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コラム創造力の根っこ」VoL.19(10/31/2010)

                      鈴木淳平(株式会社ジェダイ代表)

クリエーターと時間管理」

 しめきりギリギリになって脳の中をあわてさせ課題や仕事の提出期限をなんとか守る《一夜漬族》。
最初から計画的に時間管理し期日までにやるべきことを整理し順番に片付けていけば、焦らずとも出来るのではないかと言われます。(計画性)
分っていても出来ない何かが脳の中にありそうです。(次回)
計画的に期日を守ることを要求されるのが企業に属するクリエーターの厳しい掟です。宿命です。芸術家だからは言い訳になりません。
他の仕事と同じでクリエーティブな芸術家だけが優遇されることはないのです。
 ハリウッド映画監督のスティーブン・スピルバーグも映画製作において、時間管理の厳しさを取材で答えていました。
大勢のスタッフと出演者の《異才能クリエーター集団》が一体となって生まれる《共創芸術》は時間管理なしでは大変なことになってしまいます。
一日たりともロスを許されない予算の組まれ方と時間管理が、共創芸術の全体をみわたしながら徹底した分業化・細分化によって同時進行されています。
異才能クリエーターの誰かが風邪をひくことさえ許されないくらいなのです。
誰かがいう、「風邪で休んでいるヒマ等ない」過酷な共同創作活動のようです。

 一九世紀に圧倒的な才能と創造力で、劇場設計・作曲・演出・衣装デザイン・舞台デザイン、初演の指揮も、たった一人でこなしたスーパー・マルチ・タレント(才能の意味)で《総合芸術家》の頂点に立った天才リヒャルト・ワグナー。オペラを映画のように自然な表現にかえた『楽劇』まで創造した歴史的、驚異的な偉業で名を轟かせた天才ワグナーです。
ワグナーの最高傑作のひとつ北欧神話『エッダ』から題材をえた楽劇『ニーベルゲンの指輪』三部作(前夜祭付三部作です。一日一作上演の四部上演で四日間の超大作です)は、『指輪物語』を観たり読んだりした人なら氣にいるはずのクラシック音楽で四日間かかる最長ミュージック・ドラマです。
 その初演で(作曲家にとって初演は審判の日です)、テノール歌手が三日目に風邪で休んだため休演で四夜連続上演がならず五夜になってしまいました。
ちょっと前まで「風邪を引いたから会社を休みます」の《言い訳》は、企業の管理職側からは、「自己管理が出来ていない」とみられていました。
近頃は、自己管理の〈健康管理〉も問題なく出来る人が増えているようです。

 ロマの血を受け継ぎロンドンからハリウッドに渡り映画の黄金期を築いたチャールズ・チャップリンも、脚本・演出・演技指導・作曲・主演・監督と、何役もこなし毎週のように《短編どたばた喜劇》映画を撮っていました。(三日に一編説も)時間管理どころか「殺人的スケジュール」をこなしていたチャップリンです。
ワグナーやチャップリンは、一人で何役もこなすことが出来る時代に生まれ活きた天才で、二十一世紀の今は、マレなやり方とみなされます。

 現代は、作業の細分化、分業化が進みそれぞれに組合まで存在し時間管理を含め、さらに厳しい管理社会になっています。
ハリウッド映画の製作会社にとっても最重要である時間管理は、異才能クリエーター集団の誰かが風邪で休み共創芸術活動に一日穴をあければ数万ドル単位でロスすることになるからです。
 かつての芸術家たちのように氣が向いたらやる、は通用しません。
《共創芸術》では、やりたくてもやらせてもらえない出来ない時代なのです。

 例外があるとすれば芸術の世界にも電子化という技術革新が押し寄せ、様々なソフトとインターネットの恩恵で個人が世界に向けたメディアをもてたことです。
飛躍的に個人の才能を思う存分、発揮できるツールが整い、数々の名作がパソコンの中から世界に情報発信できるようになったのです。
そこに情報化社会がもたらしたパラドックス、マクロ的なマスに集約されないミクロ的な《個》が再浮上する環境を生み出せたのです。
(マクロの宇宙を論じる古典物理学とミクロの波動を論じる量子力学のように)
二十一世紀にワグナーやチャンプリンのような人が、また現れてもよい環境が整ってきたのです。(アート・ルネッサンス・テクノロジーと名付けましょう。ART)『創造力の根っこ』がみえてきます。

 時間にがんじがらめの環境で、ヒット映画を創り続けるS・スピルバーグ。
才能を思う存分に発揮して観客を魅了する映画を創り続けられるのは、天才の個人がなした総合芸術を超え、異才能クリエーター集団による《共創芸術》活動を牽引する創造力、時間管理能力と《指揮》能力が備わっているからです。
ここにも『創造力の根っこ』がみえてきます。

 時間管理を徹底できるS・スピルバーグを超える人がいることも分りました。
それはG・ルーカスとS・スピルバーグの映画『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』で《共演》した主演女優ウィリー・スコットは、徹底した時間管理を要求した「夕方5時までに帰宅すること」ことをS・スピルバーグに約束させ結婚したそうです。
どこの国でも《嫁》に時間管理され、《嫁》には頭が上がらないのが常のようです。夫になったS・スピルバーグはまんざら嫌な顔もせず、そのことを憶いだしながら、笑みを浮かべ答えていたのが印象的でした(同映画メイキング・オブより)。

映画・テレビ・アニメなどチーム・ワークと忍耐の 《共創芸術》の道を選ぶか、個人能力を最大限に活かす《個創芸術》の道に進むか、どちらも選べ、途中で路線変更も出来る今は、《創造力の根っこ》にとって明るい未来を提示していて二十一世紀に生きていて幸福なことと感じるのではないでしょうか。