所属していた奨励会の「研修会」でのこと、「この子、最年少プロになるって・・・」。会の世話役がまだあどけない藤井少年を指しての耳打ちに、周辺の大人たちが失笑していた。もちろん、馬鹿にして笑ったわけではない。身近にいる神童や天才と言われている少年達を見てきたものにはもう限界なのではと思う常識からなのだ。
プロ最初の対戦相手となった加藤一二三(77)九段は、14歳7ヶ月で、プロ入り最年少記録を保持し、神武以来の天才とも呼ばれていた。
谷川名人、羽生三冠など世間を驚かせた赫々たる天才棋士ですらその記録は破れなかったからだし、さすがに「あり得ない!」と思ったことだろう。しかし、そんな常識を打ち砕いたのが、その少年だったのだ! 史上最年少のプロ棋士が、それまでのホールダーで最高齢もある加藤九段を下し快進撃を続けている藤井聡太14歳2ヶ月だったのだ。デビュー後の公式戦連勝記録は前人未到の29に伸ばしており、対局のたびに新聞やテレビで大きく取り上げられてもいた。
これまでに天才といわれていた谷川浩司九段、羽生善治3冠にも匹敵する資質とも言われ、50年に1人。100年に1人の逸材なのだともいわれて・・・。 小学低学年から取材してきたという将棋ライター鈴木宏彦氏は「藤井四段の才能は、プロ棋士として公式戦で渡り合うことでさらに磨かれ、手を重ねるうちに相手が自ら崩れる。こんな凄い将棋を指す14歳はいなかった」と。
「将棋の場合、才能が遺伝するケースは少ない・・・」。「谷川、羽生、藤井に共通するのは、親が将棋をしなかったこと。将棋ができる親が子供に練習を強制し、やる気を失わせることはままある・・・。3人とも出過ぎない親だったのがよかったのでは」と鈴木氏。
その急激な成長ぶりは昨年の6月、コンピューターソフトを使用して将棋の研究を始めたという頃からだろうか・・・。「序中盤にも隙がなく、鋭い攻めの将棋が指せているのはその成果が出始めているのだろう」とも言う。
それらの藤井効果は社会現象に・・・。最近では子どもの教育にも将棋が適しているのではと盛り上がり、中高年はあの並外れた「集中力に学びたい!」のだとか。藤井四段と同じ“中学生で棋士”デビューの歴代最多の97タイトルを誇る羽生善治三冠(46)は、「すごい人が現れた、今の藤井さんはかなり完成されている、私の時とまったく違う・・・」と。非公式対局ながら絶対王者から大金星をあげただけでなく、手放しの賛辞まで贈られていた。
「まさかここまで連勝するとは‥‥」。無視できない新人の参入にはベテラン棋士をも奮い立たせることに。藤井四段の将棋を徹底的に研究するプロたちのコンピューターAI分析との戦いでもあると言うことだ。
30連勝をかけた7月2日(am10時千駄ヶ谷・将棋会館)の若手・実力者だと言われる佐々木勇気(22)五段との対局は、都議会選挙開票速報と重なり刻一刻、報道されるなかでpm9時31分、101手で敗れた。「このままでは・・・」という先輩棋士の危機感が一矢報いる形で決着したのだ。AI時代らしく藤井4段が指したこれまでの1,568手、その全てが分析されており、その特徴、欠点を突く戦法が研究されたということもある。そのことにも、また研究対応をせねばならないこと・・・。最年少プロという前人未到の記録は達成された。新しくAI思考時代の棋士として大成するのはこれから・・・期待し見守りたい!
(2017/7・3記)
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メモ:
・トップ棋士でも頭を悩ませる難問の「詰将棋解答選手権チャンピオン戦」を、小2にしてズバズバ解いていった藤井。小6から中学2年まで3連覇。特に小6の時は、参加者で唯一の全問正解という優勝だった!

・毎日学校から帰ると新聞を開く。1面を見た後、社会面、将棋欄に目を通し、ページを前の方にめくっていく。豊洲移転問題、アルコール依存症などの連載、特派員のコラムなど海外の人々の日常がわかり興味深いことだ。
初めは子供新聞、小学4年頃から自然と普通の新聞を読むようになった。インターネットとは違い、紙の新聞は様々なニュースが隣り合わせに載っていてどれが大事なのかを自然と考える。多様な情報を読むことは将棋の手を、局面を読むことに共通するのだともいう。一手、動かすために数時間も思考する、先方の思考時間を待てる忍耐力、プロが対戦するという数十時間を緊張状態と平常心で持続できることも極めて重要なこと。

・「無」を「有」にするというデザイン思考も人間としての苦悩、苦痛を実感する過程こそが意味あるもの、重要なのだと思ってもいる。藤井少年は、これまでの14年2ヶ月、日々の生活・成長過程で体得しているように見える。名古屋大学付属中学には塾に通うことなく合格、得意科目は数学や体育、苦手は美術・・・なのだと。(好奇心)(読解力)(思考力)(判断力)(決断力)(集中力)(忍耐力)(持続力)(健康な体力)

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