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清水教授のデザインコラム/連載 - 118(11/03/2012)

ジヤパンブランド――日の丸家電の復活

日本メーカーが苦悶している・・・。
特に、パナソニックやシャープ、ソニーなどという我が国を代表する日の丸家電メーカーの苦戦がことさら我が国の存在感を薄れさせており、そのデザインもまた否定されてもいるようにみえる。もちろん、日本のメーカーだけに限ったわけではないが、世界の市場でも新たな製品の開発に取り組む企業にとっての悩みは同じものだろう。

市場のニーズを探り、社運をかけて新たな製品を世に送り出すこと・・・。
その社運をかけた時間と研究のための開発費はいかにも膨大なものでもある。
しかし、問題は製品が後発メーカーによって簡単に入手され、詳細に分解・分析されると、いとも簡単に模倣されてしまうということだろう。技術的に分からないところがあれば一定時間だけ技術者を雇うことで解決をはかる。また、生産のためには優れた部品を集め、工作機械を設置すれば最低限でも同じ品質の製品を造ることができるスグレモノなのだ!
それほどにマザーマシーンもまた刻、一刻と進化しているからだ。
後発メーカーにとっては開発費も時間もかけず、ユーザーニーズから得たアイデアを加えることで差別化に注力すると低価格販売競争を仕かけることに・・・。
ユーザーにとっては、差別化のための未熟で荒削りなデザインもまた、目新しいものとも見えるし、成熟した?製品と比べても斬新なものとすらみえるのではないだろうか。
まだまだ、機能そのものがニーズとしてデザインされれば、それがその効果として素晴らしくも見える市場なのだ。
さらに、2番手、3番手の企業が参入してくるようになると、供給量は無秩序に拡大し価格は一挙に下落してしまう。
開発という大きなリスクを負った企業、苦心の投資はたちまちなりゆかないものになって生気を失うことになる。

ターゲットが先進国から途上国の人々へ移ると、まさに低価格競争になる!
世界の、特に先進国の経済が低迷するなかで異常な円高が進み輸出競争力を失わせている。
それでも、円高は一方ではメリットとしても極めて大きいことだ。日本はGDP比15%が輸出、85%が内需依存だし、石油や様々な資源・資材類を安く購入し、戦略としての海外企業を有利に買収することもできるはず・・・。

デザインは再び・・・・
我が国にとっては、いま世界のライバルを視野に切磋琢磨することが重要であり生命線ともなっている。様々な分野、大小を問わず意識ある多くの企業が参戦し競い合う体制をとりつつある。挑戦し戦う姿勢、強く生きる姿勢こそがいまは大切だろう。
デザイナーにとっても先進国という優越感、そして先入観にとらわれないことだ。ターゲットとなる国々の人々の要求を必要条件とした発想のモノづくりが何よりも大切なことでもある。また、それぞれの国・地域にある「美意識」「装飾美」についても深く理解する能力が問われることにもなるのだろう。
近代デザインのルーツとなった美意識、造形の美学が全てではないからだ。
しかし、本質的な部分においては意外にも普遍性をもったものでもあるように思われる。が、さらに言えば、生活・使用者のニーズとして発想される日本人の「心遣い」、「思い遣る感性」がものずくりに活かされるのではないか、ということだ。
挑戦し戦う姿勢、「変える」、「新しくする」という問題意識!常識を突き抜けた独創はデザイナー自らの生体から発するものでありヒラメクものなのだ。
モノづくりにある思考の生産力は常にフレキシブルに維持することに心せねばならないだろう。手探るなかでデザイナーは常に先入観にとらわれず新鮮な眼差しをユーザーとなる世界の人々に向け、学ぶべき方向に自らが向うことが必要だろう。
                      (2012/10・31 記)   
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メモ
しがらみに囚われない自由なモノづくりの環境を求めて集まったメンバーたち・・・。日頃から温めているのだというアイデアをスケッチに、検討を繰り返すと試作に取りかかる。家電や車の世界に独り、あるいは数人のメンバーによるベンチャー企業が厳しさの中でも挑戦を続けている。創業期のパナソニックやシャープ、ソ二ー、そして、日産やホンダだろうか・・・。それらの大企業も、ふたたび栄光を目指して挑戦している。次代へ・・・。アイデアとデザイン、そして行動力が勝負だ!