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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 81(09/01/2010)

新型マーチ、エクステリアデザイナーの山本賢司くんに聞く

 先日発売された、日産の新型マーチ。エクステリアのデザインを担当したのが、日産自動車のデザイナー山本賢司くんです。私、増子瑞穂とは同級生であり、日芸IDで共に学んできた仲間であり、現在も家族ぐるみでお付き合いをさせていただいている友人です。
新型マーチは世界160カ国で発売され、新興国にまでターゲットを拡げた車。女性はもちろん、男性にも親しみやすいデザインになっています。
子どもを育てる目線で、デザインやモノ、環境についてお伝えしているマッシー通信。今回は、新型マーチのデザイナーであり、二児のパパでもある山本賢司くんに、子どもを育てる目線から新型マーチについて語っていただきました。

ー増子
新型マーチの誕生おめでとう。
ー山本
ありがとう。
ー増子
自分がデザインした車が製品になっているのってどんな気持ちなの?
ー山本
この前までスケッチだったりクレイモデルだったりしたのが、ちゃんと動く製品になっているのってなんだかとても不思議な気持ち。自分でも試乗してみたけど、おぉ、ちゃんと動いてるよ、みたいな。当たり前なんだけど。初めて製品化された新型マーチをお店で見てすごくテンション上がったよ。スケッチだったのが懐かしい。
ー増子
実際に製品になるまでにはどれくらいのスケッチやモデルを作成したの?
ー山本
まず、最初のスケッチの段階で複数のデザイナーでアイデアを何案も出しあって、その中から3案を選択して4分の1スケールのモデルを作った。さらにその中から2案を選んでフルスケール(実物と同じ大きさ)のモデルを作り、最後にその中から選んで1案にする。
案を選択する時は毎回会議があって、その都度自分の案は落とされる可能性があるから、毎回ドキドキ(笑)。
また、モデルを作ってる間も、イメージを明快にする為にスケッチを何枚も描くから、製品になるまで一体何枚描くのかわかんない。
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●フロントのデザインを模索するアイデアスケッチ

ー増子
つまりスケッチとモデルを行ったり来たりするっていうこと?
ー山本
そういうこと。2次元と3次元を行ったり来たりしながら、最終案のデザインに持って行く。
ー増子
モデルの段階までいったら、多少の手直し程度で製品化されるのかと思ってた。
ー山本
今回の新型マーチも最後に1案に選択された段階から、もう一度スケッチをやってデザインを修正して、製品化されている。
それだけ、このカタチになるまでデザインを練り上げて、洗練していったということ。
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●今回の新型マーチのエクステリアデザインの発想の元になったボールペン画。ここから製品化は始まる。
image●ボディ全体に採用されたアイデアスケッチの最終案。スケッチとクレイモデルを行ったり来たりして辿り着く。

「こだわったフロントデザイン」
ー増子
新型マーチ誕生とともに、さらに今年の5月には第二子の男の子が生まれたんだよね。おめでとう。
ー山本
ありがとう。(照れ笑い)
ー増子
新型マーチは子どもの目にはどのように映るんだろう。
ー山本
今回のマーチは、顔のデザインが子どもにとっても覚えやすいと思う。
例えば,車にとっての目にあたるヘッドランプの部分はくりっとしていてインパクトがあるし、口にあたるバンパーグリルはすごく大きい。
子どもから大人まで、世界中の男女に覚えてもらいやすい顔を模索した。
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●フロントの顔のテーマのイメージ

ー増子
ちょっと「となりのトトロ」の猫バスみたい。
ー山本
一度そう言われた事もある(笑い)。子どもがすぐ覚えられそうなデザイン、それはつまり大人にもアピールできるという事。

