日芸工業デザイン科のデザインで大好評だったロボット君

東京モータショー2005に出品した慶応大学電気自動車「エリーカ」
*16名いる専属コンパニオンは全て慶応大学の学生!

2006年、環境NPO:Eco Smartを設立して早いもので3年目に入りました。現役サラリーマンのため活動は休日中心で、インターネットで環境問題に視点をあてた“主張と提案”からスタートしました。活動していく中で、環境問題の解決策は幅広く存在することがわかりました。環境問題の解決!と言うと堅く難しいイメージがありますが、身近な行動としては、家で「電気をこまめに消す」「水道の水を出しっぱなしにしない」など、手軽に誰でも簡単に実践できます。

■1「企業の環境研究」
企業がどのように取り組んでいるか!を直接知りたいと思い、環境展示会などによく出かけました。会場には、各企業のブースがたくさんあり、真剣に取り組んでいる姿がありました。環境問題はテーマによりますが、内容が地味な分野と華やかな分野とがあり、注目度に大きな開きがあります。そんな中、各企業のブースで説明員と話してみた結果、彼等の悩みが浮かび上がってきました。つまり環境ビジネスを狙った企業研究も、どちらかといえば技術優先で進められているため、試作品にデザインが考慮されず、消費者からみてインパクトが低いのです。大手企業は「デザイナーがいても、自分の環境研究に自社のデザイナーを投入できるとは限らない」との意見も出ました。また中小企業などは、「自社にデザイナーがいないから」、また「研究費節約のためデザインに手が回らない」などの意見もありました。

■2「大学の環境活動」
展示会は企業展示ブースが中心ですが、各大学で環境問題に関心のある大学がゼミ単位でブースを出していました。それぞれの大学のブースで、彼等の主張を聞きながら、いろいろ話し合ってみました。大学のブースはどちらかと言えば環境理論が中心で、実践的取り組みは少ないようです。その中で慶応大学が、地域の子ども達とゴミ拾いをしたり、子ども環境教室を開いていたのが印象的でした。
私の地元横浜(港北ニュータウン)でも、武蔵工業大学が地域の学校や環境NPOと連携して活動しています。結果、地域住民は活動内容を知っています。武蔵工業大学は環境情報学部があり、学部を挙げて地域と連携活動を推進しているからです。地域住民にも感謝され、学生からも“大変有意義”との意見がたくさんでています。

■3「新規事業の視点」
たくさんある展示会の中で、環境やIT分野を新規事業として取り組んでいる企業や大学の展示会がありました。各企業とても意欲的なのに感心しました。今は有名なIT企業も、最初はこのような展示会の小さなブースから始めたのだろうと思いました。
この中に、日大芸術学部工業デザイン科の肥田教授と産学協同研究を成功させた、近畿大学大学院ロボット研究チームの小さなブースがありました。私がブースをのぞいて声をかけてみました。すると、すぐにこちらの考え方に賛同してくれ、合意を得ました。技術優先の近畿大学チームと、デザイン力のある日大工業デザイン科チームが力を合わせて魅了的なロボットを作るプロジェクトです。最近完成したロボット(写真参照)は、デザイン方面の展示会にも出され、「日芸工業デザイン科の名をPRするのに大いに役だった」と聞きました。また、このような学と学のプロジェクトは担当教授の能力や人柄も大きく影響しますので、中心となった日芸工業デザイン科の肥田教授の人柄・センスが成功の隠れた大きな要因と思います。

■4「東京モーターショー」
東京モーターショーで、各企業・大学の展示ブースを見た時もっとも印象に残ったのは、慶応大学が環境貢献を大きくPRしている電気自動車「エリーカ」のブースでした(写真参照)。この展示は群を抜いていると思います。その理由は日本最大の展示会「東京モーターショー」に過去も含め2度展示しているからです。 「東京モーターショー」は“おばけイベント”で、世界中の自動車業界VIPの来場だけでなく、自動車関連企業から専門家がたくさん集まります。「環境展が日本を代表するビックイベントに成長してきた!」と言われていますが、それでも期間中の来場者は最大でも15万人レベルです。東京モーターショーは140~150万人と一桁違うレベルです。その超ビックイベントの中で、慶応大学だけが専用ブースを設けて電気自動車を展示しているのです。研究テーマ(電気自動車)と慶応大学のブランド力が相乗して大人気でした。30社の協賛企業の力も大変大きいと思います。余談ですが、慶応大学環境情報学部の女子学生が専用のコンパニオン制服を着てずらりと並べ、別の意味でPR効果抜群です。

