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清水教授のデザインコラム/連載 -170(07/08/2017)

「デザイナーとは・・・・」

  「先生!デザインって、やはりカタチと色ですね!」 後日、BS-2で放映するのだと言う『ヨーロッパデザイン紀行』、その取材から帰国したばかりだという評論家N氏が来校され興奮気味に話しかけてきた時のことだ。勿論、それが、単なる「形」と「色」という表層のみを意味してのことでないのは放映を見るまでもないことだが・・・。
ただ、この頃はバブル経済が破たんした空白の時代、不況下のデザイン戦略は低価格製品に対抗する「モノづくり」だ。コストカット、スピード感を持って「売れる」であろうモノづくり、「カタチと色」などは過去の産物だと言わんばかりのデザイナーが参入、デザインアプローチの内容が変わりはじめてもいた。そのための理論武装であり、数値的なデータを並べ論理的なコンセプトをつくる。評価する上司や他部署のスタッフに理解してもらいたい確かな根拠をという強い思いがあってのことだ。「何か新しい可能性を!」と求める努力は、いつの時代にもあるもの・・・。同業、異業種など様々な交流研究会が行われてもいた。私も幾つかの研究会にはご招待頂き、企業におけるデザイン活動の現状と問題点などの議論に参加することは、教育の在り方を考えさせられることでもあった。 ここ数年は、アメリカ発だという「デザイン思考」をビジネスの思考法として取り込み、イノベーションをという試みは世界的にブーム化しているようだ。
ただ、「デザイン」「デザイン思考」は、各国の言語的な意味解釈の差異も感じるものがあり、それぞれの問題意識の「テーマ」や「目標」であり、イノベーションの内容と質的レベルも当然異なるものになるということだ。
様々に提示されているキーワードの「デザイン思考」「突破する」「ドブリン=意味のイノベーション」「もうひとつの可能性をスペキュラティヴ“思索”する」などなどの手法はデザインプロセスの中にあり、テーマによっては既に実施されていること。 優れたデザイナーの思考法という断りは、デザイナー独自の資質、能力や体験差が強く影響すると考えれば、誰でもが等しく望むイノベーシヨンを生み出すことにはならない。 なにより繰り返し試みる忍耐力と思索的経験を経て数年後になるのかも・・・。
とにかく、軽視されがちだった我が国のデザイン活動。問題はコストカット同様に、デザインアプローチの時間を安易にカットしていたことだろう。 人の生き方、豊かさを極め、目的用途に的確に答える機能性を魅力的でユニークな「カタチ」を創り、鮮やかな「色」を具現化する。さらに、ブラシアップすることの重要性を理解できないリーダーやスタッフがデザインの質を左右し決定していたということだろう。我が国のデザイン界の後進性が自在な発想を抑え込んでしまったのだとも言えるからだ。 とにかく、「デザイン」は国や地域、そして生活する人々の世代によってもその意味は異なるが、デザインがもつ「感性」「豊かさ」「遊び心」などは未来生活に向けての重要な発想源となるもの。究極的にプロダクトデザイナーに求められるのは、いまも「カタチ」であり「色」なのだと思う。そのための手法、デザインプロセスには、時代を映す様々な条件を自ら咀嚼し解決する繊細な感性が、深い思索が要求されることになる。
                          (2017/8・5記)
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メモ:
:とはいえ、イノベーションが理想的な環境と条件の中でしか生まれないという話ではない。あの、アイホーンのジョブス氏や掃除機のダイソン氏、LEDノーベル賞の中村修二氏などにとっても例外ではない。ジョブス、ダイソン氏は自らその場を作り、事前のデータに依存しないこと、自らがアイデアを練り、極めていること。中村氏は独善的、闘争的だが職場の常識を拒否し自分の場と時間を獲得し、絶対的な「モノ」をつくり上げている・
:「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」に「Art(芸術)」を加えた「STEAM」の教育概念の中核である「クリティカル・メイキング(批判的ものづくり)」の実践は、問題解決としてのデザイン思考に、問題提起としての「アート思考」を加えて、学生たちに多様で難解な課題を乗り越えさせること。
:何よりデザイナー能力の問題―人は限りなく資質や能力差がある。好奇心の対象―観察の内容レベル―アート、ビジネス、エンジニア成分の比率―テーマ次第で強調すべき比率アート系―デザイナー テーマによってもアプローチの内容方法は異なる。「一体何が、これからのデザインやアートになるの?」―テクノロジーと人間の共生―その未来社会・・・
:カタチ―眼で捉え、手で触れものとの対話(眼に見えない「コト」は形に読み込まれている、そのことを読み取る) :色―感性的、感情的な生活に潤いを与える、華やかな変化、彩り、楽しさ、遊び心、美意識、識別記号。
:サービスの開発には常識を突破したアイデアが、心を揺さぶる商品を生み出す……固定観念を覆し、生活を一変する斬新な製品! 企業や組織にアイデアが多すぎて迷いがちな時代に、新たな開発手法「意味のイノベーション」を。
・HOW(手段)でなく、WHY(目的)から・ユーザーの意見でなく、自分のアイデアから
:問題解決だけがデザインではない。
:私たちが直面する課題の多くは解決不能?これらを克服する価値観、信念、考え方を変えること。アート、小説、イラスト、写真、映画など、あらゆる領域を引証し答えではなく、問いを。解決策ではなく、討論を。利便ではなく、意味を。市場ではなく、社会のために。可能性をスペキュラティヴ“思索”する。新視点を「もうひとつの」デザイン。
:「意味のイノベーション」―1990年代から世界のイノベーションを牽引してきた「デザイン思考」では<突破>できなかった壁を崩す新たな手法?