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清水教授のデザインコラム/連載 - 101(01/30/2011)

「自分が、自分らしく生きたい・・・」

とにかく、自分らしく生きたい!
いまは個人を大切にし、一人ひとりの「個性」を生かそうという考え方があるようです。特にデザイナーを夢見るものには、そう考え、そう主張する若者も多くなりました。しかし、そのためには、なによりも「自分を知り、自分自身の個性を知る」ことが必要なのでは。自分が、自分らしく生きることができたら、それは素晴らしいことです。しかし、「あなたは、自分がわかり、自分の個性がわかりますか?」そう問われても、たぶん、即答出来る人は少ないでしょう。
それが分かれば、その個性を生かすための方法を選びながら学び、自分自身を高める努
力をすることができるのです。

自分がなりたいものは、なに?
自分が自分らしさを自覚する、そのためであった筈の「ゆとり教育」は、単なる塾がよいとゲーム遊びに熱中する目的喪失の時間を与えたのではとも思われる結末でした。いまの社会や家庭環境は、携帯、TVゲーム等・・・子供の好奇心を捉えて離さないもの
が氾濫しており、自らを考えるという学習は難しい時代でもあるのです。
「自分がどう生きる?」、そう考えたことがあるのだろうか?と思うことも多くなりました。「自分はどう生きる?」という問いは「あなたが欲しているものは、なに・・・!」ということでもあり、成長の過程でしっかり自覚してほしいことなのです。早いうちに、自分と向き合うことができれば、自分が、最も自分らしい生き方だとして、自分を納得させられるものに出会うことになり、また、再考する時間も持てるということです。
成長するなかでの人生観や職業観、あるいは、世界観や歴史観にと人格を形成してゆくことになる、そのことが重要なのです。
「デザイナーになる!」と、目的意識が明確であれば、ひとは学ぶことがよろこびにな
り、集中することができる。その効果は極めて大きいものなのです。「野球やサッカー
の選手」、「幼稚園の先生」、「パン屋さん」、「新幹線の運転手・・・」。幼児
期に触れた感動! 「なりた〜い!」そう答えた幼いころの夢・・・。「デザイナー
に」という夢を描くのは、ずーっと後になってからのことでしょうが・・・。自分の個性や自我の意識が目覚めて行くとき、人は決して一律ではないが、ここから私た
ち一人一人の個性を芽生えさせてゆくことになるのでしょう。
そして、幼時からのさまざまな経験、両親や兄弟、先生などの影響も、自然に生じる快
感や不快感などにも気付くことになります。その反応もそれぞれに特徴があり、その差
異が個性を形づくることになるのでしょう。

自分自身を納得させること!
しかし当然ながら納得したはずの「自分も」、ふれるあらゆる体験のなかで、現実の壁に自分の才能を疑い、適性を疑うことにもなります。
成長の徴(しるし)でもあるのでしょう。ときには初心にかえり、本来の自分の適性を再考することです。自分が確かだと考える情報や考え方を持ち、今まで触れてきたもののすべてを書き出し、網羅したマップを眺め「自分が思う本音や、本能的欲求を独りながめてみるのもよいのでは、と思います。
もちろん、本来の自分を実現するために必要な情報を取捨選択する、その判断ができ
る「自己」が問題ともなるのですが・・・。
「独りよがり」であったり、自分に都合のよい考えかただけをとる安易さでは、客観
的で正しい自分と向き合うことにはならないからです。信頼できる先生や友人に相
談し、忌憚のない意見を聞くことも確信に繋がることになるのでしょう。
「デザイナーとしての才能は、ある?」
あるいは、いまの自分を否定する厳しい結果を見ることになるのか・・・。

他へ目標を変えると言うことも、ある?
しかし、何れであれ自分らしい自分に一歩近づき、徐々に自分が見えてきたということになる。ただ、全くそのことに自ら考えることもなく、意識したこともないままに年齢を重ね、いまを過ごすことは不幸なことです。大学へ進んだということ。或いは、分からないから取敢えず、大学へというものも結構いるようです。
自分の個性を知るための努力や意識的に自分を深く見つめる時間が、節目には必要なのです。他人との比較で何が自分の特徴的なのかを考えることです。
「快感」「快楽」にとらわれて、学ぶべきあらゆる知識・情報などを苦痛と感じて避けてしまい、目標もなく、自分を客観的に見つめる時間さえ持たないままに、狭い体験と惰性の日々にならないことです。ゆるい生き方のなかで群れてばかりでは何ら解決しないからです。自分と向き合うための独りの充分な時間が必要なのです。
ゆっくり、そして、深く考えるための時間をもつことが重要なのです。
客観的に自分を見つめ直すというのは、主体性を持つて就活、社会活動に参加するためでもあるのです。が、なにより、その目標を達成する努力が必要なのです。
もちろん、楽に近づくことは出来ないし、頑張ったが達成されなかったということも多いのが現実の社会なのですが・・・。
とにかく、そんな挫折を幾つも繰り返しながらプロになるものなのです。それが挑戦する生き方、デザイナーとしても大きな才能と言えるものだと思います。

デザイナーの資質って、なに?
デザイナーは特殊な人、変人が多いのではとも言われているようです。
生まれながらの資質を磨きこんでさまざまなデザイナーが活躍しています。
「デザイナーって、どんな才能が必要なの・・・?」そう聞かれることも多いのです
が・・・。「絵心があり、モノをつくることが好きな人であれば・・・。」
さらに、「物事に熱中し、忍耐力があり、作業の手際が良く・・・」
しかし、いまはデザインにたいする要求が高度で複雑なものとなり、その資質もまた多
様であるのです。各自の資質の幾つかを自らの「デザイン力」として、多くの人がデザイン活動をしています。
インハウスデザイナーはやや理性的で無機的ともみえ、フリーランスデザイナーは感性
的で、個性・独自性が強いデザインというふうに・・・。いえいえこんな風に割り切れるものでもないようです。
デザイナーとしての資質---意識した学習、経験を積み上げることで、ある程度は体得できるものでもあるようです。さまざまなデザイナーを思い浮かべながら、思いつくままに書き出してみます。

