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コラム創造力の根っこ」VoL.28(08/01/2011)

                                鈴木淳平
売れるマンガ、売れないマンガ             

マンガ・表現活動の時差
経済では「売れるものは会社の机の上に無く、売場にある」が基本です。
現場をよく知らなければ勤まらないのは、社員全員と営業マンの役目です。
創造力を主体に表現活動や企業の企画者、デザイナーを職業に選ぶ人は、どの営業マンよりも現場をよく知らなければ勤まらないものです。
営業の基本は、「今、売れるものを売場で売る」になります。
消費者が購買したい商品が売場で売れれば営業成績も上がるからです。
個性的な創造力で表現を売りものにするマンガ家をはじめ多くの表現者、企画者、デザイナーが誤解し戸惑うのが、現場を知らず企画、創造表現などで売れる商品を産み出せないと想うのが大方の実感なはずです。
売れるマンガと売れないマンガの差が浮き彫りになる原因の一つが現場を知るか知らないかにあるのです。
マンガ家が対象とすべき社会の実情、読者の心理、将来に活かせそうな話題やファンタジーの世界なども密接に現場と結びついた発想が必要なのです。

今売れるということは、そのマンガや商品の企画は少なくともそれよりも前に企画されたり描かれたり商品化のステップを踏む、時系列に並んでいます。
マンガであれば雑誌への原稿、校正、校了、印刷、流通と締め切りがあります。
表現物や商品は、段取りや準備、生産する時間が必要になり、数ヶ月前に着手していなければ公表することも売場に並べることもできません。
マンガ家、表現者や企画マンに必要な条件は、才能といってしまえばそれまでですが、内容を組上げ段取り実際に表現し描くまでの時間も才能に大きく影響する能力として必要です。

発想から表現を経て売場に並ぶまで時差(タイム・ラグ)を感じることです。

かつて、ファッション業界が夏の今頃、来年の春物、夏物を手がけ、1年以上も先のことを予測し商品化し売場に並べることを繰り返していた時代がありました。
商品の売れ行き動向は、想ったようには売れず時差が繊維業界のジレンマを創り出し一時はトラウマのように不況を招く原因の一つになっていました。
現在では1,2週間のサイクルで小回りの利くアパレル・メーカーが業績を伸ばし、売場動向の情報にひたすらスピードアップを心がけた、好業績が見えます。
現場の情報をリアルタイムに企画者、デザイナーがコンピューターの集計と情報処理によるIT化が可能にした功績です。

売れるマンガは、雑誌社の編集部とアンケートによる読者からの投書を真摯に受け止め取り入れ軌道修正を繰り返すことを積上げ、売れ行きを延ばせ、マンガ家、一人の力ではなく多くの関係者を含め可能にしてきました。
マンガ家に限らずこの時差を創作活動の日程に組み込まなければ、芸術家気取りで売場、現場から遊離した体質となり氣の利かない我がままし放題の無計画性が、やがて淘汰される趨勢(すうせい)、常であるという見方をされます。
【クリエーターと時間管理 19】に登場した映画産業では、スピルバーグの結婚契約がそれを物語り、映画制作の膨大なコストを管理するうえでも、個人の結婚生活を円満にする意味でも時間管理・締め切りを守ることの重要性を裏付けていました。

リアルタイムに変化する世の中、社会、現場で話題になっているものを題材にするのであれば新聞やネットなど即効性のあるメディアが効果を発揮します。
厳密にいえば新聞の締め切りは前日から当日のシンデレラ・タイム辺りが原稿締め切りの瀬戸際です。
週刊マンガ雑誌であれば、発効日から物理的印刷時間と流通時間を含め最低でも4,5日前に決定稿による校了の締め切りを守らなければ〔穴を空ける〕ことになり出版社の経済的損失は発行部数に比例する事態になります。
月刊誌や映画などの場合も、締め切りは逆算の知恵をつかえば理解できます。
締め切りが遅いほど表現力の完成度と品質が上がるとは、一概に言えないのが創造性を重んじる世界では常識です。

表現物が世の中に出回るまでの時差が、いかに多くの表現者を苦しめているかも見逃せません。
学生が、課題の締め切りを繰り返し守り訓練をへて社会デビューすれば少なくとも時差の問題は表現活動を阻害するとは想えないようになるかもです。
時差を理解し締め切りを守ることがたやすいことに思えてくれば残る課題は、才能を磨くことに尽きます。
自分らしさは、外的な要素である様々な事象をセンサーである五感を通して吸収、発見し感動と興奮を味わいオリジナリティある発想へと導く〔創造力の根っこ〕を大切にする心がけとそれを具体的に表現する手段の技術を磨くことに専念することが出来るようになるのです。

売れるマンガと売れないマンガは、時差を巧みに、臨機応変にこなし自分らしさを打ち出すオリジナリティを時流である現場、世の中の流れや、消費者マインドを誰よりも表現者が取り入れられるかで、どちらに属するかが決まるのです。
現場を知る手段は、飛躍的に個人に有利な世の中になっていることはアパレル・メーカーの例でも理解できるとおりです。
時差を合理的に情報処理でき、オリジナリティの発揮に専念すればプロとして充分に通用する、売れるマンガ家、表現者になれると想うようになれるはずです。































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