■5「慶応大学産学協同研究」
この慶応大学の電気自動車「エリーカ」の産学協同研究のスタイルは、他大学と違うところがあります。基本形態は「大学+民間企業」で特徴はないのですが、大学の研究代表が2名いることが大きな特徴です。それは、ハード中心の「技術担当教授」と、ソフト中心の「民間企業に長く勤めた文系教授」(民間企業との橋渡しや電気自動車のビジネス性を研究する)で推進しています。このスタイルは大変な威力を発揮する!と言われてました。なぜか?それは私個人が製造業勤務だからよく分かるのです。“物作り”には、開発・製造・販売の各分野の叡智結集しなければ商品化は難しいです(単なる技術研究やデザイン研究だけなら必要なし)。慶応大学の開発研究形態は、うまくポイントを踏まえた方式です。ちなみに、90年代アメリカのシリコンバレーで起こった「大ITブーム=大成功」も、優秀なエンジニアのアイデアに、経営の専門家や投資家が参入して推進したので大成功しました。“この方式”は定番化されています。

■6「最近の傾向」
話題の多かった産学協同研究も一定の時間が経過し、変化の兆しが出てきました。展示会などで各企業担当者と話しあってみると、ブームとしての産学協同研究は終わり、企業側が明快な結果を求めるようになりました。別の言い方すれば、結果の出せない大学との産学協同研究は求めない姿です。この民間企業の傾向をどう評価するか!は別にして現実の姿のようです。
最新のNUDN(2005・12・30)に掲載されているように、「デザイン系大学ランキング」における日芸工業デザイン科の成績は大変すばらしいものがあります。清水教授・肥田教授などの教授陣の大健闘、学生のコンペ受賞・展示会出展・産学協同研究の大成功・・・・・・など日頃の関係者の努力の結果です。OBとして大変うれしく思っています。

■7「今後の提案」
私なりに過去1年の活動の結果として、日芸工業デザイン科の更なる大発展をめざした一つの提案をしたいと思います。それは、工業デザイン科単独の共同研究方式(ロボットデザインを中心大きな実績を出している)とは別に、「オール日大の力を結集したプロジェクト」を日大本部に働きかけることです。
テーマはいろいろ考えられますが、日大が伝統的に乗物系に強いので自動車を薦めます。具体的には「ソーラー乗用車の産学協同研究」です。理由は、外部からエネルギー供給が必要な電気自動車に対し、エネルギーの自己完結型であるソーラー乗用車が総合的に良いと判断しました。もちろん環境にも大変良いです。理工学部と工業デザイン科を中心に経営学科など総合大学日大の良さを最大限に生かすシステムです。産学協同研究ですから、外部企業も必要です。また、OBもボランティアで積極的に応援するスタイルです。

■8「最後に」
日芸工業デザイン科の先生で、日大理工学部・桑沢デザイン研究所・イリノイ工科大学を出て、GE社チーフデザイナーからの役員まで上りつめた故岡田朋二先生は、「工業デザインは総合力が必要なので、総合大学で勉強した方が、すばらしいデザイナーがうまれる!」が持論でした。私は、この言葉を実社会に出てはじめて理解しました。この岡田見解を、もっとも明快に実践しているのが慶応大学の産学協同研究「エリーカ」なのです。工業デザイン科まである日大の総合力を最大限に生かした「産学協同研究:日大ソーラー乗用車研究」をスタートさせ、2010年までに実車完成まで到達させたいものです。かつての「理工学の人力飛行機」は日大の看板でした。その技術蓄積から風力発電機のベンチャー企業が生まれました・・・・・・。工業デザイン科が加わることで、それに負けないくらいの成果の多い「継続的な産学協同研究」にしたいものです。
研究室・学生・OBのみなさまの更なる活躍を期待して最後の挨拶にしたいと思います。
尚:私個人の勝手な意見ゆえ、みなさまからの反論・感想などがあると思いますので、下記にアドレスにお寄せ下さい。
2006.01.19

・環境NPO:Eco Smart:加藤 均
・Eメール:yta114@yahoo.co.jp
・URL:ecosmart.web.infoseek.co.jp/e

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日芸工業デザイン科のデザインで大好評だったロボット君
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●東京モータショー2005に出品した慶応大学電気自動車「エリーカ」
*16名いる専属コンパニオンは全て慶応大学の学生!
■2005年「もっと活躍します!」(12/25/2004)

