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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 70(08/28/2009)

「輝くメイドインジャパン」

8月上旬、「若年者ものづくり競技大会」表彰式の司会の仕事をしました。この大会は日本全国の職業能力開発施設や工業高等学校などで学ぶ20歳以下の若者たちが技能を競うものです。メカトロニクスや、CAD、家具建具の木材加工、建築大工、またウェブデザインやグラフィックデザインなど14の競技があり、270人あま りの若者が日頃の技能を競い合いました。それぞれの競技で第一位に輝いた選手には厚生労働大臣賞が贈られました。晴れやかな顔で受賞を喜ぶ若者の姿が印象的で、今後の日本製品を作り上げて行く若者たちに心から拍手を贈りました。

日常的に愛用している日本製品で、我が家にとって身近なのがお弁当箱です。今は2種類のお弁当箱を使っています。
1つ目はアルミのお弁当箱。息子は外遊びの機会が多く、そのまま外でも昼食が食べられるようにとアルミのお弁当箱を選びました。
お弁当箱は「シール式」「ロック式」「かぶせ式」の3種類に大きく分けられます。シール式というのは食材の密閉容器のようにフタの溝と本体がぴったりとはまるもの。(タッパーのようなものというと分かりやすいでしょうか)「ロック式」はフタと本体をとめるロックがついているもの。そして「かぶせ式」は本体にフタをか ぶせるだけのものです。アルミのお弁当箱のほとんどはこの「かぶせ式」です。
シール式を開け閉めするには、親指に力を入れなければならず、小さな子どもにはまだ難しい。また使っていくうちにフタと本体が微妙にずれ、はまりにくくなってしまいます。ロック式はさらに難しく、力の入れ方にコツが必要です。強すぎても弱すぎても開ける時にお弁当箱がすべってしまい、子どもでは中身をすべてぶちまけ てしまうおそれもあります。
小さな子どもにとって一番扱いやすいのがかぶせ式のお弁当箱。上からフタをかぶせるだけなので子どもでも簡単に扱えます。フタは開いてしまわないようにゴムバンドで止められるようになっています。ゴムバンドならば子どもでも簡単に開けられます。密閉度はありませんが、子どものお弁当に汁ものはあまり登場しません。か ぶせ式の代表ともいえるのがアルミのお弁当箱。とても軽く、子どもでも楽に持つことができます。
幼稚園によっては、お弁当箱にこの「アルミのかぶせ式」を指定するところもあるようです。扱いやすいことも選ばれる理由のようですが、もうひとつの理由はアルミの熱の伝導の良さ。幼稚園では子どもが持参したお弁当を保温庫で温めなおしてくれるところがあります。アルミのお弁当箱は電子レンジには対応していませんが、 幼稚園で使われている保温庫の多くは電熱式やスチーム式。熱の伝導がいいアルミならこの保温庫に適しているのです。昔、ストーブの上にアルミのお弁当箱を置いて温めた記憶がある世代の方もいらっしゃるのではないでしょうか。昔のお弁当といえば、日の丸ドカ弁。大きな四角いアルミのお弁当箱にご飯を詰め、日の丸に見立 てた梅干しをひとつ。かつてはこの梅干しでアルミのフタに穴が開いたこともあったようです。が、今ではそのようなことはありません。現代のアルミのお弁当箱には表面に加工が施されていて酸や塩分に強くなっています。ですから梅干しで穴があく、なんてこともないようです。
アルミのお弁当箱のほとんどは日本製。軽く、開けやすく、熱の通りがよい、子どもに優しいアルミのお弁当箱は日本の技術が作り出しています。

そしてもうひとつ愛用しているのがステンレスのお弁当箱です。生産地は新潟県燕市。日本を代表する金属製洋食器の産地で、国内生産シェアは90%を超える工業都市です。また燕市はI podの裏面の鏡面加工でも知られています。
ステンレスは名前からも想像できる通りサビにくいのが特徴です。ステンレスの表面には薄い膜があり、この膜はたとえ壊れても周りに酸素があればすぐに再生しサビを防いでくれます。自らの力でいつまでも美しさを保つのです。流し台やお風呂場など水と関係のある場所にはステンレスが使われています。ステンレスのお弁当箱 にカレーやケチャップライスなどを入れても色移りすることなくきれいに汚れが落ちます。約100種類あるというステンレスですが、ポピュラーなのがクロムを18%、ニッケルを8%混ぜたもの。「18−8」と表示されています。アルミに比べて値段は張りますが、衝撃に強くとても頑丈です。
我が家が使っているのは新潟県燕市にある工房アイザワのお弁当箱。ロック式でフタにはパッキンもついていて汁物を入れても大丈夫です。大容量のものを2つ用意し家族のピクニック用に使っています。
ピカピカした表面の美しさもさることながらロック部品の接合加工の美しさには脱帽。指で接続面をなぞってみても凹凸が感じられず滑らかで感動すら覚えます。日本の技術が凝縮されているのが指先に伝わってきます。ロック式なので息子に開けさせるのはおあずけです。せっかく作ったお弁当をぶちまけられてはたまりません。 今のところこのステンレスのお弁当箱を開けるのは、父ちゃん母ちゃんの特別な役目です。
1986年には、この工房アイザワのカトラリーが「ニューヨーク近代美術館」の永久デザインコレクションに選ばれました。日本の金属製洋食器は海を越えて愛されているのですね。
衛生的でさびにくく、容器に色や匂いが移りにくく、衝撃に強く丈夫。家族にうれしいステンレスのお弁当箱も日本の技術が生み出しています。アルミのお弁当箱が日常使いならば、ステンレスのお弁当箱はちょっと特別なお弁当箱。2つとも我が家にとって大切な輝くメイドインジャパンです。

「若年者ものづくり競技大会」の表彰式で晴れがましい笑顔を見せ、時には涙を流していたものづくりに携わる若者たち。
これから、日本の技術を受け継ぎ、また新しい技術を生み出し、人々を感動させるものづくりをする若者たちに出会えた貴重な一日でした。


2009年8月27日
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/

工房アイザワ
http://www.kobo-aizawa.co.jp/



























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●アルミのお弁当箱。息子には好きなキャラクター付き。

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●ステンレスのお弁当箱。670mlと1000mlの大容量。

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●ステンレスお弁当箱ロック式の部品。

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●部品の裏面。指でなぞっても滑らかで美しい。

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●輝くJAPANと「18−8」の文字が誇らしげ。