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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 129(01/09/2014)

「子ども70人の遠足」

 夏休みもようやく終わりです。お父さん、お母さん、お疲れさまでした。本当に。
小学2年生の息子は、お盆休みを除き夏休み中も学童保育に通っていました。
念のため、学童保育について少し説明します。学童保育とは、小学校に通う子ども達が放課後過ごす場所です。
小学生の子どもを持つ 親が、仕事などで放課後保育できない場合、決められた時間まで預かってくれます。場所は小学校の中だったり外だったり。預かる学年も3年生までだったり、4年生までだったり、6年生までだったり。管轄も様々ですが、あらかじめ申請が必要です。指導員さんと呼ばれる人が子ども達を見てくれています。
私の住む自治体では、申請が通れば基本的に子どもを預かってもらえますが、自治体によっては定員になると待機となります。つまり空き待ち、待機です。保育園の待機児童問題はニュースなどでよく耳にすると思いますが、この待機学童で困っている家庭が多いのも現状です。

 小学2年生の息子が通う学童保育の定員はおよそ40人。そこに70人ほどが入室しています。通常は4年生までです が、夏休み中は6年生まで受け入れています。夏休みだけ学童に通う家庭も多く、この夏休みはさらに児童数が増え、90人を超えました。普段、子どもが小学校に行っている数時間で働いている家庭が、夏休み中の預け先に学童保育を利用しているのです。
40人定員のところに90人。定員の2倍を超えています。さらに今年は猛暑つづき、熱中症情報も光化学スモッグ注意報も発令され、外で遊べず仕方なく室内で過ごす子ども達。学童の部屋はぎゅうぎゅう詰めです。必然的に子ども同士のケンカやトラブルが増えます。

 そんな子ども達をのびのびと過ごさせてあげたい。夏休み中に二回、学童で遠足が行われ引率の手伝いをしてきました。(自分で休みを調整できるフリーランスならではです…) 。
一回目はプール遠足、二回目は科学館遠足。遠足に参加したのは70人近くです。70人を先発隊と後発隊の2組に分け行動します。
学童保育がある小学校から最寄りのバス停まで徒歩3分ほど。3分とはいえ、何十人もの子ども達が一緒に行動するのは至難の業。1年生と6年生では歩幅も違います。体力も違います。徐々に子ども同士の間隔があき、列がどんどん長くなります。信号が青のうちに横断歩道を渡りきれないこともしばしば。加えて、子どもは興味のあるものが目に入ると、前なんか見ていません。(特に男の子!)何度「前を見て!!!」と叫んだことでしょう。公共のバスも一度には乗り切れず、先発隊と後発隊に分かれ乗り込みます。他のお客さんの迷惑にならないよう静かに静かに 。電車の中でも静かに静かに。普段自分の子どもと公共の交通機関で出かける機会は多い方だと思いますが、(スタンプラリーだの新幹線だの)数十人の子どもの引率は、なかなかパンチのある経験です。

 さらに、これは自治体の問題ですが、バスを降りてから最寄りの駅までが遠い。小学校から最寄り駅近くのバス停までバスに乗っても、バスの終点は埼玉県。最寄りの駅は東京都。「○○駅終点」とは名ばかりで、バス停から駅まで、大人の足でも3、4分歩かなければなりません。自治体がまたがっているため、駅前までバスが伸びていないのです。
狭くて人も車も自転車も多い道を、一列で通行。学童行列すれすれを車が通り抜けていきます。信号のない小さな丁字路。いつもなら、ちょっと気をつければいいような場所も、数十人で横断するとなると細心の注意が必要です。一列で横断すると、時間がかかってしまい車や自転車がきてしまいます。なので、数十人で詰めて並び、車や自転車が途絶えたところを見計らって「せえの!」で一気に横断する、という手段。二人三脚のギネス記録に挑戦しているような風景でした。

目的地のプールや科学館では、子ども達ひたすら楽しそう。引率前はプールが一番危険なのではと思っていました。水の事故は命に直結しますから。でも、市営プールの監視員さんも子ども達を集めて、注意事項のレクチャーや準備体操をしてくれ、遊んでいる最中も子ども達をよく見てくれていました。学童保育の指導員さんもプールに一緒に入ってくれているし、1時間に1回は休憩を挟み全員プールから出ます。想像していたような危険な状況はなかったです。私はプールサイドから子ども達の様子を見守りました。

 さて、困ったのは、帰り。行きと同じルートを辿って学童まで戻ります。行きと大きく違うのは、子ども達の体力。子どもは帰るときのための体力を残す、なんてことしません。プールも科学館も全力で遊ぶ!力のかぎり遊ぶ!あげく、帰りの電車の中やバスでウトウトしだす子も。起こすのも一苦労です。注意力もさらに落ちてる。一列で歩く子ども同士の距離も広がり、列はダラーンと伸びる。横断歩道も渡りきれない。無事、学童に帰すだけで精一杯でした。

 それでも今回の遠足、あらかじめ計画してうまくいったことがあります。まず、荷物はリュックに全部詰める。プールの道具もお弁当も全部。電車などで手すりにつかまったり、転んだりしたときのために、両手が空いているのは大事です。
そして、学校指定の帽子「校帽」をかぶる。夏休み中、街には子どもがあふれています。電車やバス、科学館。校帽をかぶっているだけで遠くからでも一目で学童保育の子どもとわかります。プール遊びも学校指定の水泳帽をかぶらせました。学年ごとに色分けされているので、これまた一目で何年生かわかります。数人の引率者で数十人の子ども達を見守らなければならない。命を守らなければならない。ちょっとした工夫が安全につながります。

 現在、最寄りの駅周辺は再開発の工事が行われています。駅前にはロータリーができ、バスが駅前まで運行する予定です。今回の遠足で、バスが駅前まで運行することの必要性をしみじみと感じました。早く駅前ロータリーできないかな。
自治体では通常の学童保育を6年生まで引き上げようとしているようです。しかし、環境が整っていません。もし学童の児童数が今の倍になったとしたら、同じような遠足はきっとできないでしょう。多くの子どもに学童保育という選択肢を与えることは必要でしょうけれど、子ども達を学童に詰め込めるだけ詰め込んだだけ、では事故に繋がりかねません。
子ども達が安心して行動できる街作りは、子どもにもお年寄りにも、みんなに優しい。猛暑の中、子ども達の行列を見つめながら、気づかされました。

追記
写真は、後日撮影したものです。遠足当日は写真を撮影している余裕はありませんでした。
ここに同じ帽子をかぶった70人がゾロゾロと歩いている様子を想像してください。
「前を見て!」と叫んでいる私も…。

2014年8月31日
増子瑞穂
https://twitter.com/massykachan





image●最寄り駅近くのバスを降りたところ。駅はまだまだ先…。


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●狭い道を一列になって歩きました。

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●横断歩道のない丁字路。数十人で渡るとなると。

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●最寄り駅の狭い階段。