NUDNimageNUDNとはimageID/PD分野についてimageお問い合わせ

image
partitionホームpartition芸術学部情報partitionデザイン学科情報partition学生作品partition卒業生作品partitionリンク集partitionメールマガジンpartition
image

コラム「創造力の根っこ」VoL.89 (01/09/2016)

「工夫(device)の究極・人工知能(AI)の母」  
                                  
鈴木淳平

人工知能は約3000年におよぶ果てしなき人類の夢の実現なのか?
こんなものが有ったらいいなぁの夢や〈思い〉を時系列に並べると見えてくる
悠久の時を隔てた〈思い〉に科学や技術が時間差で追いつく現実に
人工知能の母なる存在として浮かびあがるギリシア神話の〈ガラテア〉!


こんなものが有ったらいいなぁの〈思い〉が先にありきで、学問や科学が仮説を
たてアプローチや過程を経て実証するように、〈思い〉を科学した結果の一つが
人工知能であると想えます。古代文明には今より進んだ科学があったとする都
市伝説を彷彿させ歴史は繰り返されるのかもしれません。紀元前のギリシア神
話から約3千年をへだてた21世紀の人類が科学によって〈思い〉を、やっと具
現化できてきたものの一つが人工知能ではの仮説がなりたちます。人類は、古
代に人工知能の母なるモデルに憧れ、歴史のゆりかごの中で時の技術革新に
揺られながら、現代に蘇生させようと歩んできたと言えるかもしれません。

人工知能ロボットの夢や未来予想を先取りした博物館(映画版年号・役名)
1927 アンドロイド・マリア:『メトロポリス』(Metropolis)は、
    白黒サイレント映画
1938 イライザ:『ピグマリオン』(Pygmalion)、イギリス映画
1968 ハル(HAL):『2001年宇宙の旅』(原題:2001: A Space Odyssey)、
    1968年アメリカで公開、HALはアルファベットでIBMより一歩(一文字)
    前に、Iの前はHにしたことでIBMより進んでいることを意味している
1977 R2D2+C3PO:『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』
1984 T-800:『ターミネーター』(原題: The Terminator)、アメリカ映画
1999 アンドリュー:『アンドリューNDR114』(原題:Bicentennial Man)は
    1999年に公開されたアメリカのSF 映画、ガラテアの名前で登場する看護師も
2004 サニーNS-5型:『アイ,ロボット』(I, Robot)、アメリカ映画

約3000年前、紀元前のギリシア神話の〈ピグマリオン〉に源流をみる?
おおよそ紀元前15世紀から紀元前8世紀に成立したとされるギリシア神話に
人工知能を示唆する物語を知ることになります。ピグマリオンが大理石で刻ん
だガラテアをアフロディテによって生きた人間にしてもらう物語。後世の著名人
がそれぞれの時代に蘇らさせています。

童話の世界(17世紀〜19世紀)では
魔女によって眠ったままにされ白馬の王子様がヒロインの眠り姫に接吻(キス)
をして蘇らさせる物語。『眠れる森の美女』はヨーロッパの古い民話・童話、フラ
ンスのペロー童話や、グリム童話集の『茨姫』(いばらひめ)が同一の起源、
ガラテアにキスし人間にするピグマリオンではないかと感じさせられます。グリ
ム兄弟は19世紀初頭、ペローは17世紀の作家、両者ともヨーロッパという地
理的・人種的にギリシア神話を知る立場にいたと想えます。

『マイ・フェア・レディ』は、ミュージカルや映画の名作
原作となったバーナード・ショーの1913年初演の戯曲『ピグマリオン』。白黒映
画『ピグマリオン』(1938)、『マイ・フェア・レディ』(1964)いずれも、ピグマリオンの作ったガラテアの名をイライザにしたものとされ、ギリシア神話から3千年の
時空を隔てて復活したと言えます。

アイザック・アシモフの原作をモチーフにした映画
『アンドリューNDR114』の原作『バイ センテニアル・マン』、『アイ,ロボット』(I,
Robot)の原作も、短編集『われはロボット』など、アイザック・アシモフが作者。
『ロボット憲章』、ロボット工学三原則も重要な規範・主流です(No.83に掲載)

映画の人工知能がコンセプト・あるべき姿で、現実の技術が追いつくのか?
最新の人工知能ロボットはまだ、映画の未来像を描く人工知能には追いつい
ていない氣がします。最初に〈思い〉ありきで、こんな人工知能があったらいいな
ぁ!から始まり人類の英知を集めた科学的なアプローチでやっと、目の当たり
にする人工知能ロボットが世間をにぎわすようになった2016年は、人工知能
の人型ロボット元年なのかもしれないと感じます。
どうしても技術的なところに、目に見えるものに意識が向きますが、大切なのは
想像力の根っこともいえる脳で変化する〈思い〉に目を向けるべきです。

やっぱり、こんなものが有ったらいいなぁの〈思い〉のコンセプトありき
デザイナー・開発者・技術者の〈人間の尊厳〉を敬い守る姿勢こそに人工知能
のあるべき姿を見ることができます。そのうえで技術革新がもたらせると信じた
いもので、決して夢を壊したり、こんなはずじゃなかったと後悔することのない人
工知能にしてほしいと切に願います。
ピグマリオン効果、「人は努力し褒められれば好ましい方向へと成長する」。

〈ガラテア〉とは?
明智光秀の三女の「細川ガラシャ(1563−1600)」は、キリスト教徒が彼女の殉
教にガラシャ=Gratiaの名を与え、世界的に有名になり音楽のタンゴの語源に
なったとの話も。ガラシャの意味は恩寵:神の恩恵と訳されているようです。
〈ガラテア〉のアルファベットはGaratea、Garatiaとあり同じ意味と解釈できます。

宗教を前面に出すのではなく、科学と宗教が対立してきた歴史が西洋・キリス
ト教国圏にはあり、細川ガラシャのガラシャが神の恩恵と解釈されるようにアジ
ア人の我々は対立でなく融合する東洋哲学をもった民族であり人工知能のあ
るべき姿に最も近い存在であることを再認識すべきかもしれません。