが、その条件を発見するまでは、いろいろな刺激方法を模索している。毒素を使ったり、細胞に栄養を与えず飢餓状態にしたり・・・。しかし、極細のガラス管にマウスの細胞を通すと、予想より多い幹細胞ができることが分かり、さらに研究を続けていた。 
その細胞が多能性を持っているかどうかマウスを使って判定する実験は2010年7月頃から、『判定は、緑色に光るマウスが生まれてくれば多能性がある、光らなければない』というもの・・・。
勿論、はじめは全く光らない・・・。同様の共同研究を持ちかけてくる人は多いが、一度失敗を伝えると大抵の研究者は引き下がる。でも、小保方さんは違った。『だめだった!』と伝えると、更に膨大な量の実験をして失敗の原因と次の作戦を考え、『次は絶対いけるのでお願いします』と別の方法で作った細胞をすぐに持ってきたのだ。普通とは違う熱意を感じた。しかし、『情熱はあっても、常識としてあり得ない!』ということを実証して見せることも必要だろうと思っていた。彼女はまだ若いし、若い頃の失敗は後々のためには良いことだと思ってもいたからだ。
しかし、「緑色に光るマウスの1匹目は生まれた。2011年末のことだ。
『小保方さんは世紀の大発見だ!』とすごく喜んでいた。が、それでも信じられず、『どこかで自分が実験ミスしたせいではないか!喜ばせてしまったのかも・・・』と心配だった」と若山教授は引き受けた動機とその経緯を述べている。

なにしろ、権威ある学者が否定し、「あり得ないよね!」と、多くの専門家も考えていたことなのだから・・・。
「動物が刺激を受けるだけで多能性を獲得することなどは絶対にあり得ない」とも断定している常識レベルのことに、それでも若い研究者が目を向け、自らの直感を信じる事が出来たのだろうか?そのことが私には驚きであり、興味深いことだった。
専門家からいえば、「あまりにも無知、非常識な考えだ!とも云われていたのだろう」とも想像するが・・・・その常識を覆してしまった。
そのことはデザインアプローチにおける「常識には囚われない発想を」と心掛けるクリエーターと重なる。
ただ問題は、「常識」が何であるかも知らず、十分な経験的な思考過程を踏むこともないままに常識に囚われない発想などはできない。1寸思いついたことで、「出来た!」と思い込んでしまうこととは本質的に違うもの、成果につながることもない。
前回のコラムにある「クリエーティブな自信」は、自ら積み上げた経験から得られるものだからだ!                        (2014年2月28日 記)
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メモ:
・論文はデータを解析し直すと再投稿、30日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載された。その発表を機に世界の専門家からの様々な肯定否定をない交ぜた誹謗中傷もあるだろう。越えねばならない厳しい壁ともなるものだ。
今後、再生医療への応用を視野に人間の細胞による同様の研究を進めねばならない。「プレッシャーを感じるが10年後、100年後の人類社会への貢献を意識して、一歩一歩進みたい」と小保方晴子さんは、その決意を語っている。その一方では、「世界的な『時の人』となって賞賛を浴びる小保方さんを巡って国内外の大学、企業などがポストや研究施設を競い獲得競争を引きおこす」という話も。  
・実験で着るのは白衣ではなく、割烹着(かっぽうぎ)だ。「おばあちゃんに応援されているような気がするから」と。その実験室の壁はピンクや黄色に塗られムーミンのシールが張られている。机にはペットの亀やキャラクターが並び自分たちなりの快適さを研究空間に演出しているようだ。
・報道情報などから読み取れる小保方晴子さんのクリエーター資質(私がイメージする理想的なデザイナ像とも重なる)――目的意識、行動力、実行力、想像力、知力、コミュニケーション力、強い信念、探究心、あきらめない心、美意識、情熱、リーダーシップ、チームワーク、人間的魅力、他人を思いやる心、協調性、強運、運動能力・・・・。