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★本レポートはNUDNホームページ開設以前の2001年12月4日付けの【NUDNメールマガジン】にてのみ発表されたもので、永らくNUDN「活動レポート」に掲載されていませんでした。今回遅ればせながら改めて掲載させて頂きます。(編集者)
『開かれているデザインビジネスの未来』(2001/12/04:寄稿) (株)クルー代表 馬場 了(s45年度卒) □ デザインビジネスの垣根がなくなってきました。 デザイン会社を経営して21年目を迎えます。十年一日のごとく製品デザインの仕事をこなしてきたように思っていましたが、振り返って見ると仕事の内容がずいぶん変ってきたことに気がつきました。開業当初は伝統的?な料金ビジネスで、クライアントから言われた製品デザインをひたすら消化してきました。最近では容器メーカーのコンビに向け食品を企画したり、直径1ミリのボール型LSIを商品化するために、エンジニアの頭の中にあるイメージを、スケッチに表すことで商品開発のパートナーとして活動したり、機械部品商社と共に、全国に点在する数百社の部品加工メーカーを、ウェッブ上のバーチャル工場に再編成するなど、デザインワークが広がっています。今、一番楽しく力を注いでいるテーマは、新しい分野に挑戦するクライアントの商品開発プロジェクトをマネージメントする仕事です。気がついたら、デザイナー以外の職能の人たちのほうがデザインの可能性に着目し、面白がって「もしかしたら、こんなこともデザイナーはできるの?」などと新鮮な課題を示してくれます。結果的にデザインビジネスを拡大してくれる良き理解者になっていました。インダストリアルデザイナーだから・・・」なんていう窮屈な箍をはめようとする人は皆無です。ただし、デザイナー自身が開発の当事者意識があるという条件つきですが・・・・。 □ インダストリアルデザインがデザインの分母になる? かれこれ7,8年間Gマークの選定審査委員を仰せつかっています。実業の世界でのデザイン領域拡大と連動して、応募対象の門戸も広がっています。5、6年ほど前に工業化住宅や公共性の高い建築物を対象とする「施設部門」を加えたことを皮切りに、デザインを活用した新しいビジネスモデルづくりを対象とした「新領域部門」が設定され、今年度はそこにポスターやカタログなどのグラフィックデザインをはじめTV番組など音や映像も範疇に含めたことで、プロダクト、コミュニケーション、アーキテクチャー、サイン、テキスタイル、ファッション、クラフト、ジュエリー、エンターテイメントなど、ほとんど全てのデザイン分野が関係するようになりました。事業主体者である(財)日本産業デザイン振興会は、その組織名称であるインダストリアルデザインを「産業」と表示しているように、豊かな国民生活を支える産業デザイン(インダストリアルデザイン)は、工業デザインだけではなく、「産業に関わるデザインジャンル全て」と再定義したようです。この定義はデザインの需要家である産業の立場から考えればきわめて自然なことで、デザインジャンルをガラガラポンした「産業デザイン」という立場から、もっと自由に、大胆にクリエーティビィティを発揮しないと、「日本の産業もデザイン産業も未来はないよ」「でもデザインマーケットの扉はいつでも開いているよ」と呼びかけているようで、インダストリアルデザイナーとしては、もうひと頑張りしたくなります。 □ 大学は社会の映し鏡? 日大芸術学部の非常勤講師として3年が過ぎました。そこでは「デザインマネージメント論」という講座を担当しています。広義には「デザインを経営に活かす」というテーマなのですが、ここでは、学生を仮想企業の社員に仕立て、商品開発全体のシミュレーションを行なうことで、企業での効果的なデザイン活動について学んでもらっています。この講座は相互履修制度の対象になっていることから、放送・映画・演劇・音楽・文芸・写真・美術・デザインの総合芸術集団?に加え、経済・商学部など他学部の学生も混じって、プロジェクトチームを組み熱心に「商品開発ごっこ」をやっています。中でも、「商社のマーケティング部門を目指しているから」「出版社で企画の仕事をしたいから」など、デザイン専攻以外の学生が、色や形以外にデザインが本来持っている計画力や創造力に興味を示しています。さらに、チームの動きを観察すると、「デザインをマネージメントするのは、やっぱりデザイナーではなさそうだ・・・・」と言う、ちょっと気になる思いが授業中によぎってしまいます。これも実社会で起こっている現実に酷似しています。 □ インダストリアルデザイナーの覚悟 解決すべき目標や目指すべき到達点が明確であった時代は、インダストリアルデザイナーにとっても幸せな時代でした。今は企業規模にかかわらず、モノづくりの前に、独自の開発テーマを見つけることに必死で、「ただ良いデザインができますよ」と言っても、「デザインを発注するテーマがないね」と言われかねない時代になってしまいました。今も昔もモノづくりを支えるのは「創造性」であることは変わらないのですが、「創造性」に加え、モノづくりをしっかり完成させる事業遂行能力があるか?少なくともプロジェクトの当事者として最後までやりぬく覚悟があるかどうか?など、事業のマネージメント力を期待されるようになっています。そんな時にインダストリアルデザイナーが、どこまでモノづくりの主役としてリーダーシップを発揮できるのか?事業パートナーとして精神的リスクを応分に受け止めることができるのか?などはビジネスを進める上で重要な課題になっています。その表れとして最近、経営コンサルタント会社がデザイナーをコントロールし、企業のモノづくりを支援している例が見受けられます。それは「いつでも主役を変わる用意があるよ」と言っているようにも聞こえます。デザインを求めている市場は確実に拡大し、その扉は実行力のある人には誰でもオープンです。自分自身も含めインダストリアルデザイナーがどのようなビジネスを求めるのか?その覚悟しだいで、2002年の明るいインダストリアルデザインの未来が待っているような気がしています。 (馬場さんは「こちらデザイン」と云うメールマガジンを配信しています。 詳しくは http://www.crewdesign.co.jp を御覧下さい |