アイデアスケッチがすすまない・・・。
最近、特に演習テーマにアプローチしている彼らの手元を見ながらそう考えることが多くなった。
明らかに何かが足りないからだろう・・・。
テーマに取り組む意欲? 解決するに足りない情報量? その場でノルマをやりとげねばといういう目的意職? 雑音に惑わされない意志力?
勿論、いずれも足りない?
しかし、ここではスケッチ力の不足が問題だろう・・・。

スケッチ力はデザイナ資質の要素としてはいまも大きい意味を持っています。
スケッチが上手いということ、デザイナーとして要求される思考能力の多くを備え,視覚的に見せてくれると言う効果もあってのことでしょうが・・・。
デザイン思索のプロセスを自他共に視覚的に見ることが出来る手法であるからでもあるのです。
そして、そのアイデアスケッチの基本となるものがデッサン。
基礎教育課程、デッサンに対する取り組みは目標を見据え、最も意欲的で集中したものであるはずだが・・・。
入学前からの予備校通い、やや食傷気味?とも聞き及んでもいる・・・。
「デッサンなんか、もういいよ!もう十分!」などユメユメ思っているわけでは無いのでしょうが・・・。

「デッサン」はデザイナーのみならず画家や彫刻家、あるいは建築家など造形活動の基本を「かたち」におき、共通するスキル習得のための訓練であるといえるもの。
その意味ではデッサンを繰り返すことは極めて自然な創造性修練の行為でもあると言えるものです。
しかし、今ではその専門性の要求から?ややその内容に差異が生まれ、目標も限定的、必要最小限のものになっているのではと思える。                                     何よりもその意味や目標が見失われているのではとも見えるのです。

デッサンについて
デザインを志すものにとって「形」を読み取る訓練は至上の目的となるものでしょう。
日頃から絶えずあらゆるものの形に興味を持ち”観察する”という心構えが必要です。「眼で観察」し、「頭脳の指令によって手の動きに変える」という、この一連の作業を繰り返すと言う訓練、そして、何よりもその「観察眼」を研ぎ澄ますことが重要でもあると言えるのです。
その繰り返しが、ただ漫然と眺めているだけでは気付くことの無かったことに気付かせ「思索する心」を育み、深く記憶するものになるものです。
「見た結果」、「描いた結果」は「意識した見方」、「見る技法」、「視覚の法則性」をも体得するものになるのです。
自然物、人工物の世界にも我々の気付かない無限の造形があり、その法則性があるのです。フイールドは無限の示唆に富んだ教師でもありのです。

●デッサンのすすめ
何はともあれ、鉛筆をとり身の回りにあるもの、興味を引いたものを気軽に描き「眼と手」を慣らすことからはじめましょう。
対象物を見たとうり、見えたとうりに描き写すことを意識しましょう。
しかし、うまく描けない、見た通りに描けないと思うとき、その理由を考えてみる事が重要です。
自分が描いたものと対象物を並べて比べる。
違いを、微妙なずれを見つけるのです。
また、同じものを描いている人との比較が出来るならば、うまく描けなかった理由のいくつかが明らかになるはずです。
そんなささやかな訓練が、形のプロとしての厳しい「眼」を育むことになるのです。
自然物、人工物を問わず興味深く「観察する」習慣を持つ人は何よりも資質に優れたと言える。
冒頭、彼らの手元に不安を覚えるのはこれらの理解不足、訓練不足!ここに発想力不足の大きな原因があると考えています。

デッサンーー「形」を捉える
・ものを見る「心」、「観察眼」を養う
・自然物、人工物の「形」の成り立ちを明らかにするーー形態、構造、仕組み、質
感、規則性、輪郭線、部分の結合形、細部の変化の把握、異材質の表現
・ものの「形」を明瞭に観察できる光源ーーものの明暗、陰影、投影、反射などの十
分な理解をもつて形状観察を試みる
・「眼」視知覚的な法則性の理解ーー錯視、空間・線のパースペクテーブ
・紙面という空間の把握ーースケール感、比例関係、構図、収まりを考える美意識。
・自然物・人工物の美醜の判断力を持つ(識者、専門家の意見も参考に)することも・・・。
・紙質を選び、筆記具を選ぶことは描くことを楽しくさせるもの。
・その他

●アイデアスケッチのすすめ
アイデアーー誰もが気が付かなかった事に気づくことはそう簡単な話ではないはずです。
発明、開発にも相当するこの作業は理論的、科学的に学べば得られると言うものでは無いだけに、ただひたすら時間を掛けると言うことになります。
「視点」を変え「捉え方」を変えての思索のアプローチ、アイデアスケッチを紙面に描き連ねることになるのです。
勿論、ラフモデルと併せたものがより望ましいともいえます。
わが国の掃除機を一変させた、あのサイクロンの掃除機。開発に5千余点の試作を重ねたと言うダイソン社長のようにエネルギッシュに思索し、試作を重ねていく姿勢に見習うべきものは多いのです。
また、当然のことながら独創する事はリスクを伴うもの・・・。
十分な確信を持つ努力、そして決断する勇気が必要でもあるのです。
デザイナーダイソン氏の生き方、デザインアプローチはまさに我々のお手本となるものでしょう。
(29.OCT.2004 記)

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