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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 90(06/01/2011)

「子連れで箱根〜強羅〜彫刻の森」

 5月の大型連休、箱根に行ってきました。震災以来、心がいつもつかえているような、モヤモヤしているような。すっきりと晴れない日々が続いていました。被災地で不自由な生活をしているわけでもないのに、私たちが元気出さないでどうするのだ。と、一度気持ちをリセットするため、急きょ旅行に行くことに。震災の風評被害や自粛ムードでどこも空いているのではと思いきや旅館やホ テルはほぼ満室。意外と混んでいます。出発予定の3日前、運良く箱根でお手頃価格のホテルが取れました。大型連休中だし箱根だし、あまり考えられないことなので、やはり例年に比べて空いているのかもしれません。

「子連れで電車」
箱根を訪れるのは結婚してから3度目です。1回目は息子がお腹にいるとき。2回目は娘がお腹にいるとき。今回初めて、お腹に誰もいない状態での箱根旅行です。体は楽だけれど、目の前には二人の子ども。それも一人は歩き始めたばかり。どちらかというとお腹の中にいた時の方が好都合というものです。
箱根は毎回電車で旅しています。マッシー家、車を所有していないというのも理由ですが、それでもレンタカーを借りずに電車でいくワケは、4歳の息子が大 の電車好きだということ。箱根といえば、箱根登山鉄道。急な斜面を折り返しながら登っていくスイッチバックで有名です。息子を乗せてあげないわけにはいきません。
息子は電車好きだし、4歳ともなればそれなりに聞き分けもでき、座っていられます。が、娘は1歳になったばかり。それも歩き始めてまもない頃。子連れでの旅行が最も大変と言われる時期が、この1歳から2歳にかけてです。大人しく座ってなどいられないし、聞き分けもまだできません。眠ってくれている時以外は、音の出ないおもちゃであやしたり、抱っこしたり、おんぶして外の流れる景色を見せたり。この頃ばかりは車の方が旅行しやすいのかなぁと思います。
私か夫、どちらかが常に娘の世話に追われます。箱根旅行といえば 車窓からの景色を楽しめる箱根ロマンスカーも有名ですが、指定席を取ったとしても、座っている余裕などないので席が無駄になってしまいます。乗車時間がそれほど変わらないのであれば、子どもが小さいうちは普通列車で行くことを個人的にお勧めします。
子連れで電車は何かと大変ですが、子どもにとって貴重な経験にもなります。あらかじめトイレに行っておく、車内では食べたり飲んだりしない、静かにする、お年寄りには席を譲る、など。プライベート空間であるマイカーと違って、電車は公共の場。子どもがマナーやルールを学ぶチャンスとも思います。まぁ、親は何かと大変ですけれども。新宿からの小田急線、そして箱根湯本から終点の強羅までの箱根登山鉄道と、息子は電車の旅をたっぷりと 楽しんだようでした。

「子連れで旅館、ホテル選び」
宿泊場所は強羅駅の近くにあるホテルです。窓からは強羅駅と行き交う登山電車が見え、息子にとってはサプライズなプレゼントとなりました。
国内の場合、子連れで旅行するなら和室を選ぶ人が多いと思います。子どもが伸び伸び出来るだろうし、親も旅の疲れを畳に座って癒したいし。なにより温泉に入った後、火照った体で畳にゴロン、そしてビール、なんて最高です。が、子どもの月齢によっては和室よりも洋室の方が向いているということもあるのです。
つかまり立ちができる1歳くらいからは、とにかく何にでもよじ登ります。和室にある座卓などは格好のターゲット。座卓の上の急須や湯のみ茶碗、床の間に飾られた花瓶や掛け軸の たぐい、またテレビやフロントにつながる電話など、みな1歳の子どもの手が届くところにあります。親は部屋に入ったらくつろぐ間もなく、これらを全て子どもの手の届かないところへ撤去することになります。しかし和室の場合、これらを避難させる場所はあまりありません。押し入れの中くらいでしょうか。そして最大の恐怖は障子。穴を開けられたりビリビリと破かれたりするのではないかとハラハラしてしまいます。ちなみに我が家の障子はビリビリ、穴だらけです。
一方、洋室はというと。基本的に湯のみやガラスのコップなどは備え付けのテーブルや小型冷蔵庫の上などにあります。テレビも小さな子どもの手の届かないテーブル上に設置されていることがほとんど。触られては困るもの危険なもの を避難させられる安全地帯があらかじめあるのです。
ツインの部屋の場合、ベッドとベッドの間にあるサイドテーブルは動かせることが多く、ベッド同士をくっつけてしまえば子どもが寝ても落ちる心配はそれほどありません。4歳くらいの子どもは(男の子ならほぼ100%)ベッドをトランポリンにして遊びますが、そこはやめさせましょう。聞き分けができる月齢です。
和室でゆっくりとくつろげるのは、子どもがゴロンと寝たままの頃やハイハイくらいまで。または2歳くらいを過ぎてある程度、聞き分けができるようになってから。あるいは子ども達が巣立ったあと老夫婦二人でしみじみ、といったところでしょうか。つかまり立ちや、一人歩きが始まる頃は和室よりも洋室のほうが親は楽に過せる と思います。ただし、洋室にはテーブルとセットで椅子があることがほとんどです。この椅子によじ登って、テーブルに乗って、高いところから落下、という危険性はありますから気をつけなければなりません。特に窓からの落下には、和室でも洋室でも細心の注意をはらわなくてはなりません。

