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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 73(11/29/2009)

「眩しさからの気づき」

 今年も残すところあと1ヶ月。きらびやかなクリスマスツリーが街を彩っています。2人目の妊娠生活も5ヶ月を過ぎ、安定期と言われる期間を過ごしています。その名前のとおり体調も安定し、お腹もまだそれほど大きくなく比較的のびのびと過ごせる時期です。
しかし、今回の妊娠。この安定期に至るまでは辛く苦しい日々を過していました。原因は多くの妊婦が経験する「つわり」です。一人目の妊娠でも気持ちが悪かったり食欲がなかったりということはあったのですが、今思えば軽いほう。今回は比較できないくらい辛いものでした。一日中、絶え間なく襲ってくる吐き気、めまい、頭 痛に悶えていました。食欲も全くなく、テレビで食べ物の映像を見ただけで気持ちが悪い。水にまでもなぜか不快な味を感じ飲めず。あらゆるにおいに敏感になり、また吐き気をもよおす。という地獄の日々が2ヶ月近く続きました。そのため朝、目が覚めても動けません。居間に布団を敷いて寝たり起きたりの生活をしていました 。一人目の妊娠なら寝室で横になっていられますが、すでに3歳の子どもがいると寝てもいられず。子どもが食事をしたり遊んだりするそばで、その様子を眺めながら横になっている始末でした。今思えば一人目の妊娠は優雅なものでした。自分のことを考えていればいいのですから。一人目の妊娠生活はたった一回しか味わえない もの。当然のことに今さらながら気がつきました。

さて、寝たきりの日々を過しながらも気になっていたことがあります。これまではあまり気にとめたこともなかったのですが、ずっと横になったままでいると、照明がとても眩しいのです。下から照明を見上げている状態になるため、光源が直接目に入り眩しくてしょうがない。一人で横になっているなら電気を消すこともできるの ですがそばで子どもが遊んでいるわけですし、夜でもないのに暗い中で一日中過しているとますます気が滅入ってしまいます。仕方なく、電気をつけたまま横になり光源が直接目に入らないように照明から目をそらして過していました。こんなに照明が眩しいなんて。これまでの生活では気がつかなかったことです。
体調が悪くて一日中横になっていたわけですが、健康でも一日中寝て暮らす人がいます。それは、赤ちゃん。寝返りができない生後半年くらいまでの赤ちゃんはひたすら上を見て生活しています。体調が悪くて横になっていた私と同じように、赤ちゃんも光源を眩しく感じているのではないか。寝たきりの生活をしたことによって初 めて気がつきました。

光源が目に入らない照明といえば、真っ先にあげられるのがデンマーク「ルイス・ポールセン社」の照明ではないでしょうか。ルイス・ポールセン社はデンマークを代表する照明会社。多くの製品では直接光源が目に入らないようにシェードの形が工夫され、眩しさが抑えられています。中でも有名なのが「PHシリーズ」の照明です 。計算の上にデザインされたシェードに光があたって反射し、部屋を優しく照らしてくれます。照明を近くでのぞき込むようにしなければ光源を直接みることはできません。ですから光源が目に入って眩しいということもありません。PHとはデザイナーのポール・ヘニングセンの頭文字からとっています。PHスノウボールやPHアーテ ィチョークなど、自然をモチーフにしたデザインの照明に楽しい名前がつけられています。(ちなみにアーティチョークとはヨーロッパの野菜の名前です。)PHシリーズを始めルイス・ポールセン社の照明はデンマークの多くの公共施設で使われ、また北欧全土でも絶大な人気を得ています。

なぜ北欧ではこのような光源が目に入らないデザインが人気なのでしょうか。北欧の人々は目の色素が薄いため眩しい光に弱いことや、冬の寒さから多くの時間を室内で過すため照明に対してこだわりを持っていることも理由にあげられますが、北欧の風土というのも大きく関係しているようです。北欧では1年を通して太陽の位置 が低く、冬ともなると昼でも薄暗い日々が続きます。この低い位置からのわずかな光が降り積もった雪に反射し、自然や建築物、人々の表情を優しく照らす。非常に繊細な光の中で生活しているのです。そんな北欧の人々にとって柔らかな光、繊細な光に対する美意識は遺伝子に組み込まれているのかもしれません。直接モノを照ら す強い光ではなく、照明のシェードや天井、壁に反射した柔らかい光の中で暮らすことはごく自然なことであり、生活に安らぎを与えてくれるのでしょう。

柔らかな光の中での暮らし。産まれてくる新しい命のためにも、PHシリーズの照明を検討したいところですが、やはりいいモノ。お値段もなかなかのものです。もう一人家族が増えることによって物入りにもなるので迷うところです。もうすぐクリスマス。クリスマスプレゼントにサンタさんから届かないかしら、なんて思っていま す。

2009年11月28日
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/

PHシリーズを実際にご覧になりたい方は六本木アクシスビル内のルイス・ポールセン社ショールームへ足を運んでみてはいかがでしょう。
http://www.louispoulsen.com/jp.aspx

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●来る日も来る日も眺めていた眩しい光


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●PHスノウボウル
「北欧デザイン2 プロダクト」
 (渡部千春氏:著)より
発行・発売:プチグラパブリッシング
http://www.petit.org/bookguide