1.感性が豊かである
2.独創性が豊かである
3.技術や芸術などの知的好奇心がある
4.様々なモノについての好奇心、観察力がある
5.モノを考え、つくることが好きである
6.直観力がある
7.発想の柔軟性がある
8.美についての感覚や判断力がある
9.デジタルツールに対する理解と応用力がある
10.判断力(認識・評価・決断)がある
11.先生や、先輩の意見を聞くことができる
12.気付いたことをメモやスケッチにする習慣がある
13.人間的な魅力がある
14 その他

「資質、素質、才能、個性・・・? あります!」と自信を見せるもの。あるいは、「自
分には才能なんかないよ!だから・・・無駄なのでは」と自信なげに言う者・・・。
しかし、いずれも、「自分の能カ」を知るための努力をしていない、そう思えるもの
が多いのも時代なのでしょう・・・。
とにかく一生懸命であること・・・・
自分の資質が何かをしることは時間が掛かるということもあり難しいことではあるので
す。しかし、そのことを分かったうえで、「デザイナーになりたい!」という強い意志力をもつこと、好きになることが1番の資質と言えることかもしれません。
勿論、いまの理解力で、「いまの能力」を知り、それを伸ばすのは本人の意識、努力次
第なのです。
自分にできること、自分のやれることを喜びをもってやること・・・。
その能力を活かすために、「いまを努力すること」こそが、また大切なのです。
私たちに必要なことは気持ちよく、充実感、満足感を持って仕事ができるということ、そのことが重要なのです。
でき得る限りの主体性をもって、自らの能力と個性を活かしているのだと思える人は、それが仮に失敗してもそれなりの納得のゆく人生となるはずなのです。

幸せか不幸せかは自分が決めることでもあるのですから・・・。
                             (2011・1・29 記)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・メモ:
《広辞苑より》
○資質とは:
 生まれつきの性質や才能。資性。天性。《明鏡》生まれつき持っている性質や才能。
○素質とは:
 個人が生まれつき持っていて、性格や能力などのもとになる心的傾向。特殊な能力等
○才能とは:
 才知と能力。ある個人の一定の素質、または訓練によって得られた能力《明鏡》
 ある物事を上手く成し遂げる、優れた能力
○個性とは:
 個人に具わり、他の人とはちがう、その個人にしかない 性格・性質。
 個物又は固体に特有な特徴あるいは性格。
 個性的《明鏡》個人または個物を田から区別する固有の性質。パーソナリテイ
・・・・・・・・・・・・・・      
●自分の個性は?自分を知っていますか・・
 人間的魅力、性格、特徴・人格・独創性、独自性、固有性
 個性・人間的魅力・性格=personality
 個性・特徴・奇人=character
 個性・人格・個人=individuality
 独創的な・独自の=original
 独自性・固有性=identity

●キヤラ=個性?単に「人とは違う」ということが個性ではない。
 基本や基準があるなかでの自己発見であり、自己主張が個性・・・。
●タレント=才能
●人生で一番<個性>が問われるのは就職活動・・・
 エントリーシート(自分を表現してください)は自己PR? 
 自分の長所より、弱点を個性にする方が個性かも・・・?
●デザインは規制や条件があるから欲望が生じ、個性がうまれる。
 古典落語も、その「縛り」があるからこそ個性を出していける。
 落語家の個性の母は「規制」なのだと・・・。
●目を閉じるということ
 目を閉じてみる。そうすると、からだの中の闇の広がりは光に満ちた外界ではない、自分一個の内世界なんだ。皮膚一枚で閉じられた自分だけの闇の世界のなかにしばらく身をおいていくと、この闇の世界が無限に拡張され、広がりはじめるという感覚を持つ。(…)人間ができる最も簡単ですばらしいこと。それは、目をつぶり、自らの内
部の闇に意識をひそめるということではないか。(杉浦康平・グラフィックデザイナー)
●「あなたがやりたいことは何ですか」。
 就職希望の学生が企業から質問される。自分とは何者か。将来どうなりたいのか。雲をつかむような自問自答で志を固め、内定を手にする。就活は学生を短期間に成長させるといわれる理由だ。ここに既に落とし穴があると就職問題に詳しい豊田義博氏は近著『就活エリートの迷走』に書く。学生は将来像が認められたと思う。しかし配属は希望外の部署。面接という特殊な場のために練った自己PR術や空気を読む技も、日常の仕事では勝手が違う。こうして有望そうに見えた若者が職場を去るそうだ。
いかに早く多く内定を取るか。有名校の学生を囲い込むか。そんなゲームのような就活はもうやめよう、と豊田氏。たとえば長い休みに見習いとして働かせ、その様子を見て選考してはどうかという。
見学ではなく本気で仕事をさせる。地味な努力家のよさも自然に伝わる。お互いに素
顔を知れば後で失望をせずに済む。既卒、新卒を区別せず選考する動きが広がり始め
た。しかし単なる就活のためのテクニックを磨く期間の延長ではもったいない。見
習い、起業、ボランティア、留学で社会や世界を知り,にわかづくりではない言葉で自
分を語る。そんな既卒者を企業が前向きに受け止めるなら、学生への刺激にもなるのではないか。(日本経済新聞 春秋‘11/1・17)