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『デザイン教育雑感』(03/15/2003)

 林 勉 <育英工業高等専門学校デザイン工学科教授>
     <日本大学芸術学部デザイン学科非常勤講師>(S41年度卒)


 卒業してから38年になります。企業(時計メーカー・デザイン部)、デザイン事務所(由良玲吉デザイン事務所)、学校教育(日本デザイン専門学校・育英工業高等専門学校・日大)とインハウスデザイナーからフリーランスデザイナー、デザイン教育と幅広い仕事をしてきました。
現在、日本経済の不振などでデザインを取り巻く状況はよくないが、27年間たずさわってきたデザイン教育について感じるところを少し述べてみます。

 現在の情報化社会は巨大な波となって教育の現場にも打ち寄せている。これが、40年前に我々が学んだ学生時代とは最も異なる事であろう。求めたい情報が素早く入手し、素早くまとめあげる情報手段の進化がある。足を使わず汗をかかず出来上がってしてしまう。
実態として捕らえなければならないプロダクトデザインの考察がバーチャルの世界での考察が多くなってしまった。このギャップが少しずつ増加傾向にあり学校教育現場では当惑している。造形考察を含めて「もの」で考える。これはいつまでも不変だと思う。
近年、幼児期や学童期に「ものづくり」の体験が少なくなっている。デザインを教えると同時にものづくりも教えないと先に進まない。物を造ることで立体を認識し、機構がわかり、材料がわかる。
この「ものづくり教育」の一つの実例があるので紹介します。

20年前から、育英高専の学生と50ccガソリンエンジンを使った低燃費競争に出場する車を制作してきました。
実際に学生1名が乗車し、最高時速60kmで鈴鹿や、もてぎサーキットを走る車を自分達だけで制作するのである。
低燃費競争なのでエンジン等のメカニズムは育英の電気工学科が担当したが、ボデーデザイン及びカウル制作はデザイン科の学生がおこなっている。授業が終わってからの放課後時間や夏休みを全て費やしての制作で、発泡材での原型作成、FRPによる成型など大変な作業である。スケッチ、図面から立体になったときの矛盾点の解決、造形の問題、視界などの車としての機能、ボデーの空気抵抗、など様々な問題を解決しながら作り上げてゆく。
これは、デザイン行為と物づくり行為が合致した恰好なテーマである。そして、苦労して自作した車が大会で完走した直後、感激で涙をながしている学生の姿や、完走できずリタイヤして悔し涙をながしている姿を何度も目撃した。18〜20歳の若者の涙を見ることは他ではなかなか無いでしょう。


 ●石油会社のテレビCMに採用された省燃費競争の車両


                     ●省燃費競争 車両

この様に、実物による実体験をさせる必要を感じ、機会あれば今後も実施したいと思っています。また、感動ができる環境を与えてあげることが必要。今の社会はこの環境があまりにもない。学校教育でもっと導入してあげるべきである。特に、高等専門学校(高専)は15歳から20歳までの学生が学ぶ学校であるが故に、現在の若者に共通していることがある。

以上、高専のデザイン教育を通じて感じた事を書きました。次の機会に続編を投稿します。


                                   林  勉