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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 34(7/31/2006)

「マタニティマーク」

前回のコラムの後、たくさんの方に励ましのメールをいただきました。ありがとうございます。お陰さまで妊婦生活も9ヶ月に入りました。

さて、タイムリーな話題ですが、8月1日から一部の鉄道で「マタニティマーク」なるものが無料で配布されることになったそうです。先日ヤフーのトピックスにもあがっていたので気づいた方もいらっしゃるかもしれません。
妊産婦であることを示すもので、妊娠中と周りが気づきにくい妊娠初期の人、またお腹が目立ちにくい人への理解と協力を求めるキーホルダーです。
取り組みとしてはいいことだと思うのですが、ここで大切になってくるのはマスコミの対応です。新聞、雑誌、テレビ、ラジオ。特に私が関わっているテレビの対応には注目しています。
このような妊婦であるキーホルダーやストラップは以前からあるのです。
しかし、知る機会がないのが現状です。私も妊婦になって初めて、マタニティ雑誌などで目にする事が増え知りました。知らない人にとってはただのキャラクターストラップになってしまいます。車の若葉マークのような認知度になるにはマスコミの取り上げ方にかかってくると思います。マタニティ雑誌や育児番組でいくら取り上げても効果は期待できません。いかに広く世間に知れわたらせる方法や演出をとることが出来るかどうかがキーになってくると思います。
8月1日、マスコミがどのようにとりあげるのか、鉄道各社はどのように配布するのか、どれだけの人に認識されるか、注目しています。

ちょっといい話をひとつ。
ある日、夜7時くらいのこと。仕事帰りの電車でのことです。いつもならすわれるタイミングで並んでいたのですが、日に日にのろのろしているのでしょう。その日はみるみるうちに席がうまってしまい、座りそびれてしまいました。
しかし、こんなことはもう慣れっこ。連結部分の手すりだけはゲットし、網棚にバッグを載せ、仁王立ちして発車に備えていました。すると私の肩を叩く人が。厚い眼鏡をかけた50代くらいの男性です。「こちらが空いていますよ。」と言います。その場所は私が立っていた連結付近から5メートル程離れた一般の座席です。男性は自分のカバンを座席に置き、私を誘導しに来てくれたのです。
男性は梅雨の蒸し暑い中、左手だけに厚手の手袋をしていました。ケガをしているのか、何か障害があるのか、理由はわかりません。気にしてはいけないのかもしれないのですがその手袋が記憶に残りました。私はお礼を言ってご好意に甘えました。
それから数週間後、同じような時間帯の電車に乗りました。
その日は運良く座ることができました。ふと、向かい側に背を向けて立っている男性の左手に目がいきました。厚手の手袋。離れた場所からわざわざ席を譲りに来てくれた男性です。注意深く観察しましたが、まちがいありません。どうしようか考えましたが、私は電車を降りるとき思い切って声をかけました。「先日はありがとうございました。お陰さまで順調です。」と。すると男性は一瞬何のことかわからないようなびっくりしたような顔をしましたが、次の瞬間「あぁ!どういたしまして。」と笑顔になりました。電車を降りてからも窓越しにお互い一礼して別れました。男性を乗せた電車は下り方面に走っていきました。

私が仕事を続けるのもあと1週間足らずです。あの男性に会うことはもうないかもしれません。でもこんな出会いができるのも妊婦ならではと思いました。

2006.7.31
増子瑞穂



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●マタニティマーク

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●最寄り駅に貼られたポスター。
こんなにさりげなく貼られても足を止める人はほとんどいない。