             加藤 均(S47年度卒)本田技研工業

■2004年の活動を振り返って

昨年から始めた環境NPO:Eco Smartは、大きく2つの目標を掲げました。
1:最大目標はホームページによる「Eco Smart流」環境問題のPRです。始めたばかりの無名団体のヒット数は、年間300~500と言われる中6000を超え、大成功でした。これは友好的な大学や他のNPOが、善意でリンク集に掲載してくれたおかげでした。あらためてお礼申しあげます。
2:次は“アナログ的環境実践”です。主に、新環境商品の実現を目指して、企業と大学の「産学協同研究」の橋渡しをしました。数社橋渡しをしましたが、お互いの思惑と条件が充分に合わず、やや足踏み状態です。この方式の難しさを実感しました。
また、「横浜カーフリーデー2004」の参加です。有意義なイベントでしたが、仕事が忙しくパネル参加のみとなり、やや残念な結果となりました。

■2005年の目標
昨年同様、Eco Smart精神「ゆっくりがんばろう」が基本ですね。ホームページが軌道にのったことから、今年は「地域活動(横浜)」を最大テーマと考えています。
1:地域活動、具体的には 「横浜カーフリーデー2005」の参加です。 その中でEco Smart発の具体案の実現と、イベントへの直接参加を目指します。また、地域活動で、交流の輪を広げ、その中から新しい活動テーマも見つけたいと考えています。
2:昨年からの「環境商品産学研究」の実現(1件以上)を目標とします。企業だけでなく、新規大学の開拓も視野に入れます。
3:ホームページヒット件数で、目標値:12000~15000と、初の5桁実現を目指します。
以上3点を主要テーマとして活動して行きます。また、みなさまからご好評の最新情報欄も順次追加します。よろしくお願いします。

■最新情報:ビートたけしと「東京芸大横浜進出」

今回のニュースは大変大きな話題となりました。この話題には私なりに思うとこがたくさんあります!まず、東京芸大という官学系芸術大が、ビートたけしという映像学を全く勉強してないが、大変な才能のある、“おもしろ芸人”を、専攻長兼務の教授=最重要ポストにつけたことです。見方によれば革命的な人選です。いくら国際芸術祭に立派な成績を残したとしても、芸術系学歴社会の頂点に立つ東京芸大が指名したことは大変画期的なことです(ビートたけしは明治大学中退)。
じつは、私はビートたけしの人選以上にビックリしたのが、あの芸大が明治以来の伝統ある上野を出て、横浜に進出したことにあります。この決定の詳細は公表されてませんが、6つの視点が考えられます

■6つの視点
1:横浜には歴史的遺産・文化的遺産がたくさんあり、上野や東京とは違う刺激がうけられる。
2:横浜市の未来ビジョンに“横浜ハリウッド構想”(正式には文化芸術都市構想)があります。自治体としては明確な未来目標で、映像分野に大変な力を入れています。そのコアとなるのが映像系大学の進出と思います。
3:私も横浜でNPO活動をしているから分かるのですが、早くから撮影などに協力的なNPO団体(有名)があり、市街地での映画・TV撮影時の手続きを代行してくれます。そのため、関係者には大変評判が良いようです。(市街地撮影は、警察や自治体などに許可手続きがあり、大変面倒な作業と言われています)
私の住んでいる港北ニュータウン(横浜)でも、新しく近代的な空間や建物がたくさんあり、“巨大スタジオ”と呼ばれるくらい撮影が多く行われています。
4:横浜市は“横浜ハリウッド構想”に合わせて、芸術系大学誘致に大変力を入れてました。その条件の一つとして、市内中心部にある文化の香り高い歴史的建造物を改造して、安く提供することが決まっています。
5:横浜には以前からフランス映画祭があり、映像文化の発展に力を入れてます。まだ3回目ですが、横浜学生映画祭なども始まっています。11月に行われた横浜学生映画祭には、有力ゲストが多数出席したようですが、芸術系大学の中で唯一芸大教授の姿がありました。
6:率直に言って、映像系大学院を上野に創っては、明治以来の芸大の伝統に束縛され、従来のカラを破る大胆な改革や斬新な表現ができにくい!とう事情があると思います。
また、ただ単に場所がなかった!との見方もありますが、横浜以外に芸大のホームグランドである東京都の台東区が立候補していましたから、大方の予測を裏切って横浜進出となりました。

