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コラム「創造力の根っこ」VoL.45(01/01/2013)

『おばけ屋敷』の復活・ゲーム時代−〔自発〕6            鈴木淳平

人は期待されると好ましい方向へ進む〔ピグマリオン効果〕を、『おばけ屋敷ゲーム』は裏付けました。おだてられ木に登ったか、火事場の馬鹿力を出したか、潜在能力を引き出されたのかもしれません。集中力がミスを遠ざけ精度を高め、合理的と想える時間の無駄を省き、緊張感の持続がトントン拍子に『おばけ屋敷ゲーム』商品開発へと向かわせました。

「これからの開発はこれだ!」
1981年春発売の半年前の役員プレゼンテーションで、子どもたちの声をそのまま数値化したアンケート集計の科学的な統計手法が決定的な説得力になりました。プレゼンで『おばけ屋敷ゲーム』が〔売れる〕と確信した役員の一人から「これからの開発はこれだ!」を聞いた時は、連日の電話苦情係・電話のお兄さんを返上できたと頭の中が騒いでいました。
『おばけ屋敷ゲーム』商品化に太鼓判が押され以後、役員の期待に対する頑張りと意欲につながり、実務の励みと支えにもなりました。

商品をもっと良くしたい、売れるようにしたい商品化過程の願望を具現化
『ドラキュラ・ゲーム』の反省と後追い調査(アンケート)で単純明解なグーチョキパーを勇氣・知恵・力の対決カードにアレンジするゲーム進行を思いつき、〔らしさ〕の完成度を高めたいと望み、知識不足や経験不足を補ってくれる志をもつ仲間が集まってくれたお蔭で問題解決と時間の短縮にもなりました。
〔異才能集団の創作〕を開始するキッカケになった『おばけ屋敷ゲーム』です。

ジェットコースターのように
『ドラキュラ・ゲーム』で実現したカードによる能動的なゲーム進行を踏襲しながら、遊園地の「おばけ屋敷」と同じ通路や部屋で突然おばけたちと出くわす設定を活かし、その都度おばけと対決するハラハラドキドキの「おばけ屋敷」〔らしさ〕を再現し、連続絶叫の代名詞・ジェットコースターに乗った時のように子どもたちが夢中になるゲームに、エンタテイメントになると信じ〔自発〕していました。
立体に見せたいボード(盤)デザイン
2次元(2D)のボードを3次元(3D)に見えるようなイラストをと無理難題のチャレンジを依頼しデザイン会社(日芸の先輩)を困らせました。
「おばけ百科全書」的におばけのオンパレード
〔三賢者〕には、次から次へと出てくる古今東西のおばけや妖怪と対決するゲーム主旨を打ち明けつつ、ボード裏側にギッシリとおばけ百科の〔おまけ〕を依頼。
競合商品と区別化するエンボス加工を採用
ツルッとしたプレスコートかPP貼りが多かった市販のゲーム(『ドラキュラ・ゲーム』もプレスコート)と区別したいと印刷会社に相談し、マット(艶消し)な感じのエンボス(梨地)を教わりパッケージやボードに採用。工夫の楽しさを知りました。
「過去・現在の非常識こそが未来の常識」だと学んだ「おばけ屋敷ゲーム」
遊園地の「おばけ屋敷」がゲームに。遊園地でしか体感できなかった〔恐怖・スリル〕の「おばけ屋敷」の題材は非常識に想えた時代でもゲームにして発売してみれば身近に遊べるゲームの常識になりました。
夏の風物詩だった「おばけ屋敷」。ある営業所長が、「おばけ屋敷は、夏の風物詩だから春発売では売れないのでは!」と、発売時期に疑問を投げかけられましたが、もののみごとに予想を覆し、夏以外でも売れる常識を創りました。
カードでゲーム進行。処女作『ドラキュラ・ゲーム』のゲームデザイン時、サイコロ・ルーレットを使ったゲーム進行が主流で常識だったボードゲーム市場に、自分の意思、能動でコマを進めるカードを導入し『おばけ屋敷ゲーム』で単純明解なゲーム進行が出来たことで1980年を境にカードゲームを常識に変えました。

ゲームは、非現実・仮想世界のエンタテイメント。一方通行の映画・テレビ鑑賞などと異なり主体性を刺激され感情移入しやすい非日常的な世界観を楽しむ双方向コミュニケーション型のゲームは、非常識を簡単に常識にできるからこそ流行り、1980年から見た未来に〔ゲーム大国日本〕を常識にしたのです。

〔自発〕のすゝめ
『ドラキュラ・ゲーム』で〔自発〕にスイッチが入り後追い調査の一例であるアンケート集計の結果を素直に受け、『おばけ屋敷ゲーム』が生まれました。
感じ氣づく力・〔知覚〕から芽吹き成長し続けるのが〔自発〕だと感じます。
〔知覚〕は、能動・主体性の目覚で個性や独自性を醸(かも)し養います。
創造力の根っこが吸収する養分が五感情報を〔知覚〕し、消費者と仕掛け側、受動と能動をあわせもち、芽吹き、客観視しながら成長するのも〔自発〕です。
見えているだけで見ていない、目に入らなかったもの感じなかったものをハッキリと〔知覚〕し、強く望めば欲しい情報や機会が偶然のように叶う奇跡と想える不思議な経験を積み重ねられるのも〔自発〕による作用だと思います。
〔知覚〕後の〔自発〕は、過去・現在の非常識を未来で常識にする力です。

翌1981年の玩具見本市で、『おばけ屋敷ゲーム』のボードに顔を近づけ舐めるように見入っていたのが宮崎駿だと業界に詳しい営業マンに聞かされ、「『ドラキュラ』、『おばけ屋敷』などのホラー系はいつの時代にも通用し、売れる永遠のテーマです」とセールストークとして説明したことも懐かしい憶い出話です。

消費者である子どもたちのアンケート集計し素直に信じ、『おばけ屋敷』をゲームデザインし商品化できのは、バンダイ社是の冒頭「消費者の求める商品を開発し…」を素直に実行したからだと結びます。
故山科直治バンダイ創業者が、忘れがちな志を徹底すべく社是にしたのです。
世の中を素直に観て「非常識を常識にするのが経営」だとも教わりました。(完)