「あなたがお茶を飲み、空を見上げ、となりの町へと
移動している間に、森林が消失し、氷河が崩れ落ち、
大量の資源が消費されている。
この世の中のあらゆるものは、
とどまることなく変化している。
その巨大な変化を、1秒で見てみる。
1秒とはまばたき1回、まさに1瞬。
私たちにとって望ましい変化も、望ましくない
変化もある。
ミミズが食べる土の量、飢えで亡くなる人の数、
砂漠が拡大する速さ、全ての数、全ての変化が
今この瞬間のあなたへとつながっている」

駅前の書店、「あっという間に・・・」と言うキャッチコピー・・・。
黄表紙に黒オビ、素朴な本の装丁が妙に気になった。
『1秒の世界』が書名らしい・・・。
ページをめくり冒頭の1文に視線をとめた。

1秒・・・。
まさに、まばたきする、その1瞬である。
「あっ!」と言う、その1瞬にある地球の変化、つまり、1秒と言う単位で切り取った数字を示したものだ。
1秒、その瞬間に、この地球上の人口は4・2人が生まれ、1・8人が死んでいるのだという。
つまり、1秒間に2・4人が増える計算でもある。
「ふうぅーん・・・・」と、いう感覚だろうか?
1分で144人。10分で1,440人・・・・。
しかし、1時間で8,640人、1日にすると20万人余が増へていると言う計算だから・・・。
「年間にすると・・・?」
もちろん、一面的な推論にしても、この地球規模の数値には驚くばかりだ。
20世紀のはじめに16億人だった人口は1昨年(2003年)には63億人、2015年には70億人になるという。
もうかなり前になる、この地球環境に生存しうる適正人口は15億人位ではという話を聞いたことがある。
それからの年月を考えても、今はまさにひと1人が生きること自体が環境負荷、そのものでもある。
我が国を含めた先進国の少子化に対して途上国の増加は、今世紀の終わりまでも止まらないだろうとも・・・。
一方、1秒間に0・3人が餓死・・・。
つまり、4秒で1人が餓死していることになる。
1分で17人、1時間で1,000人が、1日に2万4000人、1年には864万人が餓死しているのだという。
飽食社会の中にまどろむ日本人にはなかなか実感し難い数字だろう・・・。

地球の生態系を支える天然の森林もまた、テニスコート(261m2)20面分が消えているのだとか。
たいして、緑を取り戻そうという気運はあっても、植樹はわずかに5面分に過ぎないらしい。
さらに毎秒、1,900m2、世界各地の農地や牧草地などが砂漠化している。これは年に四国と九州を合わせた面積にも相当した60,000km2の面積で、刻1刻と砂の大地に変わっているのだ。
特に中国の砂漠化は速く、毎年2,460km2のスピードで広がっている。
1秒間に78m2、畳48枚分に相当する。

グリーンランドの氷河が1,620m3溶け、毎年、510億m3.この量は日本最大の湖、琵琶湖の1,9倍に相当する。つまり海面の水位が上昇し世界各地の島や陸地が水没することになるのだ。
二酸化炭素の排出量は390,000m3、体育館32棟分地表の平均気温の上昇は0,00000000167℃上昇。
地球の平均気温は1900から2100年に5,8℃上昇し加速すると言われている。
暖かくなっていいじゃないかと、のんびりした事は言っていられない・・・。
多くの動植物の絶滅を意味しているからだ。

人体は呼吸によって1日360リットルの酸素を必要とする。その必要不可欠な酸素が減少し続けている。カリフオニア大学の研究によれば1993年から2000年まで、年平均224億トンの酸素が減少していると言う。
1秒間に140万人が呼吸する710トンの酸素が減少していると言うのだ!
主な原因は化石燃料の燃焼のために空気中の酸素が消費されていること。更に、森林伐採や海洋汚染によって、酸素の供給源が減っているからでもある。

植物の中で最も成長が早いとされる竹の子は、10ミクロン、1日に90センチ伸びる。1年では7,8メートルに成長する。
そう言えば、自宅と路を隔てて右端にあった竹林・・・。いつの間にか窓の大部分を占めて波打つ様子が見えるようになった。
桜や、紅葉、様々な樹木の領域にまでも侵触していたのだ。
春にはそここに竹の子が生える。
1秒・ミクロン単位の観察をした訳ではないが、日ごとの生長、そのエネルギーには眼を見張ったものだ!

人の住む星・地球・・・。
1秒で見る、その星の変化・・・。
興味からと危機感をもって、その幾つかを拾ってみたものだ。

その星に住む人々の欲望のきしみ、変化の悪しき連鎖・・・。
異常気象、地殻変動、食糧危機・・・。
地球上の各地にある変化に繋がる・・・。
一秒と言う単位で分かりやすく、そして、過激に!
「地球がもし100人の村だったら」そんな本があった。つい数年前のことだが地球規模の話を100人の村に置き換えてみると分かりやすい、と言うもの・・・。
地球を凝縮し、比喩して考えるこの発想は、理解し難い問題や、巨大な数字を極めて分かりやすく、身近な問題として人々に働きかける効果がある。
日常的には知ることも無い地球の変化、意識することもない1秒の世界・・・。

しかし、時には地球を考えてみよう!
ユニバーサルデザインと合わせて、エコロジー問題への対応は、21世紀のデザインとして強く意識せねばならないものだろう・・・。
(Feb,27 2005 記)

<メモ>
「秒」Secondは国際単位系の時間測定の基本単位。
1956年までは平均太陽日=日の86,400分の1と定義され、更に、1956年の国際度量衡委員会では1900年1月1日0時(暦表時)の地球公転の平均角速度にもとずいて算出した1太陽年=年の31,556,925,9747分の1とし、東京天文台が現示すると定義している。
また、1967年より、更に正確を期した測定標準が必要なことから電磁波の周波数を使って再定義し、現在は「1秒はセシウム133原子の基底状態における2つの超微細エネルギー準位の間の遷移に対応する放射の9,192,631,770周期の継続時間」とされている。

『1秒の世界』 山本良一(責任編集) ダイヤモンド社

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