「子連れで彫刻の森」
さて、一夜明けて。電車の見えるホテルをチェックアウトし、「箱根彫刻の森美術館」へ行ってきました。強羅駅から登山電車で山を下った一つ目、「彫刻の森駅」にあります。ここは7万平方メートルという広大な敷地に100点あまりの彫刻が点在しています。数々の芸術作品を鑑賞するのはもちろん、子どもにとっても、体を思い切り動かせる素晴らしい場所です。
彫刻の森には「 プレイスカルプチャー」という、遊びを通して作品に触れることができる展示がいくつかあります。360度ステンドグラスに囲まれた塔の中を登って行く「幸せをよぶシンフォニー彫刻」や、強化プラスチックでできた球体状のジャングルジムのような「しゃぼん玉のお城」などがあり、中でも「おくりもの:未知のポケット2」、通称「ネットの森」は息子のお気に入りです。
「ネットの森」は、造形作家・堀内紀子氏の手編みによる巨大なネットと建築家の手塚貴晴氏、手塚由比氏によるコラボレート作品です。ネット作品の大きさは、13メートル×8メートル、高さは7メートルもあります。ナイロンロープを染織し、丹念な手編み作業で作られています。外側の木組みの部分は釘を使わない日本古来の 工法で作られています。建築家の手塚貴晴氏、手塚由比氏は、アートディレクターの佐藤可士和氏とともに東京立川市の「ふじようちえん」を設計し、数々の賞に輝いたことでも知られています。
色彩や光の生み出す美しさ造形の面白さを、遊びを通して子ども達が自然に発見することを目的としたこの作品。あいにくの小雨混じりのこの日も、たくさんの子ども達が、ボールにぶらさがったりネットをかけ登ったり、思い思いの遊びを繰り広げていました。天気のいい日には、木組みの隙間から木漏れ日が降り注ぎ、風が気持ちよく通ります。作品そのものを見ているだけでも、色彩の鮮やかさや存在感に圧倒されますが、実際に子ども達が中に入って遊ぶことでネットに動きが生まれ、作品が完成するように感 じます。床もクッション性のある柔らかい素材が使われ、よちよち歩きの赤ちゃんにも安心です。

彫刻の森、また子連れにとってうれしいのはトイレの数の多さ。その多さは、以前に某バラエティ番組でもとりあげられていました。息子が急に「おしっこ!」となっても、娘のお尻が急に臭くなっても、慌てることはありません。そしてデザイン的にも優れています。
先ほど紹介した「ネットの森」の近くにあるトイレは自然と融合したデザイン。ネットの森の左手、こんもりとした丘のようなところがトイレです。内装はコンクリートの打ちっぱなしで、清潔感にあふれています。もちろんオムツ交換台も充実しています。

一泊二日の箱根旅行。子連れで慌ただしくはありましたが、リフレッシュで きました。強羅駅の駅員さんの話しによると、震災後、やはり箱根からも人影が途絶え、ゴーストタウンのようだったそうです。余震や計画停電の影響で、箱根登山鉄道の運行に支障が出たこと、また原発事故の影響から外国人観光客がいなくなったことが理由だそう。大型連休をきっかけに、ようやく人が戻り始めたそうです。
震災から2ヶ月以上がたった今。スーパーにもモノが戻ってきました。水も一家族1本限りではなく、箱ごと買えるようになりました。品薄だったヨーグルトも納豆もたくさん並んでいます。気になるのは卵の価格がいまだに高いことくらいでしょうか。電池も相変わらず単一、単二は少ないのですが、探せば見つけることが出来ます。それでも、原発の事故は収束に向かっているのか 、はたまた悪化しているのか、よく分かりません。リフレッシュはしましたが、まだ少し緊張しながら、日々を過ごしている気がします。

2011年5月31日
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/

小田急線と彫刻の森入場券のお得なセットです。
http://www.odakyu.jp/ticket/couponpass/waribiki.html

ネットの森、プレイスカルプチャー。
http://www.hakone-oam.or.jp/kidsfamily/kidsfamily_place.html

彫刻の森のトイレの多さは、人気バラエティ番組でも紹介。
http://www.hakone-oam.or.jp/bakarhythm/index.html







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●車内であやす。混んでいるときはもちろん抱っこかおんぶ。

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●ホテルの窓から見る強羅駅と箱根登山電車。

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●箱根彫刻の森美術館「ネットの森」

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●登りきると色鮮やかな世界が子どもの目に飛び込んでくる。

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●7メートル近い高さへ登る。

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●ネットの森近くのトイレ。左側の丘のような部分

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●トイレ入口。

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●多目的トイレの内装はこんな感じ。写っていませんがオムツ台もあります。

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●トイレの多さは、人気バラエティ番組でも紹介。