■アメリカの大成功
これを、別の視点でみますと、90年代アメリカの大ITブームを思いだします。この大成功要因は、たくさん語られ、定番化されてますが、再度要点をまとめてみます。
・シリコンバレーという特定地域(自治体)がコアになった。
・シリコンバレーにあるスタンフォード大学が中心になり、企業家を支援した。もちろんIT起業を狙う学生もたくさん集まりました。政府も大学に補助金を出したと聞いています。スタンフォード大学は、起業を志す技術者に経営のアドバイス。また、技術者の専門外技術分野のアドバイスもしました。
・起業した人に対して、資金援助するアントレプレナーなども沢山集まりました。
・もちろん、たくさんのNPOが、多方面かの支援を行いました。起業に対する専門的な支援とは別に、国内や海外から初めてシリコンバレーにくる起業家に対して、生活情報・地域情報・専門情報などを中心に、地味だが大変ありがたい支援もたくさんしたようです。
結果、大学・自治体・NPO・民間投資家などが、予想以上のシナジー効果を発揮し、大発展する素地をつくり上げました。それまで、一般の日本人にはハーバート大学は知っていても、スタンフォード大学を知らなかったのが、一躍有名になり、日本人の誰でも知っているアメリカの超一流大学となったようです。
一時の派手なITブームは終わりましたが、この活動の延長としてマイクロソフト・MAC・DELL・オラクル・サン・・・・・・・など世界的なIT企業がたくさんうまれたのです。創業者は現在でも、みな40代の若さです。IT産業はアメリカ経済の中心となっています。
つまり、90年代アメリカの大ITブームの要因は、起業家・自治体・大学・NPOを含めた関係者が一体になって活動したことにあります。

■石原知事の構想
東京都の石原知事も産業振興分野で、新しい取り組みをしようとしているようです。石原知事は東京の中小企業の技術力を高く評価しています。特に今生き残っている中小企業は、平成大不況を切り抜けた企業達ですから、特定分野で強い技術力があると思います。ただ、それだけでは今後生き残れないとも考えているようです。その結果、中小企業の未来を考えると、一つの答えが出ると思います。
必要なことは、自前の高い技術力を活かしながら、“有力な商品を産み出す力”にあります。それは、自前技術+他の技術+デザイン(商品企画も含め)で、恒久的な“有力商品開発システム”をつくることにあると考えているようです。これを実現するには、シリコンバレーの大成功と同様、複数の団体や機関が協力しないと、実現しないでしょう。もちろんコアとなる大学が必要になります。
だから、東京都立大を首都東京大学に大改革するとき、技術分野の産学協同研究に力をいれようとしているようです。そして、いずれは、工業デザイン科なども新設して、都内中小企業の優秀な技術+他の優秀な技術(大学発!)+工業デザインの組み合わせよるシナジー効果期待しているようです(すばらしい商品がどんどん生まれる!)。
また、都知事の強い意志で計画が進んでいる新銀行構想ですが、実現したときには、優秀な新商品企画には融資もつくでしょう。

■新天地の新学部
大学改革で大成功した慶応大学改革の最大ポイントは、新しい理念の新学部(環境情報学部・総合政策学部=SFC)を、既存キャンパスから離れた所に、あえて造ったことにあります。以前SFCの関係者から直接内緒で聞いた話ですが、「やはり三田(東京)では伝統的な保守派の力が大変強く、新しいことにトライできないため」と言ってました。でも結果として、SFCの大成功に刺激され、既存の学部も大学改革の波が広がって“改革の慶応”の名声を得たことになります。外からみると、芸大の横浜進出も同じスタイルに見えます。

■今後の方向性
以上の例から、未来型産業活性化プランのポイントは、大学・企業・自治体・NPO・投資家などによる連携プレーをコアにしたやり方が、現時点では最良と思います。そのコアは「特定大学と特定自治体の“結婚”」でしょう。
今後、デザイン分野での、大学(特定大学)と自治体(横浜市)の“結婚”が望まれます。
その理由、今までの環境商品は技術優先でした(私が現場の人たちと意見交換したところ、「技術はできたが商品展開が苦手で苦戦中」の企業が多かった)。今後は消費者向け商品(デザインが大変重要)に力を入れることで、環境分野の更なる広がりができると思うからです。
Eco Smartは小さな環境NPOですが、実現に向けて、多少なりとも応援していきたいと思っています。

独断と偏見による手前勝手な意見をたくさん書いてしまいましたが、反論も含め、皆様のご意見をお待ちしています。

・環境NPO:Eco Smart Life Japan
・理事長:加藤均
・Eメール:yta114@yahoo.co.jp
・http://ecosmart.web.infoseek.co.jp/e

★尚、同文は上記URLホームページにも掲載されています。

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