「広いガラスと盛り上がったフェンダー」
ー増子
新型マーチはどんなところが子どもにとって優しいデザインだと思う?
ー山本
それは後ろの席が高い位置にある事と、ウェストライン(クルマと横のガラスとボデイの境界線)が低い事かな。これによって、子どもが座ったときは視界がとても良く、フロントガラスも広いから景色がよく見える。
ー増子
やはり子どもは車の中で退屈してしまいがちだから、景色がよく見えるのは楽しいよね。
ー山本
視界がいい事はドライバーにとっても、外にいる子どもを見つけ易くて安全。また、安全面からいうと、ライトとフロントフェンダー(ライトの周りの面)が盛り上がっている事が特徴。こうすると運転席から見て、自分の車の隅がどこにあるか分かりやすいから、運転が苦手な女性も安心して車に乗れるよ。
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●新型マーチの視界の良さ、運転のし易さ
              (マッシー通信のための書き下ろしスケッチ)

ー増子
縦列駐車が苦手という女の人は多いから、自分の車の隅が分かりやすいと操作しやすそう。

「子どもを乗せたい未来のクルマ」
ー増子
”子供を乗せる”という視点で、これからどんなクルマがあったらいいと思う?
ー山本
最近、僕自身、子供にクルマの面白さを伝えたいという思いがある。
子供が助手席に乗った時のエンターテインメント性を追求したクルマがあったらどうだろう。
例えば、アクセルやブレーキのペダルが助手席から見え易くなっていて、
隣にいる親が実際にクルマを動かす様子がダイレクトに見えると子供の興味を引くのでは?。
助手席にもスピードメータや、子供が簡単に操作できるナビゲーションが付いていて、親の運転の補助ができるとか。さすがにナビは逆に子供が色々言い出してうるさいかな?!(笑)。
また、少し大きくなった男の子は電車に乗ったり、飛行機に乗ったり、
どんな方法であれ、速さを体感する事って好きなんじゃないかな。
そこで、助手席の高さを低くしてみる。すると目の高さが地面に近づき、あまりスピードを出していなくても体感速度を速く感じる事ができるから、普段街中で買い物行くとき位のスピードでも子供は十分楽しめるはず。
さらに助手席の前の床の一部を切り取る、または強化ガラスにして助手席が中に浮いてる様な感じにしたら、まるで地面のちょっと上を飛んでるみたいに感じて、凄く楽しいかもしれない。
もちろん安全性を考える必要はあるけど、運転席の床も強化ガラスにしてみると・・・ これ大人も超楽しいよ! きっと(笑)。
ー増子
確かに。子どもの頃、高速道路の白線をずっと目で追っていた。子どもってそういうことが楽しかったりするよね。でもそんな事って可能なの?
ー山本
今は構造上色んな問題があって難しいかもしれないけど、近い将来、電気自動車がどんどん進化していくと、出来ないことではないと思う。
例えばホイールの中にモーターを入れる技術なんかが出てくると、車の構造が根本的に変わってしまう。そうなればこういうエンターテインメント性を追求したクルマが実現できるかもね。
ー増子
最後に、カーデザイナーを目指している、学生にメッセージを。
ー山本
クルマをやりたかったらどんどんクルマの絵を描いてください。何だかんだ言っても、カーデザインはまだまだスケッチが武器なんで。
脳みそで考えた形がそのままCADとかにに取り込む事ができる装置とかが発明されない限り、この状況は続く。
あと、目一杯バカやって遊んでください。いい意味でのバカはデザイナーの栄養です。





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●今年3月にワールドプレミアされた新型マーチ実車の写真。
(欧州仕様)





































































































































































































 今回のマッシー通信のためにスケッチも書いてくれた山本賢司くん。新型マーチについて、そしてこれからのクルマについて素敵な話を聞かせてくれました。ありがとうございました。
なお、モーターファン別冊ニューモデル速報「新型マーチのすべて」が発行されています。日芸IDの卒業生で新型マーチのアソシエートプロダクトチーフデザイナーの山根真さん、そして山本賢司くんへのインタビューを交えて、新型マーチについて詳しく紹介されています。

2010年8月31日
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/
公式ブログ
http://gree.jp/mashiko_mizuho/blog

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● デザイナーの山本賢司くんとマッシー。お互いに一男一女の親です。