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■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 40(2/25/2007)

「集まれ、お母さん。」

 育児生活も5ヶ月を過ぎ、少しずつ慣れてきました。
育児のあいまに新聞に目を通す時間も持てるようになった最近、気になる記事を見つけました。読者からの投書欄です。60代の男性からの投書で、内容はこのようなもの。
「最近居酒屋で子ども連れの客の姿をよく見かける。子どもが大声を出したり、歩き回ったり。場違いではないだろうか。個室風に区切られた店が増えたのも一因かもしれない。禁煙席がない場所での受動喫煙も気になる。」
数日後、この内容に腹が立ったという投書が掲載されていました。30代の女性からのもの。「自分は育児まっさい中。子育ては喜びも大きいが、日に日に目が離せなくなっていき、日中は子どもと二人きり。息が詰まりそうになる。そんな自分の息抜きの場が個室風に区切られた居酒屋。夫やママ友達と、たまのお酒とおつまみがストレス解消につながる。子育て中のささやかな息抜きの場を奪わないでほしい。」
この2つの記事を読み、深く考えさせられました。私自身も大のお酒好き。かつては、いつでもどこにでも好きなように出掛け「とりあえずビール!」と言っていました。
60代男性の気持ちもわかります。確かに自分の飲んでいる席のすぐ隣で子どもが騒いでいたらリラックスして飲めないでしょう。煙草を吸う人にとっては、吸っていい場所なのになんだか悪い事をしている気になるかもしれません。
 一方で、今まさに私は30代女性と同じ立場。常に子どもと一緒で、出掛ける場所も時間も限られています。子連れで居酒屋は場違いだと思う人もいるかもしれないけれど、育児をする私たちの気持ちもわかってほしい。
しばらく2つの考えが頭の中にあり、もやもやしていました。
また数日後、このことに関する新たな投書が掲載されていました。居酒屋チェーンの店長さんで、4ヶ月の子どもの親だといいます。この店長さんは、大人がしっとりと飲むような店は例外であるとしたうえで、このように書いていました。
「問題はマナーやモラルだと思う。私の店は子連れの客も多く、お母さんたちの宴会もあるが、他の客の迷惑になることはめったにない。店側も個室などに案内したり、玩具を貸し出したりの配慮をする。また客側も子どもが泣いたらいったん外に出るなどの配慮をしてくれる。」そして「マナーを守るのは子連れの人もそうでない人も同じこと。お互い気持ちよく飲めるよう心がける事が大切では。」と結んでいました。
この記事を読んで心のもやもやが晴れ、すっとしました。また、子育て中の女性はかつての息抜きの場を失う現状があるということも広く知ってもらえ、よかったと思いました。
そして最近、改めて住んでいる地域を見直すと無料で利用できる集会所や公民館があることにも気がつきました。これまで遠くばかりを見ていて自分の住んでいる地域に目を向けていなかった私。息抜きの場を失うことがなければ気がつかなかったことがまだあるかもしれない。場所や時間の制限があるからこそ、お母さん達は集まれる場所や機会に敏感になり、探し出す。
子どもが産まれ、行動が制限されなければ、このささやかな開拓精神は私の心には芽生えなかったかもしれません。

2007.2.25
増子瑞穂