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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 156(01/12/2016)

「アートイベントでの事故」

 11月最初の日曜夕方、アメリカ大統領選挙が間近にせまりテレビの大統領選特番を見ていたとき、画面上にニューステロップが表示されました。「神宮外苑のイベント会場で火災、子ども一人が心肺停止、大人二人がケガ」という内容のもの。よくわからない、なんのことなのか。はじめテロか放火かと思いました。
東京デザインウィーク2016というイベント会場での火災事故です。5歳の男の子が亡くなりました。

6日午後5時15分ごろ、東京都新宿区霞ヶ丘町の明治神宮外苑で開かれていたイベント「東京デザインウィーク」の会場から「木製の工作物が燃えている」と119番通報があった。展示物の木製のジャングルジムが燃え、東京都港区港南4丁目の幼稚園児、佐伯健仁(けんと)君(5)が死亡。父親(44)も救助の際に顔にやけどをして入院し、救助にあたった40代の男性もやけどを負った。火災は約30分後に鎮火したが、多くの来場者でにぎわう会場は一時騒然となった。警視庁四谷署などによると、健仁君は高さ約2メートルのジャングルジムの中で遊んでいたとみられる。父親や来場者らに運び出されたが、すでに心肺停止の状態だった。焼死とみられる。ジャングルジムの骨組みには 、アートとして、かんなくずのようなものが絡みつくように飾られており、中から電球で照らしていた。署は電球が発する熱などが原因で、このかんなくずのようなものから出火した可能性があるとみて、業務上過失致死傷容疑も視野に調べる方針。 会場は軟式野球のグラウンド。企業や大学などが制作した現代アートが複数並べられ、子どもたちが遊べるように開放されていた。燃えたジャングルジムは、日本工業大学の工学部建築学科などの学生が制作した。イベントの主催は東京デザインウィーク株式会社。経済産業省が後援し、昨年は10万人以上が訪れた。(朝日新聞デジタル2016年11月6日)
出展したグループについて、大学は当初、「新建築デザイン研究会」と説明していたが、7日の会見で建築学科と生活環境デザイン学科の学生の有志による40人弱のグループだったと修正。制作段階では複数の教員が指導にあたったが、火災当日は立ち会っていなかったという。出展は両学科の名前で届け出ており、大学として出展を許可し、補助金を出していたという。成田学長は「大学の責任のもとに出展をしたのは間違いがなく、責任はすべて大学にあると考えている。今後の事実確認を踏まえながら、大学として対応していく」と述べた。(朝日新聞デジタル2016年11月7日)

あまりに痛ましく、信じられない事故です。子どもは何も危険なことをしていないのに。遊んでいい場所で遊んでいただけなのに。2500円の入場料を支払うイベント会場で、最低限の安全は守られていると思ってしまっても仕方がない。こんなことが起きるなんて考えられない。親の不注意なんて責められない。ましてや親はその場にいたのだから。親の目の前での出来事なのだから。家庭で、公園で、街中で、多くの親は子どもの安全に最大限の注意をはらっています。

このアート作品のような一時的な展示物は、建築基準法や消防法の対象外になります。しかし、作り手も大学も主催者も、子どもが触れるもの、遊ぶものに対する危機意識がなさすぎると感じます。そもそもこの作品に複数の子どもが登れる耐久性があったのか?手触りは?ささくれだったところはないのか?木くずが口に入る危険性は?対象年齢を設けていたのか?そして、燃えやすいモノのそばで電気を使うことに対する危機意識はあったのか?
事故後、主催者側が600点もの作品があるので全てを把握しきれないとのコメントを出し、ダブルのショックを受けました。600点の中で、人が、それも子どもが実際に触れたり登ったり中に入ったりするものが何点あるのかと。チェックしなければならない優先順位というものがあるのではないか。そもそも600点も見きれないなら、数を減らさなくては、見きれる範囲内のイベントにしなければ。600点もあるからという発言をしてしまう感性に疑問を感じます。幼い子どもが亡くなっているというのに。

この事故とは関係なく日常生活で、子どもがドライヤーなどのコンセントを抜き差ししようとするだけで、親としては心がざわつきます。電気は便利で生活に欠かせないものだけど怖いものです。だから電気を使うのをやめましょう、なんていいません。正しく使う。正しく怖がる。暖房器具やイルミネーションの季節、電気を多く使う時期、よりいっそうの注意が必要です。

このアートイベントの事故、ネット上に事故当時の動画もあるようですがとても見られません。想像するだけで辛すぎます。このコラムを書くために、様々な記事をさかのぼったり、その時の画像を目にしたりしました。いたたまれません。
日芸デザインでも子どもを対象とした課題がでることもあるでしょう。卒業後、子どものためのデザインに関わる人もいるでしょう。これからデザインに向き合う若い才能が、命を守るデザインをいつも心にとめてくれますように。楽しいことだけ書いていたいけれど、あえてこの辛い出来事をマッシー通信に残します。健仁くんのご冥福を心よりお祈りいたします。

2016年11月30日 増子瑞穂
https://twitter.com/massykachan

東京デザインウィークについて(シブヤ経済新聞)
http://www.shibukei.com/headline/11832/